軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

命が、だ

「モミジ」

「はい」

「貴女に3つ目の任務を与えます。このケーキと言う物に関する知識を仕入れて来なさい」

「分かりましたお姉様」

一応来賓と言うことで迎賓館で過ごしているカエデは、日々の贅沢な生活に驚きの連発だった。

そして今日……贅の極みとも言える食べ物を最愛の妹が抱えもたらした。

ケーキだ。

信じられないほど甘くフワフワな食べ物だ。

ソファーに並んで座り、姉妹で4ホールほど消費してから今後について話し合う。

「何でもアルグスタ様は、この王都で有名なケーキ店を運営しているそうです」

「ふむ。つまりあのお方をを篭絡すると、ご先祖様の国のことを聞けるうえにケーキの作り方も得られると?」

「はい。それに彼はドラゴンの死体を用いて、この国で1番の大金持ちだそうです」

「ええ。その話は聞いているわ。てっきり燃やして灰を畑の養分にするだけだと思っていたドラゴンが、あんな高値で取引されているなんて……」

親指の爪を軽く噛んでカエデは渋い表情を浮かべる。

爪や牙などは取引している商人が買い取ってくれるので売れるとは知っていたが、それ以外の部位がお金になることを初めて知った。

今後の村の経済を預かる身としたら、過去の村長の愚かな行為が憎く思えて来る。とりあえず村に戻ったら半殺しにして来た父親にトドメを刺そうと心に誓った。

「特別に加工しなくても売れる部位などを聞きましたので、今後は我が村も少しは商いの仕方を変える必要がありますね」

「はい。それに必要な知識はわたしが手紙にして毎月お送りしますから」

「ええお願いね」

甘えて来る妹の頭を優しく撫でカエデは微笑みかける。

一応予定として明日帰国するので、妹と一緒に過ごせる時間は残り少ない。

「さあモミジ。お風呂を自由に使えると言うのですから2人で存分に楽しみましょう」

「はい」

その言葉に従い2人は風呂場へと向かい仲良く過ごすと、次いで寝室へと移り……夜明けが来るまで仲良くし続けた。

「この度は本当に何から何までありがとうございます」

「いいえ。こちらとしても貴女方と友誼を結ぶことが出来て良かったと思っています」

次期国王たるシュニットと握手を交わしカエデは柔らかく笑いかける。

どんなに男性嫌いでも時と場合を選ぶことぐらいは出来る。

「どうか妹のことを宜しくお願いします」

「ええ。ああ見えてアルグスタは部下に対して優し過ぎるくらいなので問題など起きないでしょう。ですからどうか御安心を」

「そうですか。それなら私も不安なく国元に帰ることが出来ます」

それから2人は軽い会話を交わし、シュニットはカエデがゲートを潜るまで見送った。

無事に村長となる女性がゲートに消えたのを確認すると、シュニットは護衛として共に来ている弟に声を掛ける。

「帝国と共和国は?」

「両方とも遠巻きに兵を配置して機会があれば襲いかかってくる気配は見せていたが」

ユニバンス王国の近衛団長が麾下の精鋭を連れだって鉄壁の警護を見せている。両国とも動くに動けず悔しそうにしている雰囲気だけが漂い流れて来ていた。

「まあこの鉄壁の護衛は抜けんよ」

「ならば問題は無い。国に残るモミジ殿の護衛は?」

「俺の裏の部下がアルグスタ並みに配置してある」

「そうか」

並んで愛馬の元へ向かい2人は会話を続ける。

「マツバ殿はまだ国内を走り回っているのか?」

「ああ。ミシュの尻を追いかけて走り回って貰っている」

苦笑しながらハーフレンは肩を竦める。

「まさかこちらの冗談を本気で受けてくれるとは思わなかったがな……お蔭で国内の帝国及び共和国の実務部隊をこれでもかと刈り取っているよ」

それは文字通りに命を刈り取る行為であるが、国を治める2人は気にもしない。

「付き合わされているあの娘が可哀想だがな」

「気にするな兄貴。生まれて初めて男に追われ、泣きながら喜んでいるはずだ」

「そうか。それならば問題無いな」

事実マツバに追われ続けているミシュは、マジ泣きしながら走り続けている。

「だがあの者はフレアと並びお前の切り札であろう? 王都を離れてしまい問題は無いのか?」

「あれの抜けた穴を埋めるのは確かに難しいが……大掃除が出来ることを考えると、な。上に立つ者としては悩ましい限りだよ」

会話を続けながらハーフレンとシュニットは馬に跨る。同時に部下たちに帰還命令を出す。

「王都で何か起こったと知れば奥の手を使って戻って来るはずだ。だからたぶん大丈夫だろう」

「そうであったな。あれも人間離れしていたか」

兄の言葉にハーフレンは頭を掻いた。

「ミシュも大概化け物だが……それに付き合えるあのマツバとか言うのも化け物だよ。本当に」

ユニバンス王国内某所

「幼き君よ!」

「あ~! も~!」

互いに武器を手に対峙し合うのは、変態と変態だ。

だがその実力は拮抗しているのか……王都を出て結構な日数が過ぎている。

カタナを手にするマツバの間合いは広く長い。両手に短剣を持つミシュの間合いは狭く短い。

圧倒的に不利な戦いを強いられるのはミシュのはずだが、彼女は普通の者が持たない攻撃手段を持っている。

「そろそろ死ね!」

「掛かって来なさい幼き君よ!」

瞬間対峙しているミシュの姿が消え、彼の背後から襲いかかる。

だが彼はそれを察して振り向きざまに剣気を飛ばす。

短剣で飛んで来る剣気をギリギリ受け流し、ミシュは空気を蹴って後方に逃れる。

「本当に不思議な技を使うのだな。幼き君よ」

「あ~も~! 空腹で辛いって言うのに……そろそろ諦めて死んでよ!」

「何を言うか! 私が死ぬ時は幼き君を腹の上に乗せてだなっ!」

皆まで言わせぬとばかりでミシュが襲いかかる。

しばらく刃を打ち合わせていた2人は、ピタリと動きを止めて咄嗟に背中を合わせる。

「もう来たか? して数は?」

「30って所かな~。本当に面倒臭い」

「仕方あるまい。あれらを狩ることを頼まれておるしな……斬って捨ててから続きと参ろうか?」

「だったらご飯してお風呂して寝てからが良い」

「共に入浴し一緒に寝ても良いならその提案に乗ろう!」

「……30人叩き斬ってからお前も殺す! この変態がぁ~!」

同時に背中を剥して2人は己が持つ武器を振るう。

マツバの身柄を欲する他国の密偵たちが次々と刈られて行った。

文字通り……命が、だ。

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