軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

大陸最強

「カミューから聞いた話だと、魔眼とは全ての魔法や術式を見て覚える性質があるらしいの。

だからあの子は数多くの魔法を見せられ習得し、そして私を殺すために送り込まれてきたのよ」

紅茶を注ぎながら王妃様の爆弾発言が止まらない。

あの~。僕としてはそんな話は知りたくないので逃げても良いですか? 本当にこれ以上巻き込まないで~。僕はノイエと2人で田舎でのんびりまったりと暮らしたいんだよ~。

「1度目の暗殺……私には記憶が残っていないけど、保養所から王都に戻る私たちが乗る馬車をドラゴンに襲わせたものらしいの。我が子を庇い重傷を負った私は、お腹の中をグチャグチャにされて子供を作れなくなってしまったの」

紅茶を注ぎ終え、椅子に腰かけ悲しそうに自分の腹部を彼女は撫でる。

「それからは身寄りのない子供を集めてここで楽しく過ごしていたわ。何て言うのかしら……その頃の私は自分が長く生きられないと思っていたらしいの」

微笑む姿が痛々しい。

その口ぶりからして王妃様は記憶が無いらしい。

「私が引き取っていた子供の中にあの子もいた。その瞳が特徴的で、周りの子からは何故か『うさぎさん』と呼ばれて居たわ」

何となく分かる。ノイエもどことなく雪ウサギな感じにも見えるしね。

「ただ集団行動が苦手だったのかいつも一人で……でも常に私を見つめていた。で、ある日の晩にカミューが私の寝室に忍び込んで来たの。そして言ったわ。『殺しに来た』と」

ビクッとノイエが反応を示す。

自分の姉と呼んでいた女性の過去が……ちょっとどころじゃ無くて強烈だ。

「だから私は言ったの。『はいどうぞ』って。隠れて護衛をしていた人たちが全員転んで姿を現して、それでカミューは捕らえられたの」

ズッコケて姿を晒す護衛とかダメでしょう? ノリとしては大好きだけど。

「でも私は彼女を許して、むしろ自分の傍に置くようにしたのよ。周りの反対意見なんて無視して……私らしくないとあの人がいつも言ってたわ」

それは国王様だよね。あれをそんな嬉しそうな表情で慕える王妃様はやっぱ凄い。

「でもそれ以降カミューは私の言うことを守り確りと仕えていたわ。でも10年前の新年の祝辞の日に……私はあの子に殺されそうになったらしいの。

その辺りの記憶は強い衝撃を受けたらしくて覚えていないけど」

少しその目を伏せて王妃様が続きを綴る。

「聞いた話だと……彼女は私の胸にナイフを突き立てて殺そうとしていたらしいわ。

でも私は偶然にも助かった。違うわ。あの日負った怪我が癒える度に私の皮膚はドラゴンの物へと変わって行った。最初の時に負った傷跡が全て消えてこの皮膚に変わる頃……私は不思議な力を得ていた」

「不思議な力?」

「ええ。そうね……ノイエ。あそこに石があるでしょ? あれを取って来てくれる」

「はい」

僕から離れた彼女が指示された場所にある石を拾った。

拳大の大きさの石だ。

「ノイエの力だったらそれを砕けるかしら?」

「はい」

と、両手で包んで圧を掛けると、ガギグギと音がして……ノイエの掌に砕けた石が残る。うむ。うちのお嫁さんがサラッと凄いことをするから怖い。

だがそれを見つめていた王妃様はノイエを呼ぶと、彼女の掌の上の砕かれた石を手にした。

「ならこれは出来る?」

「……っ!」

「マジかっ!」

様子を見ていたノイエも僕も驚いた。

王妃様は自分の掌の上にある石にもう片方の指先を当てて粉砕したのだ。怪力とは違う……怪力だとしたらあり得ない力だ。

「うふふ。皆には秘密ね? この姿以上に恐れられるから」

「はい」

「……はい」

砂となった石を地面に撒き、王妃様は自分の手を拭く。

ノイエは自分の掌の石を見つめてとりあえず指先で押している。割れているけど粉砕しない。って割れるだけでも結構なことだと思います。

あれ? だったらノイエが王妃様を襲ってもむしろ返り討ち?

「実は王妃様がこの大陸最強なんじゃ?」

「あらあら無理よ。私に荒事は向かないわ。それに……この力を使うと全身から何かが抜ける感じがして、それでも使い続けると気絶してしまうの」

あ~。そんな使用制限があるのか。流石に気絶しちゃうような制限は辛いな。

「ちなみに今のを何回したら気絶するんですか?」

「5回くらいかしら?」

「つまり後4回したら?」

「ええ。気絶すると思うわ」

これは戦力としてカウント出来ない。

「他にも色々と出来るのだけれども……そっちも数回が限界。だから私のこの力は、この場所を守る為に使えたら良いと思っているの」

「……」

確かに数回なら護りに適している。だけどそれってまさか……?

「あらあら紅茶が冷めてしまうわ。2人とも美味しい物だからどうぞ飲んで」

「はい頂きます」

ノイエの掌を綺麗にさせて、まず彼女が先に紅茶を飲む。ついでお茶菓子に手を伸ばしたところを見ると、力を使ってお腹が空いたのかな?

「途中で話が変わってしまったけど、私が知っているカミューについてはこれくらい」

「それで王妃様はその時に襲われて記憶を失ったと?」

「ええ。でも記憶を失ったのは1度目の襲撃の時ね。年を追うごとに記憶を失ってしまったのだけれど、ある日突然それが止まって失わなくなったの。失った物は戻らなかったけれど」

そっちの方が辛すぎるでしょう?

「でも日記を書いていたから読んで補うことが出来たわ。せめてもの救いはそれくらい」

またポンと胸の前で手を打って王妃様が喜ぶ。仕草も見た目も凄く若いんですけど……2人のお兄ちゃんの年齢を考えると間違いなく40代かそれ以上のはずなんだよね? 20代で通りそうなほど若々しいのはドラゴンの力が関係しているのかな?

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