軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

お姉ちゃんに同じことをしてあげなさい

ユニバンス王国・王都内下町

「私思うんだ。親友」

「何かしら?」

「帝国で色々と頑張ったと思う訳よ。でもその私がどうしてこんな姿に?」

隣のベッドの上に転がっている包帯だらけの存在に、褐色の肌を持つ女性……リリアンナは顔を向けた。

痛々しい姿に見えるが、それもそのはず。相手は大怪我をしている。

「日頃の行いかしら?」

「良いと思うんだよね!」

「なら運が無かったんでしょうね」

もうどう答えても噛みついて来る。

深くため息を吐いて……リリアンナは正面に存在して居る窓の外に目を向けた。

ボロの服を着た少年少女たちが遊んでいる。

昼間から労働を課せられることなく遊んでいるのだ。

本当にここは平和な国なのだと……嘘では無かったのだと改めて嚙みしめる。

「本当にここは良い国ね」

「あ~。故郷はどんな感じだったの?」

「貧しい国だったからあんな風に子供たちが昼間から遊ぶことは無かった。帝国は……ある意味で平和だったのでしょうね。私は毎日地下牢で見張りの慰め物になっていれば生きられたのだから。だから帝国の子供たちがどんな暮らしを送っていたのかは知らないけど」

「それもどうかと思うよ」

全身包帯……ミシュはジッと天井を見上げていた。

確かに近年のユニバンスは平和ではある。あくまで王都ではだ。

地方の都市に行けば、子供たちは普通に働いている。働き手が極端に足らないからだ。

「少しでもこの平和が長く続けば良いのだけど」

「それね。まあそうするのが私の仕事らしいんだけどね」

「その姿で?」

「ウチの師匠って基本馬鹿なのよ。弟子への愛情表現を拷問と勘違いしている馬鹿?」

再教育と言うことで再教育をされたミシュは……ボロボロの状態で診療所送りになった。

「まあそんな馬鹿ももう齢だからね。だから後継の育成に焦っているのよ」

「それは……何とも言えないわね」

「だね」

あれの後を継ぐ『メイド長』は決定している。けれどもう1つの顔は決まっていない。

何でもあの最強は何処かのチビッ子メイドに継がせたがっているが、あそこの兄は中々の曲者だ。たぶん無理だろう。

「私って盾じゃなくて剣だから師匠と相性が悪くてね」

「そうなの?」

「なの。おかげで顔を合わせると殺し合いしてるんだけど」

「殺し合うんだ」

腰のクッションに体を預けリリアンナは軽く背筋を伸ばす。

この数年で1番と言っていいほど体の具合が良い。寄りかかっているが自力で上半身を起こせるようになるまで回復するとは思わなかった。

担当している医師が言うには、『立って歩けるようになるまで治してやるから心配するな』と言われている。自分のボロボロの足が本当に動くようになるのか、期待と恐怖を感じている。

「ねえミシュ」

「何さ?」

「生きてるって凄いね」

「だね」

必死に生きることだけを望んで再教育を終えたミシュとしても激しく同意できる言葉だ。

「失礼します」

礼儀正しく挨拶をして入って来たのは、この診療所の若き見習い医師だ。

「リリアンナさん」

「はい?」

「もう少ししたら今日の治療をするので」

「……分かりました」

宣言を受けリリアンナはその小さな胸が一杯になるほどの空気を吸い込んだ。

大きく息を吐いて気持ちを落ち着かせる。

自分なら今日も耐えられると強く心に言い聞かせた。

「大丈夫。早くリグ様に逢うまではどんな拷問でも」

「治療ですから」

にこやかに告げてくる相手にリリアンナは救いを求めるように隣を見た。

「医者が治療だって言ってるんならそうなんじゃないの?」

「あれを治療でくくって良いのかしら?」

「信じて我慢すれば治る。簡単なことだよ」

「簡単……」

納得は出来ないがリリアンナは自分自身に『頑張れ』と言い聞かせた。

体内に手を入れられて色々とかき混ぜられるあの治療を……自分が体が万全になるまで耐え続けるしかないのだと悟りながら。

ユニバンス王国・王都郊外ドラグナイト邸

「アルグ様」

「ほい」

「もこもこ」

「だね」

浴場内を漂うシャボン玉をノイエが反射的に追いかけパチンと両手で叩いて潰す。

あれを捕獲するのは流石のノイエでも不可能らしい。

「弟子?」

「泡は出ましたよ?」

実験は成功だ。湯船は泡にまみれている。

「……液体石鹸を使ってたでしょう?」

「香料も入れて匂いにもこだわりを。ありがとうございますっ!」

説明しながらバスタオルでその身を包んでいる先生の姿を見たら叩かれた。

回数で言えばノイエの姉たちの中で圧倒的に少ない先生だが、僕はもう何度もその裸体を拝んでいるのです。ですが先生はこうした場所だと肌を隠したがります。どうしてでしょうか?

「アルグ様」

「はい?」

呼ばれて振り返るとノイエがもこもこの湯船にダイブした。

全体的に白いノイエが白い泡の中に突入すると姿が消えてしまう。というか潜ったか?

「……目が痛い」

「石鹸水だからね」

ザパッと泡の中か姿を現したノイエがパチパチと瞬きを繰り返す。

それだけで目の中の石鹸水は流れ出して普通の状態に戻るのだから凄いチートだと思う。

「少し石鹸の量が多かったかも」

「馬鹿みたいに入れるから」

「あはは~」

笑って誤魔化すが、先生はそんな僕を無視して湯を浴びると泡を巻きつかせて湯船の中に。

「泡で溺れそうよ」

「計算違いでした」

「全く」

浴室内で風が起こり泡を湯船の端に押し集める。

「見つけた」

「お~。偉いぞノイエ」

「はい」

ついでに湯船の中に落ちていた泡発生の魔道具をノイエが見つけ出してくれた。

「しゅわしゅわする」

「それを足とかに当てると気持ち良いらしいよ」

「はい」

まずは自分で確認するとばかりにノイエが……アホ毛が無反応だな

そんなお嫁さんの様子を見ながら僕を体を洗って湯船に向かう。

「もっとパチパチが良い」

「ノイエって意外と強い刺激を求めるよね」

受け取って軽く魔力を流す。

弱になってしまったよ。持つ場所間違ったな。

もう片方の端を持って魔力を流すと強になった。

パチパチだ。これが大阪名物のパチパチ、

「弟子。貸して」

「はい」

ボケる前に先生に邪魔をされた。

仕方なく魔道具を渡すと、それを手にした先生がノイエを呼びよせる。

「ノイエはあまり効果が無さそうだけど」

「んっ」

先生が使用実験を始める。

まずはノイエに使って……まあノイエなら多少の間違いが起きても食べれば治るしね。

納得はいかないけど一番安全とも言える。

「お姉ちゃん」

「ん?」

「そこは……んっ」

「あら? ノイエってこんな場所が意外と弱いのね?」

こんな場所って何処でしょうか? 夫として知る権利があると思います。

ええい邪魔な泡どもめ! 先生の手がどの位置か分からんでは無いか!

急ぎ接近を試みるが、近づいた分だけ相手も離れる。

アイルローゼめ~!

「ダメ。お姉ちゃん。そこはダメ」

「あら? ここも?」

「ダメ」

ウチのお嫁さんが愛らしい感じで~! 見せろ教えろ具体的に~!

「あらら? ノイエ。どうかしたの?」

「ダメ」

「ドラゴンスレイヤーも形無しね」

妹で遊んでいる貴女も魔女としての何かを失っていますが!

「で、さっきから何かしたいの? 弟子?」

「間近で見たいです」

「正直に言えば何でも通ると思っているの?」

「ダメですか?」

「却下」

「……そうですか」

この手は使いたくなかったが仕方ないよな。

「ノイエ」

「はい」

「お姉ちゃんに同じことをしてあげなさい」

「はい」

一気に復活したノイエがアイルローゼから魔道具を奪い取る。

「ちょっとノイエ! 私にはしなくて、ひゃん!」

可愛らしい声を上げて先生が鳴き出した。

良し良し。後は全てを間近で観察すれば良いのですね。

頑張るぞ~!

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