作品タイトル不明
陛下に申し上げます
ユニバンス王国・王都王場内議場
「……ですから、このようなことが起こり僕らは必死に帝都から脱出しました。キシャーラ様の領地に到着したのは、ノイエの魔力不足と最悪を想定して帝都より近い安全な場所に転移先を作っておいたからです。ここまで何かご質問は?」
僕の声に大半の貴族たちの視線が……椅子に腰かけている先生の足に注がれている。
本日の先生は足だし衣装に着替えて貰い、出来るだけ足を組み替えて貰うようにしてあります。ええ。そのギリギリの衣装で足を組み替えると言うことは、もしかしたらチラッと秘密の花園が~!
まあそんなことは起きないのですが、それを期待している馬鹿者たちが迷うことなくガン見している。
本日の僕はとても穏やかで賢者タイムを常に発動しているので、そんな些細なことでは怒りもしませんとも。ええ。だって僕は今朝方あの足をしたい放題してきましたから! 見るだけの君たちとはレベルが違うのだよ! レベルが!
ただ若干の問題は……僕が肩車しているファシーの太ももを見て興奮している剛の者が居る。
この世界にもロリ界の一族が居ようとは! お巡りさん! こっちです!
ロリ界の人は非合法な手法で自分の性欲を満たしている可能性があるので、後で馬鹿兄貴に通報して調査して貰おうかと思います。
未成年に手を出すなんて絶対にダメですから!
「質問が無いようなので……終わっても良いですか?」
議場の一番高い場所に声をかけてみる。
お兄様は……自分の眉間に拳を打ちつけていた。頭痛が止まりませんか?
「アルグスタよ」
「はい」
絞り出すようにお兄様が口を開いた。
「先に向かった者からの報告で帝都が罠だらけであると言うことは分かっていた。それを知り我々はお前を派遣した。そのことに関しては済まないと思っている」
「恐れ多いことです陛下。このアルグスタ、陛下の命であればいかなる場所でも向かいましょう」
実際は行きたくは無いけど、建前上そう言うしかない。
「お前のその忠誠心……本当に嬉しく思う」
だったら笑ってお兄様。どうしてそんなに苦しそうなの?
「だが……帝都を吹き飛ばすことを防げなかったのか? 術式の魔女が傍らに居て?」
「はい陛下。アイルローゼは我々の身を護るためにあの共和国の魔女と戦っておりました。我々では刻印の魔女が作り出した魔道具を防げるわけもなく、奮闘空しく退却することに。いいえ。命からがら逃げだすことが精いっぱいだったのです!」
軽く口の中を噛んで涙を浮かべる。
「帝都に住まう住人の全てを悪しき魔法の材料とし、あの魔女は我々を殺害する為だけに……必死にどうにかと思いましたが、あの魔女に一矢報いるのが精一杯でした」
「……そうか」
うん。嘘は言ってないはずだ。
頑張った。とても頑張った。頑張り過ぎて魔女ごと帝都が吹き飛んだ。
刻印の魔女の魔法って怖いわ~。てへへ。
「全てはあの魔女が画策したこと……と片付けるには無理があると思います。誰が魔女個人の力で帝国の帝都を生贄にした魔法をと考えるでしょうか? 共和国は過去からこの国に対し色々と工作して来ています。その延長上に今回のことがあったとしてもおかしくありません!」
「そこまで踏み込んだ結論は出せないが……」
僕の踏み込みにお兄様が引いた。
へいへいブラザー。共和国の黒幕説に靡いちゃおうぜ。
「陛下。帝国より送られた葬儀参加国に共和国も名を連ねています」
「ふむ」
補佐役で陛下の傍に居る馬鹿兄貴が何か言いだした。
「未確認ですが共和国より騎士団が帝国に向かったとの報告も一応あります。仮に裏で手を結ぶ……と言うよりも黒幕である可能性は拭えないかと」
「近衛団長も同じ意見か?」
「あくまで可能性が高いと言わせていただきます」
そうでしょ? あの国は僕らに喧嘩を売って泣かされている過去がある。何より北東部を独立させられて新領地としてユニバンスに取られているしね。
兵を使った戦いではドラゴンの餌になる恐れがあるから、こんな搦め手を使ったんだよ。
まあ何よりユニバンス国内の共和国派と帝国派の貴族たちが全員アイルローゼの足に視線を向けているってことは……もうこっちの貴族に介入することが出来なくなって来たか?
ある時期立て続けに貴族の当主がお亡くなりになっていたからな~。僕も粛清されない様にお国の為に頑張ろうと思います。主にノイエがですが。
「アルグスタの報告を聞く限り……今回の一件は共和国の魔女の行いであることは間違いなさそうだ」
「はい。残念なことに帝都と共に証拠となる物も吹き飛んでしまいましたが」
「……それが問題であるな」
お兄様が悩んでいるのは、共和国のせいにしても証拠が無いって部分だ。
だから相手から『笑えない嘘を言ってんだ? 殴るぞ?』と来られるとこっちとしては辛い。
「陛下。宜しいですか?」
「何だ? アルグスタ」
「はい」
証拠が無い以上、その罪全てを共和国に押し付けるのは難しい。
だったら頭の中を切り替えましょう。
「帝国はこれより荒れること間違いないでしょう。そして共和国はまたどんな非道な手を使うか分かりません。ですから自分はある作戦を立案しそれを上奏しようと思っています」
「お前がか?」
「はい」
作戦を考えるのはホリーだけどね。
「共和国とは今後必ず揉めると思います。ですが我が国には優れた魔法使いが居ます。彼女の手を借りれば……必ずや今後この国が穏やかに過ごせる方法があります」
「……また恐ろしい魔法でも作るのか?」
「いいえ。自分は彼女にそんなことなど望みません」
カタンと音がしたからチラッと視線を動かすと、先生が頬を赤くしてモジモジしていた。
あの~先生? その幅の短いスカートを握ってモジモジすると、ギリギリのギリギリがギリギリ過ぎて馬鹿な貴族たちが前の机に手をついて身を乗り出す始末だよ?
「彼女に協力を願いますが、兵器や魔法など作りません」
「うむ。であれば後で細かな話を聞くこととしよう」
「畏まりました」
露骨な共和国派の貴族が減ったとはいえ、まだ裏で繋がっている人は居るはずだ。
このプランは余り露見させたくない。何より刻印の魔女と術式の魔女の2人が居るならば、これを早くに実行するべきだと僕の中の何かが訴えかけている。
「アルグスタからの報告は以上とする」
「はい」
恭しく頭を下げて……やはり全ての悪は共和国とあの残念魔女でしたで押し切って正解だったな。
何より僕らがヒャッハーしすぎて帝都が吹き飛んだなんて絶対に言えないしね。
「ではアルグスタ」
「はい?」
執務室でのんびりお茶でもと思っていたら、お兄様から冷ややかな声が。
「キシャーラの元から離れ王都内を色々と移動し、ようやく本日登城したその理由を……納得いくまで説明して貰おうか?」
「それ~は」
あのカオスな日々を説明しろと? 無理で~す!
「陛下に申し上げます」
「何だアルグスタ」
「……凄く疲れたから休みたかっただけなんです!」
心の底から本音を告げた。間違っていないはずだ。
「なぁ~」
ただ頭の上から『それは言い訳にもならない』と言いたげな鳴き声が。
「アルグスタよ」
「ふぁい!」
ゆらりと立ち上がったお兄様が、スッと僕を指さした。
「私の私室に来い! 今度という今度は許さん!」
うひ~。お兄様がキレた~。
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