軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

暴れられるなら文句は言わないさ

ブロイドワン帝国北部国境沿い

「ふむ。これは……少し面白くないですね」

「どう致しましょうか?」

しばらく考え込んだ男性がゆっくりと口を開いた。

「帝都の配置は?」

「衛兵の配備が厳しくて……通常程度で監視しています」

「そうでしょうね。しかし我らが主人はどうしてこう生真面目に仕事をこなすのでしょうか……本当にもう」

愚痴を放って彼は焚火に向かい手の内にある報告書を放った。

メラメラと焼けたのを確認してから彼は軽く肩を竦める。

「それでキシャーラ様はいつ頃帝都に」

「密偵の報告から逆算してたぶん乾季の終わる前には」

「そうなりますか……困りましたね」

やれやれともう一度肩を竦め、彼は自分たちが作った町に目を向ける。

500人程度なら十分に住めるほどの家々が立ち並んでいた。

「ここの開発はある意味十分でしょう。何より主人が気軽に帝都に戻ると厄介です」

結論を下した。

「我々はこれより帝都に向かいます。急ぎ準備を」

「はっ」

部下が散らばるのを確認し、彼は首を回して肩をほぐした。

「さて……トリスシアを探しますか」

「……」

深い息を発して3mを軽く越える身長の女性が目の前にある大木に抱き付いた。

全身の筋肉を盛り上げ、特に肩回りの筋肉を倍ほど膨らませる。地面にその足を突き刺し……自身の怪力を持って大木を引き抜く。

引き抜き行為によって彼女は木々を伐採していた。

「ふ~。で、何か用かい?」

抱えていた大木を放り出し、女性が自身の身長を縮めながらゆっくりと背後を見る。

「流石は帝国のドラゴンスレイヤー殿。良くお気づきに」

「はん! アタシは鼻が利くんだよ。そのドラゴン臭い匂いは何だい? 鼻が曲がりそうだよ」

「それについてはご容赦を」

慇懃に一礼して来る黒いローブ姿の相手に大女……トリスシアはハッと鼻で笑った。

「許して欲しいなら顔ぐらい見せな。それとも謝る気が無いなら頭を下げるんじゃないよ」

首をゴリゴリと鳴らし大女が拳に手を当て指を鳴らす。

完全に戦闘状態の相手を見つめ……ローブ姿の男性は心の中で舌打ちをした。

「失礼。我が方では素顔を晒すことが少なくて」

「そうかい。でもこの辺では顔を隠している相手は話し合いをする必要は無いってことになっている。今度から気をつけるんだね」

「はい」

殺気が怒気に変化し、大女は自身よりはるかに小さな相手を睨みつける。

「で、何の用だい?」

「……はい。実は貴女様に良いお話をお持ちしました」

「何だ。引き抜きかい?」

「いいえ」

クスリと笑った男がゆっくりと腕を開く。

「貴女様にユニバンスのあの憎き小娘を倒す手伝いをして欲しいのです。その礼に強い力を与えましょう」

「……ほう。それは面白そうだ」

ドカッと地面の上に座りトリスシアが男を睨みつける。

「どんな力を使ってあれを殺す? あの小娘は中々に強いぞ。それにおかしな力を体の中に隠し持っている」

「はい。ですが我々が提供する力を用いれば、貴女様ならあの小娘を殺めることが出来るでしょう」

「なるほどな。で、見返りは?」

ニヤリと笑い男は言葉を続ける。

「要りません。強いて言うなら確実にあの小娘を殺していただければ」

「そうか」

「どうでしょうか?」

「そうさね……アタシは頭を使うのが苦手なんだ。だから替わりに聞いてやんな。ヤージュ」

「面倒事を」

その声に男が後ろを振り返る。

何処かくたびれた感じのする男……ヤージュがいつの間にかに近づいて来ていた。

それに気づけなかったローブの男は懐に手を入れたが、

「何をしようとしてるんだい? 話し合いに来たんだろう?」

「ぐっ!」

背後から伸びて来た手に胴体を掴まれ男が声を詰まらせる。

また体を膨らませたトリスシアが怪力を持って掴んだ男を持ち上げた。

「あの小娘を殺す手段があるそうだよ」

「ほうそれは……四肢を潰して全て吐き出させることとしますか」

「悪く無いね」

「何をっ! ひぃぐぅ!」

小枝でも折るかのように大女がローブの男の腕を折る。

額から脂汗を噴き出し震える男に、トリスシアが眉間に皺を寄せて不機嫌そうな表情を作った。

「漏らしたよ」

「普通腕を潰されれば失禁ぐらいするでしょうに?」

「どこぞの小娘の旦那は叫びはしたけど漏らさなかったよ」

「あれは……中身がたぶん狂っていますからね」

やれやれと肩を竦めてヤージュが男に近づく。

「さてと。詳しく聞かせていただけますかな?」

「……誰が言うか」

「そうですか。それはとても残念です」

またトリスシアが手を伸ばし足を折る。それも両方だ。

発狂でもしそうな声を上げて男は気絶した。

「誰か。この男を連れて行き隠し事を全て吐き出させなさい」

「はっ」

ヤージュの背後から姿を現した部下が一礼してトリスシアから男を受け取る。

「ただおかしなことをするかもしれません。移動準備もありますし……最初から薬を使いなさい」

「宜しいのですか?」

「ええ。終わったら木々の間にでも穴を掘って埋めて行けばいいのですから」

「分かりました」

遠ざかる部下を見送りヤージュは彼女に目を向けてため息を吐いた。

「貴女も自身が女性であることを忘れずに。何て格好をしているのですか?」

「はんっ! こんな大女の裸を見て興奮する男がここに居るのかい?」

「興奮するしないではありません。女性としての慎ましさを持てと言っているのです」

「あ~はいはい。煩いね」

手近な石に掛けておいた上着を掴み肩に羽織ると、トリスシアは汚れている手を軽く振った。

「で、何かあったのかい?」

「はい。実は……ユニバンス近くの街に新しいドラゴンスレイヤーが現れました」

「……へ~」

興味深そうにトリスシアが笑う。

「それと……帝都に向かいます」

「へ~。何でまた?」

「……少し我が主人が頑張り過ぎたのですよ」

「そうかい。まっ暴れられるなら文句は言わないさ」

「ええ。確り暴れてください」

乾季の終わりに近い頃……ブロイドワン帝国の帝都にて政変が勃発した。

皇帝である実兄が、大将軍である実弟に対して『反乱容疑』を掛け、反発した大将軍の部下たちが主人を救おうとして帝都の衛兵たちと争ったのだ。

結果として帝国は皇帝派と大将軍派とに分かれてしまった。

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