軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

神になった女

「何で私が変態の親玉みたいに言われるの? おかしくない?」

「おかしいのは貴女の頭でしょ?」

「うっさい痴女。黙れ」

ガルルと喉を鳴らし二人は牙を向け合う。

しばらくすると飽きたのか、並んで座り湯船に浸かる。

「ねえミシュ」

「何よ?」

「……貴女最近アルグスタ様に対して親切じゃない?」

「良い上司には尻尾ぐらい振るのはふつーよ。普通」

また大の字になって水面に浮かぶ馬鹿を見ながら、フレアはふ~っと息を吐く。

「普通ね。なら隊長に審問会のことを伝えたのも普通なの?」

「いや~。あれは隊長も知ってるかと思ったんだけどね~」

「白々しい。それに前の暗殺者騒動もそうよ。書類作成で楽が出来るからって"貴女"が動くほどのことじゃ無かったはずよ? "彼"の部下を派遣すればそれで良いはず」

「いや~。たまには体を動かさないと腐るしね。うん」

「そう。貴女がそう言うならそれで良いわ」

相手が話す気が無いのなら無理に喋らせることは無い。

仕事だったら"お願い"して"自ら進んで"全てを話して貰えるようにするが、今の質問は仕事ではない。ただの興味だ。

「……裏で動いてるのね」

「さ~てね。私は可愛い小犬ちゃんですから」

「駄犬の方が好きだわ」

「で、アソコを舐めて貰うんだ。この痴女が」

「……沈め」

「がおっ!」

軽く触れられたと同時に頭だけ重くなって、ミシュは斜めに湯船の中へと沈んだ。

フレアはそんな愉快なオブジェを見ながら自分の手に視線を動かす。

久しぶりに使う自重操作の魔法は相変わらず使い勝手が良い。ただ人や物に対して使う魔法なので物凄く地味で派手さは無い。しかしフレアは自分専用の武装と物質強化の魔法に次いで気に入っていた。

「天才アイルローゼ以外にもこうした使い勝手の良い魔法を作った人はたくさん居るのに……どうしてあの犯罪者の名前がこうも語り継がれるのかしらね?」

必死に頭を支えて立ち上がったミシュにフレアは微笑みかけた。

「婚期を速める魔法とか作れないのかしら?」

「……とりあえず三回殴ってから話を聞こうかっ!」

跳びかかって来たミシュを迎撃するフレア。

二人の喧嘩の仲裁にと罰を受けていたルッテまで加わり……後に3人は大浴場の掃除20日間の罰を受けることとなった。

「……満足」

「それは良かった」

「はい」

僕の腕の中で満足そうにアホ毛を振り回すノイエが居る。

いつもの……彼女の後ろから抱き付くスタイルが解禁になりましたっ! ありがとう王妃様っ! 僕は貴女の息子になったことを誇りにすら思います。

と、ノイエが手にしていた書類を僕に渡して来る。

『カミューに関すること』だ。一応ノイエがお風呂している間に目を通しはしたんだけどね。

彼女の場合髪の毛が長い分洗うのに時間がかかる。その隙に着換えて先に寝室に来て内容を確認した。もしかしたらノイエに見せられない内容かも知れないしね。

書類の内容はごく普通の調書だった。

ただあまり核心部分について語っていないのか、何より最初から暗殺者として来ていたせいか……カミューと言う人はあっさりと全ての罪を受け入れた様子だ。

さっさと殺して欲しい……的な言葉も読み取れた。

でも彼女は処刑されずにノイエが居た施設に預けられた。そこで後から来たノイエと出会いお世話をしてくれたらしい。何でもグローディアと壮絶な奪い合いをしていたとかで、その頃からノイエさんは魔性の女をしていたのか……本当に罪なお嫁さんだ。

だが僕が調べた限りだと、カミューさんはノイエの"中"に居ない。

何かあって死んでしまったのか、それともノイエの魔眼と関係しているのか?

「うりうり」

「ふにゅ~」

今日は色々と分かったしこれ以上頭を使うとパンクしそうだ。

だったらお嫁さんを愛でよう。

少し強めに頭を撫でたらノイエが骨抜きになって寄りかかって来た。

お風呂上がりの甘い感じの匂いが……どうして女性はこうも良い匂いがするのでしょうか?

甘えて来るノイエがこっちを見る。

「する?」

「……ノイエはどうしたいの?」

「……」

その問いに彼女は頬を紅くして困り出す。

お触り禁止のルールを作ったノイエさんにはもう少し苦労をですねって……彼女に押されて倒された。

「したい」

馬乗りになってノイエさんが獲物を見つけた肉食獣のような目を向けて来る。

アカン。これは間違いなく食われるパターンだ。

「ノッノイエ? 何をする気?」

「はい。[ズキューン]を[ドカーン]に[バキューン]して、アルグ様を[ズドーン]する」

メイド長のお言葉が知らない間に大乱闘してるよっ! それはダメ~っ! そんなことをされたら僕が間違いなく干からびちゃうからっ!

「アルグ様」

「はい」

「頑張る」

「……はい」

下手すると明日の僕の休みも確定しそうだ。

深夜

不意に目を覚ましたノイエは自分の横を見てその手を相手の顔に触れる。

「眠れ。揺りかごの中で」

発した言葉は魔法語となり響く。そして眠っていた彼がより深い睡眠へと落ちる。

それを確認し、ノイエは改めて相手の首にその白い手を掛けた。

ゆっくりと力を込めて相手の首を絞めて行く。

「止めなさいグローディア」

「出て来たわね? カミュー」

ジロリと向けられるノイエの視線に……部屋の隅で影が動き女性の形を作り出す。

ゆっくりと姿を現した彼女は、その赤黒い目でノイエの中を見た。

「全員揃っているって訳ね。用があるのは私ってことか」

「ええそうよカミュー。この男が異世界人であることを含めて全て話して貰うわ」

「拒否したら……分かりやすい」

彼の首を絞めようとする"大切な宝物"の姿に女性……カミューは折れた。

「それで私に何が聞きたいの?」

「私たちに隠していることを全て」

「話せないこともあるわよ」

「それでも全てを語りなさい……神になった女よ」

突き放すような言葉にカミューは鼻で笑った。

「神なんてこの世界には居ないわ。居るのはただの……言うことを聞かないひねくれ者よ」

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