軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

全員焼くわよ?

「そんな訳でルッテに試作品を渡してせっせと改良を進めていた訳です」

ようやく活版印刷的な物を作り出してこれからと言う時にっ!

馬鹿兄貴が使えないなら国王か宰相様に泣きつこう。

と、僕の両手をミシュが握り上下に激しく振った。

「つまりそれが完成すれば、あの書類作りから解放されるんですよね?」

「うん。まあね。ただ足らない部分は書き足すようだけど、簡単な物なら数字を書いて合計の数字を書けば終わるんじゃないかな」

出来るだけ楽が出来るように作ったしね。

と、ブンブンとミシュが激しくシェイクハンドをして来る。

「ふふふ……つまりあの厄介な書類仕事から解放されるんですよね?」

「そうなるように今後も改良していくよ? ただ専門の職人さんを育ててそっちがやって行くだろうけどね」

結果としてユニバンスに印刷技術が広がることになるけど、一応主導は宰相様ってことになってるから問題は無いはずだ。

念の為にこれからしばらく気配を消して生活しよう。

「でも暗殺者か……」

それは計算してないよ。

マシで泣きそうになっていたら、ポンとミシュが無い胸を叩いた。そして咽た。

防御力ゼロなのにそんな勢い良く叩けばそうなるよな。

「ゲホゲホ……。大丈夫ですアルグスタ様」

「何が?」

めっちゃ良い笑顔でミシュが自分を指さす。

「暗殺者の方は私がどうにかするんで、アルグスタ様はその印刷とやらを仕上げてください」

「え~」

「ちょっと……ここは喜ぶ場所ですよね?」

「ミシュの言葉ほど不安な物は無い?」

「良しこの糞上司。私がどれ程凄いか見せてやる~っ!」

殴りかかって来たミシュは、ノイエに投げ飛ばされた。

って、どっかの馬鹿が近衛の訓練を見ている隊長っぽい人に突っ込んだんですけど?

「ノイエ?」

「……抵抗したから」

「人の居る方に投げちゃダメなの。投げるなら人の居ない方にね」

「分かった」

こっちを見ているキャミリーがフレアさんに何か聞いている。

上級貴族の令嬢が鬼の形相を見せたから、急いでノイエを連れて僕らは謝りに駆けだした。

「あれ? チビ姫が何で居るんだ?」

「おにーさんです~」

体当たりして来た次期王妃を受け止め、小脇に抱えハーフレンが歩いて来る。

「俺の執務室を肉の匂いで充満させたアルグスタの馬鹿は?」

「隊長が投げたミシュが、人に当たったから謝りに行ってるわ」

「人の居る方に投げるな。せめて人の居ない方に投げろ」

その言葉にフレアは肺の中が空になるほど、深いため息を吐き出した。

「まだ肉は残ってたか。ルッテ? ここのは全部食って良いのか?」

「お願いしま……げふっ」

端でお腹を抱えているルッテとクレアはもうこれ以上は無理そうだ。

こっそりと抜け出したイネルは、馬車の乗り合い場に向かい急いでいた。

つまり残飯処理をする人間が必要だったのだ。

軽く頭を振って、フレアは軽く火を強め網の上に肉を並べる。

「お前の手料理か……料理か?」

「気にしないで食いなさい」

「へいへい」

焼けた物から食うハーフレンの様子を見て、フレアはその視線を遠くで謝っている上司に向けた。

そしてらしくないことをする人物に視線を向け直す。

「どうして」

「ん?」

「どうしてアルグスタ様の暗殺者の対応をしないの?」

「ああそれか」

小骨を噛みながら、彼は腕組みをする。

「楽しそうな話に俺を混ぜなかったことに対しての恨みだな」

「本気なの?」

「半分はな」

クククと笑い自分の隣に座り肉を食べ始めた少女の頭を撫でる。

「どうせ俺が動かなくってもあれが動いたろ?」

「ええ。そうね」

「だから動かなかった」

面倒臭そうに肩越しに視線をやると、どこかの馬鹿が元気よく弟を追いかけ……その嫁に投げられている。

「この話を聞けば、あれが動くのは間違いなかったしな。だったらわざわざ俺の部下を動かす必要なんてない」

「でも……あれが動いたら、全部狩るわよ?」

「ああ。だから動く前に部下に脅すように命じてある。それでも止まらなければ十分な犯罪行為だ」

「そうね」

上級貴族となったアルグスタにはまだ王位継承権が残っている。

だから彼を襲おうとする行為は、国家に対する反逆行為でしかないのだ。

「あの馬鹿の嫁がキレて、暴れるよりマシだと俺は思うぞ?」

「止めてよね。隊長が本気で怒ったら」

想像だけでフレアは全身に鳥肌が立つのを感じた。

怖すぎて想像が追い付かなかったのだ。

「だからこそあっちの馬鹿が動いた方が良い」

「……そう元の飼い主が判断したのね?」

「そうだな。それで良い」

見つけたワインに手を伸ばしハーフレンはそれを一気に煽る。

やれやれと頭を振ったフレアは自分が使っていたコップを前に居る王子に差し出した。

「俺が口を付けて飲んだヤツだぞ?」

「そうね。それで?」

「はいはい」

過去を思い出し彼は、素直に白旗を振った。

相手のコップにワインを注いで、軽く打ち鳴らすと互いに煽る。

昔はこうして良く飲んだりもしたのだ。

「って馬鹿王子発見っ! ノイエ。アイツはドラグナイト家の敵だっ! 攻撃を許可するっ!」

「ってだから私を投げるな~っ!」

「ちょっ! アルグっ! 馬鹿は人の居ない方に投げろっ!」

「そもそも人を投げ合うな~っ!」

キャッチしたミシュを投げ返し、ハーフレンが次弾としてキャミリーを担いだところで、フレアの一撃で全てが終わった。

「いい加減にしないと……全員焼くわよ?」

余りにも据わり過ぎたフレアの目に……ノイエですら素直に従い土下座した。

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