軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

どうよ?

ユニバンス王都外、外周部

王国軍や近衛たちの間に最近変な噂話が持ち上がっている。

曰く『外周部を走っているとメイドに襲われる』と言うのだ。

そんな馬鹿げた話など誰も信じないはずだった。だが事実走りに出た者たちが怪我をして戻って来る。

襲われた彼らは口々にこう言うのだ。『通りすがりのメイドに掃除された』と。

「良いかお前たち。我々は由緒正しき王国軍の中でも精鋭と呼ばれている者だ」

先頭を行く隊長格の男が声を張り上げ走る。

「もし噂のメイドが出てきたらどうする?」

「「迎え撃ち捕縛します」」

「その通りだ。これ以上の傍若無人を許すなっ!」

「「はいっ」」

余程鍛えられているのだろう……その声に乱れなく、鍛えられた体にはまだ余力すら感じさせる。

そんな彼の後ろを走る部下たちもまた中々に鍛えられた男たちだ。

独身で売れ残りの女性がその姿を見たら『この場で抱いて~』と言って飛びかかって行きそうなほど漢臭をまき散らしている。

と、先頭を走る隊長格の男が気づいた。向かう先にぽつんと佇むメイドの姿をだ。

近くまで寄り足を止める。

「お前が最近噂のメイドかっ!」

「噂……は存じませんが、最近兵士たちを掃除しているメイドでしたらわたくしです」

言って彼女はやんわりと一礼する。

その返事を聞き、隊長は部下たちにハンドサインを飛ばす。

ゆっくりと油断なく身構え散開する兵を見て、メイドの女性は柔らかく笑った。

「本来メイドであるわたくしが皆様にご無理を言う立場ではありませんが」

浮かべていた笑みが鋭い物に変化する。

「鈍っている体を十分に動かせるよう……お手伝い願えれば幸いです」

「捕らえよっ!」

「「おうっ!」」

殺到して来る兵に対し、メイドはもう一度軽く一礼をした。

「王国軍の精鋭が全滅か」

それを受けたハーフレンは、手にした報告書を机の上に放り投げた。

王城内で見かけなくなったメイド長は、今度は外に出て兵士たちの掃除を始めた。

走っている兵たちに襲いかかっては、彼らの伸ばすべき能力を伝え教えて行く。怪我を負う者も多いが練習に怪我は付き物であり、何より鍛えるべき方向性を示された兵たちは、怪我も治りきらないまま鍛錬に勤しんでいる。

「本当に始末に負えん化け物だな」

「はい」

「で、お前はこの行動をどう思う?」

控えている長身のメイドに声を掛けると、彼女は少し思考し口を開いた。

「我が師は実戦を離れて長いです。普通に考えれば……実戦感覚を養っているかと」

「そうだよな。つまりアルグを襲撃する所を俺たちに阻まれると想定しているんだろうな」

「はい。事実アルグスタ様には通常の4倍にあたる監視を付けています。我が師も十分に警戒しているかと」

「それでもあの化け物は絶対にアルグに接触して来る」

腕を組みハーフレンは控えるメイドを睨みつける。

「必ず邪魔をするぞ」

「はい」

はて?

扉が開いた状態で僕の動きが止まった。

今朝もいつも通り執務室に入ると、メイドさんがまだ掃除をしていた。

あ~。昨日は少し残業して行ったから掃除出来なかったのかな? 何か悪いことしたな。

「申し訳ございませんアルグスタ様」

「良いよ。掃除して貰ってるんだもん」

「急ぎ片付けますので」

受け答えをするメイドさん以外は黙々と手を動かし。掃除を終えて部屋を出て行く。

うん。何か今日は良い感じだな。掃除したての部屋で仕事とか悪くない。

「で、これは何でしょう?」

僕が使っている机の上に置かれた手紙。

でも蝋封がされていて……簡単に開けられないようになっている。

ペリッと剥して中を見ると、便箋とプラチナ製のプレートが1枚入っていた。

『どうよ?

マリスアン』

簡潔を通り越した魂の叫びを見た。

随分と時間はかかったけど、あの魔女プレートを刻んだんだ。

もう一つの中身であるプレートを手に取って中身を確認する。

うん……たぶん平気なはず。

「おはようございますアルグスタ様」

「おはようクレア。あれ? 可愛い恋人は?」

「誰のことですかっ!」

からかったら全力で怒りだした。

「もちろん双子のミルのこと」

「……」

「誰と勘違いしたのかな?」

「知りませんっ!」

顔を赤くして彼女は自分の仕事机に向かう。

ちなみにイネル君は各部署の書類を回収して来てからからこっちに来るんでいつも遅い。

「ん~。誰かな~?」

「知りませんっ! いい加減にしないと怒りますよっ!」

「おーおー。怖いですね~」

「このぉぉぉぉおおおお~っ!」

ニタニタと笑っていたら、キレたクレアが机を叩き出した。

と、丁度そこに書類を抱えたイネル君がやって来た。

「おはよ~」

「……おはようございます」

「……っ!」

自分の様子に完全に腰が引けているイネル君の様子を見て、クレアがまた顔を真っ赤にした。

「大丈夫? クレア?」

「煩い馬鹿っ!」

「……ごめん」

心配で駆けよって来たイネル君に噛みつくクレア。

肩を落としてトボトボとこっちに来る後ろ姿を見て、クレアがハッとした様子で泣きそうな顔を浮かべている。

うむ。やはり恋愛には素直さが大切だと僕は思う。

「ねえイネル君」

「はい?」

「この一番上って何?」

「良く分かりません。回収箱の中に置かれていたんです」

置かれていたか……。

手に取って確認するがどうやら本当にただの手紙のようだ。

問題はそこに押された蝋封だ。これって確か……王弟さんの家の奴だよね?

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