軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

告発するです!

ユニバンス王国・王都王城内通路

「ちょっと全力で逃亡しただけじゃん」

「ちょっとと言いながら全力で逃げたのが良くなかったんじゃないんですか?」

「酷いなイネル君。僕は常々全力で挑まないと命が危ないんだよ」

「今の状態だと説得力が……」

書類の束を抱えて歩くイネル君の背後に僕が居る。

彼の両肩に手を置いてゆっくり歩いてもらっているのには訳がある。足が痺れて立って歩くのが怖いんです。本当なら支えて欲しい。こんな時に先生も猫もお嫁さんも居ない。

「真面目かね君は」

「普通だと思いますが」

「……あのクレアをお嫁さんにするんだから普通ってことは無いか」

「とても失礼なことを言われている気がするんですけど?」

「気にするな。お城で有名なお漏らし娘の旦那様」

「八つ当たりしてますか?」

気のせいだよイネル君。八つ当たるなら直接クレアをイジメる。

イネル君を先頭にゆっくりと廊下を歩いてて思う。

なんかこの世界って極端に身長の低い人が居るよな~って。もう小人が何かがご先祖様ですか?

ただファシーやリグは許す。可愛いから。

「イネル君や」

「はい」

「君の祖先には身長の低い人とか多かったの?」

「あ~。父の血筋に多かったそうです」

「ほほう。母親の方は普通だったと?」

「はい。そう聞いています」

ふ~ん。つまり遺伝か。それなら……ん?

何か今恐ろしいことに気づいた気がしたよ。

一度落ち着いて深呼吸だ。

イネル君の御先祖……と言うか近しい血筋が、確か叔母様の血筋でしたよ?

で、最近叔母様とノイエが親戚だと判明しました。二親等ぐらいだっけ? 三親等か?

結果としてイネル君とノイエって家系図的に見ると繋がっていますか? 繋がっていますね。すると僕とあのお漏らし娘も遠い親戚になるわけですか?

うん。僕は三親等以上カウントしないことにします。

何故なら王家の血を引いているので遡ると面倒臭いことになるに決まっている。そう僕の中の何かが訴えて来る。

「イネル君や」

「はい?」

「……最近何か困ったこととかあったら何でも言ってね」

「そんな……アルグスタ様には良くしてもらっていますから」

あらお兄ちゃん。ちょっと泣きそうになったよ?

たぶんポーラのお婿さんってこういう良い子が似合っているのだと思います。

ヒューグラム家にはまだまだ弟が居たな。狙い目か?

「イネル君の弟たちってどんな感じ?」

「弟ですか? やんちゃばかりしていると両親が手紙で嘆いていました」

幼い頃はあれだ。腕白でも良い逞しく育って欲しいと言う精神で、

「妹の布団に蛇を投げ込んだりしたとかで大喧嘩しているとか。ああ。もし良かったら今度帰郷する時に弟や妹たちにお古では無い服を」

「皆まで言うな。コリーさんの所に行って好きなだけ貰って来なさい」

「それは流石に」

「気になどするな。君にはその権利がある」

普段から真面目過ぎて目立たないイネル君だけど、実際は縁の下の力持ちで我が隊の運営を一手に引き受けて居る訳で……実は彼が僕らの生命線か?

「あと好きなだけ焼き菓子を持って行くと良い。荷物持ちが必要ならクレアを連れて行けばいい」

「クレアは僕のお嫁さんで、まだ弟や妹と顔合わせをしていないから今度連れて行かなくちゃいけないんですけど」

「そうか。だったら少しは胸が膨らんで見えるブラジャーをコリーさんに頼んでおいてあげよう」

何て優しい上司なのだろう。

「それってお風呂で恥をかく奴ですよね?」

「あれが今更その程度の恥に動じるの?」

「家族相手だと……クロストパージュ家の御令嬢ですから」

王都の王城に居なければ、あれの残念具合がバレていないということか。

うむ。人って肩書だけで己の恥部を隠すことが出来るんだな。

深く色々なことを考えていたらようやく執務室に着いた。

と、何やらとっても騒がしいのですけど? 僕の部屋ですか?

「何ごとですか?」

念の為イネル君よりも先に僕が部屋に入る。

こう見えても僕は、数多くの戦場を渡り歩く負け知らずの元王子様だからね!

そんな僕の視界に飛び込んできたのは、赤と白の下着だった。

白い方は飾りっ気のない普通の物。

赤い方は飾りっ気が多すぎて何処か下品に感じさせる物。

「判定。ファシーの下着の方が可愛い」

「にゃ~ん!」

「納得がいかないです~!」

僕の判定に取っ組み合いの喧嘩をしていた2人が離れ、それぞれのリアクションを見せる。

「で、君らは何をしているのかね?」

「にゃ~ん」

とてとてと歩いて来たファシーが僕に掴まり上目遣いで前髪越しでこっちを見る。

「全てお前が悪いと理解した。チビ姫!」

「納得がいかないです~!」

「諦めろ。君よりファシーの方が遥かに可愛いのだよ」

「納得いかないです~! 私も凄く可愛いです~!」

「ほう。ならば甘えて見せよ」

「任せるです~!」

ジタバタと床の上で暴れていたチビ姫が立ち上がり、女の子走りで駆け寄って来ると抱き着いて来た。そして上目遣いで、

「おにーちゃん。大好きです~」

「甘えん坊な妹の存在を舐めるなよ!」

「理不尽です~」

取り出したハリセンボンバーでまがい物の妹を粉砕した。

「言葉じゃないんだよ! 仕草や目線で媚びるんだよ! それが出来ていないお前は失格だ~!」

「うな~! 何故か凄く言い負かされた気分になるです~!」

ハリセンを食らって床の上を転がり回るチビ姫が、ピタリと動きを止めた。

「どうしたチビ姫? 腹痛か?」

「違うです~」

何故か床を見つめてチビ姫がジタバタと手足を動かしだした。

「きっと忘れられているです~!」

「何を?」

「私はこの国の王妃です~」

「あ~。そんな事実もあったな」

大半の人が忘れているだろうけど。

と、何故かチビ姫が顔を上げた。笑うその顔を上げたのだ。

「言質は取ったです~。おにーちゃんは私が王妃と知って酷いことをしたです~?」

「はて? 何のことでしょうか?」

しかし本日のチビ姫は何かが変だ。

パチリと指を鳴らすと、壁際に控えていたメイドの1人がこっちにやって来た。彼女の手の中には手鏡が?

「その鏡は魔道具です」

「なん……だと?」

「おにーちゃんが今した悪行の全てがその魔道具に記録されているです~」

「なっ……何だって~!」

悪行だと? つまりそれは……

「赤い下着が似合っていないという本心を告げた辺りのことか?」

「みぎゃ~! 似合っているです! 私に赤は良く似合っているです!」

「馬鹿も休み休み言えよ。頭の中身が腐ったか?」

「もぎゃ~!」

七転八倒してチビ姫がそれでも顔を上げる。

「おにーちゃんの暴言と暴力の様子を記録したです!」

「それは意見の相違だな。あれはあくまで躾です。出来の悪い義理の姉を泣く泣く躾けているのです!」

「言うに事欠いてです~!」

何故かチビ姫が怒って立ち上がった。

「もう怒ったです~!」

「ほほう。ならばいつもの考え無しの突撃が? かかって来るが良い」

「しないです~。私は頭が良いんです~」

「馬鹿ほど自分のことをそう言うらしいな」

「本気で怒ったです~!」

地団駄を踏んでチビ姫が僕に向かいその指を向けて来た。

「ドラグナイト家当主アルグスタ・フォン・ドラグナイト!」

「はい?」

「今までの無礼の全てをこのキャミリー・フォン・ユニバンスの名の元に告発するです!」

ほほう。それは凄いな。

「ちなみに王妃への不敬罪は、絞首刑まであるです~」

うん。何故か知ってる。

「でもねチビ姫?」

「です?」

このお馬鹿は完全に忘れている。

相手が誰であろうが、王家であろうとも噛みつく猫の存在をだ。

僕の足に抱き着いていた猫の背を軽く押すと……迷うことなくファシーがチビ姫に襲い掛かった。

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