軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

今回だけね

ルッテからの最終報告では、共和国領の南東付近に兵の集結が確認された。

やはり主力は共和国の兵とみて間違いない。帝国の方は街道を進む兵の姿は確認されていないしね。

そして北東と北西の街道を進んで来るドラゴンの大軍は確認されている。

おびただしい数が移動しているそうだけど、ここ数日の急激な冷え込みのお陰で動きは鈍いらしい。

異世界でも異常気象って起こるのか……と思っていたら、何年か周期で起こりえる普通のことだと言われました。

白い息を吐きながら僕は石壁の上に立って、壁を作っている石に足をかけた。

「遠くに土煙が見えるね」

「そうですね。でもあのようにドラゴンたちが踏み固めてくれるから、街道が維持できると守兵の人が言ってました」

モミジさんの言葉に、僕が元居た世界では考えられないポジティブさを感じる。

打たれ強いと言うかこれが当たり前すぎて……いや無理。今回は無理。

「アルグスタ様。中型は見えましたか?」

「土煙だけだね」

「そうですか」

何故か抱き付くようにして彼女が僕の隣で背伸びをする。

まだ戦いにはならないと判断しているのか鎧を着ていない。お蔭でノイエ以上に大きな肉まんが僕の腕に押し付けられています。

本気でこの子は僕の側室になりたいのかね?

いや無理ですけど……僕はノイエだけを愛するって誓いましたから!

色々な感情にため息を吐いて、とりあえず中型を含むらしいドラゴンの大軍に目を向けた。

「中型が居るの?」

「はい」

北東方面に出発しようとしていた矢先、胸をプルンプルン震わせて駆けて来たルッテが告げた別れの挨拶がそれだった。

ただ隣に居るモミジさんが自分の胸に手を当ててからの握り拳の意味を問いたい。

まだ成長する気でいるの?

止めてよ。陰で『アルグスタは巨乳と貧乳に偏った者を集めている』とか言われてるんだから。

ってノイエとフレアさんは普通サイズだよ? 割合的には現在均等だよ?

「あ~アルグスタ様?」

「あっごめん。余りの言葉に現実逃避してた」

脱線した思考を戻してルッテを見る。

出発前の最終確認で祝福を使っていたからか、上半身は肌着姿で両手にはお菓子が握られている。

『伝えなきゃ』の気持ちが強すぎるせいか、周りが見えなくなるのがこの子の最大の欠点だな。

呆れた様子でフレアさんが上着を持って来てルッテの肩にかける。

まあ周りの野郎共は眼福を得たのだから死ぬ気で働けと言いたい。実はこれが死亡フラグとか無いよね?

「で、何匹?」

「えっ? はい。見えたのは1匹ですが」

「なら良いや。大型とかだったら問題だったけどね」

大型の場合は攻撃方法が凄いから……モミジさんの祝福があればどうにかなるかな?

「って、えぇ~! アルグスタ様!」

「はい?」

「隊長を見過ぎて頭の中の何かが狂ってませんか? 中型ですよ中型!」

お菓子を持った手を胸の前で上下に振って力説して来るルッテの双丘の動きが凄い。

まさかのノーブラか?

「でも中型でしょ?」

「中型ですけど……」

困った感じのルッテが救いを求め、自分を見ている馬鹿兄貴の存在に気づいた。

巨乳が居る所に馬鹿兄貴ありだな。

「ハーフレン様。何か言ってあげてください」

「親切心は自己完結させろ? それと戦闘前の野郎共にそんな胸など見せるな。襲われるぞ?」

「……ひぇ~」

ようやく自分の状況に気づいたらしくルッテが泣きながら逃げ出した。

「また育ったな」

「確り見てるね」

「まあな」

やはり巨乳派は抜け目がない。

僕も最近胸のチェックに余念がない気がするが……自分クビレ派ですから。

「で、だ。アルグ」

「ほい?」

「最低でも中型が1匹は居るらしいが?」

「みたいですね」

居るものは仕方ない。

と、ジロッと馬鹿兄貴がこっちを睨んで来た。

「モミジでどうにかなるのか?」

「さあ? 中型とは戦ったことが無いと言ってましたね」

彼女の住む村の周りでは中型まで出るそうだが、あの過保護なお姉さんが自分の妹にそんな無茶はさせない。

結果として彼女は小型までのドラゴンしか戦ったことが無いらしい。

「どうする気だ? 今だったらこっちとそっちの入れ替わりも出来るぞ?」

「ですね。でも帝国からの大軍に中型の居ない保証は?」

「……無いな」

「でしょ? だったら最低1匹と分かってる北東に行きますよ。北西に行ったら10匹でした……とか嫌だしね」

まあ10匹くらいなら物の数じゃ無いけどさ。

「倒せるんだな?」

「はい」

「確実に?」

「何よその念押しは?」

と、馬鹿兄貴が腕を組んでため息を吐きやがった。

「どこかの可愛い弟は、お兄ちゃんに対して秘密がいっぱいみたいだからな……もう心配で心配で」

「気色悪い」

朝食が喉を駆け上がって来たよ。マジで。

口元に手を当てて『吐く~』をアピールしていたら、背中を擦る優しい手が。

気づけば準備していたはずのノイエが背後に回っていたよ。

と、うっすらと兄貴に対して危ない気配を漂わせているノイエの頭を撫でて襲いかからないように気を配る。

「で、本音は?」

「……少しは本気を出すってことで良いのか?」

「今回だけね」

ポンポンとノイエの頭を叩くと彼女が僕を見た。

「チビ姫をあんな目に遭わせたんだ。……流石に今回はカチンと来たんでね。たまには全力を見せても良いかなって」

視線を兄貴に向けた。

「ユニバンスに喧嘩を……ドラゴンを使って喧嘩を売る愚策を知るだろうさ。共和国はね」

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