軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

……あの……痛いこと……する?

スヤスヤと気持ち良さそうに寝ているノイエの寝顔を見て、彼女の顔にかかる前髪を払う。

ノイエが持って来たフレアさんからの報告に目を通している隙に彼女は寝てしまった。

どんなにチート仕様でもノイエだって疲れるのだ。だから今夜は静かに眠らせてあげる。

ここ数日毎晩だったから僕的には有り難いお休みだとも言える。

にしても……ノイエ小隊の面々って本当に毎日楽しそうだな。

執務室で書類の山を相手している僕にも少し分けて欲しい娯楽だ。

ただルッテが乗り気なのはビックリだ。

まだミシュが姉だとバレていないのだろう。バレたら……それはその時だな。

モミジさんは自分とお姉さんとの関係を見つめ直す良い期間に突入している。そう思っておこう。

お姉さんとは自主練をしていたと思えば良いんじゃないかな?

男女の営みなら少しは分かるんだけど、同性の営みは僕には分かりません。

ミシュはまた変態に追われて王都を出て行った。

上からの指示で他国がマツバさんから手を引いているのかの確認のためだ。

ただ王都内にある大使館エリアでは、帝国の方が活発に動いていて共和国の方は通常運転しているらしい。

感じからして帝国が騒いでいるから共和国も付き合いで……と、そんな感じにも見える。この手の政治的駆け引きはお兄ちゃんたちに任せておこう。

一通り報告書に目を通し、狙いを付けて机に放る。

ピラピラと床に落ちたけど……ベッドから出るのが面倒臭いから明日の朝で良いや。

「お休みノイエ」

軽く隣で寝ているお嫁さんの頬にキスして僕も目を閉じた。

不意に目が覚めた。

あれ? 明かり点けっぱなしで寝たはずなのに……全部消えてる?

暗闇に目が馴染むまで待つと、僕のことを見つめている存在に気づいた。

座った格好のノイエだ。

「どうかしたの?ノイエ?」

「……ひっ」

「ひ?」

いつも通り手を伸ばし彼女の頬に触れようとしたら怯えられた。

何故に? うちはラブラブな仲良し夫婦ですよ?

「ノイエ?」

両手を伸ばして座っている彼女を捕まえる。全身が小刻みに震えてる?

「……ひひ……はは……あはは……」

(しまった!)

慌てて飛び起きて相手を抱き締めてベッドに押し倒す。

恐怖に染まりきっている彼女の目を見ながら顔をより近くに……キスをした。

握った両手で小さな抵抗を示す相手に……ゆっくりと舌で挨拶していたら彼女の震えが止まった。

念のために体勢を変えて相手の背中を撫でて落ち着かせる。

落ち着いてても落ち着かせる。ここでの手抜きは命に関わる。

「……落ち着いた? ファシー?」

「……うん」

「ごめんね。久しぶりだったから」

「……私も……ごめんな……さい」

怯えた様子でチラチラと伏目がちにこっちを見て来るのは、『血みどろファシー』だ。

前に僕に怪我を負わせたことを謝罪しに出て来た時にいっぱい話して仲良くなった。

基本凄く良い子なんだけど、とにかく臆病で怖がりだ。今も僕に怒られないかビクビクしてるっぽい。

「レニーラが言ってたよ? ずっと奥に居たんでしょ?」

「……はい」

今にも泣き出しそうな目が向けられる。

「……レニーラから……貴方が呼んでたと……聞いて」

「うん。会いたかった」

ノイエの中の人たちで普通に話せる数少ない貴重な人物だ。

ただ選択肢を間違えると変なスイッチが入って彼女の『血みどろ』の部分を見ることになるけどね。

「奥に居たら出て来れないでしょうに」

「……良いの?」

「何が?」

「……出て来て……良いの?」

「良いよ。普段のファシーはこんなにも良い子なんだから」

ノイエにするように頭を撫でてあげると、彼女は嬉しそうに目を弓にする。

「それとも僕に会うのは嫌?」

フルフルと彼女の顔を左右に揺れる。

「なら好きな時に出ておいで。僕もファシーに会えて嬉しいから」

「……はい」

「でもノイエに気づかれないようにね? 気づかれるとダメなんでしょ?」

「……はい」

総合的な観点から僕が導き出した結論だ。

ノイエの中の人たちはとにかくノイエに存在を気づかれたくないらしい。理由は知らないけど……でもこの人たちは基本ノイエの家族だ。彼女にとって不利益になることはしない。

「ウリウリ」

「……あん」

これでもかと頭を撫でていたら、ファシーがスリスリと身を寄せて来た。

臆病で怖がり……それにとんでもない甘えん坊なのがファシーだ。

「ん~。可愛い」

「……嬉しい」

ファシーはどこかノイエに似てて扱いが彼女と同じになる。

猫可愛がりするように撫で回すと、そこは1人の成人女性……大人の鳴き声を上げ始めたりする訳です。

前回はついその声にムラッとしてしまった。

我慢出来ずにガオーして……それ以降出て来なかったから、嫌われたのかと心配だったんだよね。

「ねえファシー」

「……はい」

「ファシーも好きな時に出れるんだよね?」

「……はい」

聞いた話だとファシーもそこそこの魔力の持ち主らしい。

「なら毎晩とは言わないから、ファシーが好きな時に出て来て欲しいな」

「……どうして?」

「ノイエの中の人たちの様子を聞きたいから」

と、彼女がまた泣き出しそうな表情を作る。

「……出来ない」

「どうして?」

「……グローディアと、アイルローゼが怒る」

その二大巨頭の名前を出されたら流石の僕も無理は言えない。

「ならファシーの好きな時に出て来て2人に怒られない話をしよう。それなら良いよね?」

「……はい」

ちょっと嬉しそうに微笑んで、彼女が体ごと僕に抱き付いて来る。

と、彼女の唇が耳元に。

「……あの……痛いこと……する?」

「痛い?」

「……うん。痛くて……お腹の中に熱い」

スト~ップ!

第六感が何かを訴え僕は急いで彼女の唇をキスで塞いだ。

危ない。とにかく危ない言葉は封じないと。

「痛いならしないよ」

「……」

「ファシー?」

何処か寂しそうに身を寄せて来る彼女を見て……僕の中の野生が目を覚ます訳です。

もうファシーったら、したいならそう言えば良いのにね。

で、案の定翌朝ノイエに怒られる展開になるのです。知ってますよ本当に。

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