軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ケーキです~?

本日の授業を無事に終えて執務室に戻ると、事前に買い物を頼んでおいたクレアがガッツリとケーキを食べていた。片手で摘まんで持って、大きな口を広げて……後ろに居たフレアさんが脇から覗いて、僕を押し退けて部屋に入るなりドアを閉じた。

鈍い音が数度響いてからドアが開いたので、こっそりと中を覗いてスプラッターな現場になっていないことを確認する。

床に潰れた蛙のような姿のクレア。そして自分が使っている机に座るフレアさん。

本当に何があったんだろう?

「……ケーキです~?」

「うん食べて良いよ」

「は~いです~」

キャミリーがノイエの手を引いてソファーに向かう。

大丈夫。センターテーブルの上に置かれているケーキは、生クリームたっぷりのホワイトケーキだ。血のトッピングとかされていないから平気なはず。

こっちの世界では果物のトッピングが少ない。その手の文化が無い訳では無く、果物の保存方法の都合だ。だから基本はジャムになる。生の果物を乗せるなどと言ったケーキは余程のことが無いと出て来ない。

ドラゴンのお蔭でこんな場所に弊害が生じるとは……。

「ノイエ」

「……はい」

「いっぱいドラゴン退治してね」

「はい」

嬉しそうにアホ毛をフリフリさせる彼女はキャミリーと一緒にケーキを食べ出した。

フレアさんが不満げな視線を寄こすが無視だ。美味しいケーキの為なら僕は鬼にもなろう。

「で、そこの潰れた蛙? 明日の予定に変更は無しだよね?」

「……はひ」

「分かった。ならそのまま潰れてて良いや」

関わると僕が不幸になりそうだしね。

とりあえず今日の分の仕事を……と、最近悪さをし過ぎたせいか、こっちに回って来る仕事量が減ったな。何より回って来る書類の不備が極端に減った。その皺寄せを喰らっている人が僕のことを恨んでそうだけど。

ヤバい。明日からノイエは待機所での待機だ。

暗殺とかする気なら絶対にノイエが居ないタイミングで仕掛けて来るよね? どうしよう。

「ん~」

「どうかしたんですか?」

腕を組んで悩む僕に書類の提出の為近づいてきたフレアさんが声を掛けて来た。

「魔法を習いたいんだけど」

「そう言うことですか」

「誰か良い先生とか居ない?」

「アルグスタ様の師となると……」

フレアさんも腕を組み悩む。

実の問題はこれだったりもする。

僕に魔法を教えてくれる人が居ないのだ。厳密に言えば教えられる地位の暇人が居ない。

腐っても王族な僕に魔法を教える。

一歩間違えば簡単に暗殺できる環境なので、確りとした地位と人格を擁する人が必要らしい。

「……簡単に思いつきませんね」

「フレアさんに習うとかダメなの?」

思い切った質問をしてみる。

と、彼女は何故か肩越しにノイエの様子を確認した。

キャミリーとケーキを食べているノイエのアホ毛はフリフリのままだ。

「私の場合は一応師に学びましたが大半が独学なので」

「人に教えられない?」

「ですね」

これだから天才肌の人って困るわ。

「ちなみにアルグスタ様はどのような魔法を習得したいのですか?」

「ん~。使えるのは知っているけど何に適しているとか知らないのよね」

「そうですか。なら確認しましょう」

へっ?

彼女は自分の机に戻ると、何やら不思議な色をした紙を持って来た。

黒と緑色の迷彩色な感じの不思議な紙だ。

「それを両手で掬うように持ってください。はいそれで良いです」

「これは何?」

「ええ。授業の一環にと考えていた物です。魔法の適性のある生徒に見せてみようかと」

だから準備してあったのね。お蔭で助かったけど。

興味を覚えたのか、床で潰れていた馬鹿とケーキを食べていたお姫様がこっちに来た。

ノイエはフリフリさせたまま3個目のケーキの制圧を開始した。

「で、何すれば良いの?」

「その紙に向かって意識を向けてください。適性ごとに変化します」

「意識するとか曖昧な……って浮いたね」

紙が微かに震えながら掌の上で浮いた。

「アルグスタ様は放出系ですね」

フレアさんはそう言いながら紙を取ると今度は自分でも同じことをする。

皺のあった紙が新品のようにピンと伸びた。

「強化系はこうなります」

「あともう一つは?」

「シワシワになります」

妹が興味深そうに伸ばして来る手を叩き、フレアさんが紙を軽くひと折りして伸ばした。

「ん? それがあれば簡単に魔法を使える人を探せるよね? 前にお盆を覗き込んだあれって何なの?」

「お盆? ああ王家が所有している聖盆ですね。

あれは何度でも使えるんですが、これは何回も使えないんです。

適性は分かりませんが才能ある人を見つけるだけならあっちの方が良いんです」

「へ~」

と、ケーキを食べているノイエにお姫様が何やら耳打ちを。

フワッと立ち上がった彼女は、フレアさんの横に来るとその紙を奪い自分の手の上に乗せた。

「あっ」

フレアさんの素の声が響いた瞬間、ノイエの掌に乗っていた紙が爆散した。

文字通りピンと伸び切って四方に飛び散ったのだ。

『褒めて』と言わんがばかりに頭を突き出して来るノイエを撫でる。

「これって強化系?」

「……はい」

疲れた様子で頷いたフレアさんが、笑えない笑みを浮かべる。

「今のがこれの問題ですね。脆い割には貴重で高価なんです。ええ本当に高価なんですよ」

「……代わりの品の請求とお詫びに好きな物の請求もドラグナイト家に回して下さい」

ブチっと切れている彼女に対し、誠心誠意謝るしかなかった。

ちなみに後日……本当に高い物だったらしく、請求書を持って来たクレアが金額を二度見して蒼くなっていた。

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