軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

簡潔に理由を述べよ

「どうかしたのか?」

カエデを部下に預け戻って来たハーフレンは、異常な空気を察した。

ミシュと客人が地面と熱い抱擁を交わしている。『あっちは特に考えなくても良いだろう』と思い放置する。

ルッテは空腹にでもなったのか鍋の傍で配膳をしながら一番食べている。

そして弟が妻を猫のような可愛がっていて、それを見ている客人の妹が……蒼い顔をして身を竦ませている。

「妻を溺愛する姿を見て怖がるとかってどうなんでしょう?」

「……人目もはばからずそんなことが出来る神経の太さが異常なんじゃないか?」

「失礼な。これぐらい……国民の前でキスするのと比べれば握手に等しいです」

「十分狂ってるぞ」

どうやら異様な空気は馬鹿な弟の馬鹿行動が原因らしい。

そう思いハーフレンは震えているモミジに声を掛けた。

「では妹君……準備は宜しいですか?」

「はい」

ペコリと一礼し、少し離れた場所に転がっているカタナを拾い上げ彼女は戻って来た。

「ご案内をお願いします」

「はい。では」

ハーフレンに続き離れて行こうとするモミジは、ふと自分の耳に届いた言葉に体を震わせた。

慌てて辺りを見渡し……石に座っている若い夫婦を見つめる。

「どうかなさいましたか?」

「いいえ……大変仲が良いものだと思いまして」

「ええ。この王都で最も有名な仲の良さにございます」

当たり障りのない言葉を発し、ハーフレンもまた弟夫婦に目を向ける。

相変わらずノイエを溺愛している弟の様子に呆れつつ……先ほど感じた違和感に首を捻った。

ようやく2人が離れたのを再度確認して僕はため息を吐いた。

「何か言ったの?」

「少し口止めしただけよ。『余計なことを言ったら殺す』ってね」

「左様で」

先生の場合、睨んだだけで息の根を止めそうだからな。

「で、アイルローゼ先生? 気持ちは分かるけど出て来るのは、時と場所を考えて欲しいです」

「そうね。つい面白い話だったから我慢出来なかっただけよ」

「その好奇心で生きる姿勢は嫌いじゃ無いけど」

「……そんなに煽ててもダメよ。ノイエの体と言っても"私"に触れる無礼を許されると思っているの?」

と、肩越しに先生がドキッとするほどの可愛い笑顔を向けて来た。

やっぱり許されませんよね!

「でも大目に見て欲しいかな……そもそも先生が悪いんだし」

「そうね。今度ノイエと仲良くしている時に邪魔をすることで許してあげる」

「中々の拷問っすね」

でもそれで許して貰えるなら、貪られる回数が1回減るだけで済むからむしろ喜ぶべきか?

「勿論邪魔をするのは『ここで?』と言う場面だから」

「結構な拷問っすね」

まさかそんな……想像したことをやられたら、流石の僕もめっちゃ苦しむと思いますよ?

「それにしてもノイエの腕を斬るなんて凄いわ」

「そうなの?」

「ええ。それかこの子が術式を解除していたか……普通なら斬れる訳が無いのよ」

手首から先の無い腕を見つめ、アイルローゼ先生が呆れた様子でため息を吐いた。

「これだと読書は無理そうね」

「その状態での感想がそれって言うのも凄いと思います」

「そう? まあ良いわ」

目を閉じた先生が僕に身を預けるように寄りかかって来る。

「あの人たちの話を聞く時は私も聞くから……良いわね?」

「了解です」

「……」

スッと目を閉じてノイエに戻ったらしい彼女が、僕に対して完全に体を預けて来る。

「ん~。ノイエってやっぱり可愛い」

「……ダメ」

「はい?」

「……胸」

ふと見たら、彼女を支える手がガッチリと服の上から胸を。

「鎧っていつ脱いだんだっけ?」

「……アルグ様?」

「はい。ごめんなさい」

「……ダメ」

クックックッと体を捩じって彼女は僕を見つめて来た。

「今夜、ギュッとして寝て欲しい」

「……今夜だけで良いの?」

「明日も」

「なら明後日もして良いならするよ」

「……はい」

チュッとキスしてノイエが抱き付いて来て……また眠った。

「って、いい加減助けろ!」

「うおっ!」

突然飛び起きたミシュが吠えた。

「何だよ。夫婦で良い感じだったのに」

「そっちの幸せなど知るかっ!」

「ぬはははは! あまりの衝撃で少し逝ってしまったが……我が愛しき君よ! どうか私と永遠の愛を!」

復活した変態が地面に股間を押し付けながら、ズルズルとミシュに這って行く。

「来るな変態っ!」

「ミシュも十分変態だぞ?」

「私は女だから変態でも平気なのよ!」

「男女問わず変態は害悪だ馬鹿」

何故か変態2人が精神的なダメージを受けて地面を転がった。

君たちは自分のことを底辺だと知るべきだと思うぞ?

「ミシュよ」

「何よ?」

「そんな変態でも君を求める貴重な存在だ……落ち着いて考えてみよう? この機会を逃したら君は結婚なんて2度と無理だ。後は未開の部族の猿人でも探し出して結婚するしかない」

「人ですら無いの!」

「大丈夫。分類的にはたぶん人間だから」

猿人とか類人猿って……霊長類だよね?

「嫌だ~っ! 私は人間の男と結婚するんだ~!」

「だったら我が君よ! 私が死ぬまで変わらぬ愛を君に捧げよう!」

「寄るな変態~っ!」

ゲシゲシと接近する変態……マツバさんの顔面に蹴りを入れるミシュ。だが受けている方は恍惚とした表情で全てを受け入れている。やはり本物の変態か?

いや……蹴る際に見え隠れするミシュの下着を見ているのか! この変態は本物の変態だっ!

「良いじゃんミシュ。僕も君の結婚相手を探すのが大変だから、その辺で妥協してくれない?」

「嫌よっ!」

「何でさ? 簡潔に理由を述べよ」

「私は……」

プルプルと震えながらマツバさんを指さす。

「変態が嫌いなのよっ!」

「鏡を見ろこの変態がっ!」

僕の言葉に2人の変態が精神的なダメージを受けて地面を転がった。

(c) 2019 甲斐八雲