軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ご褒美楽しみにしてる、ぞ

ブロイドワン帝国・帝都帝宮内

「お~。あれが帝都の宝石か~。初めて見たぞ~」

「だね。で、そのお宝をあの植物お化けが持っているんだけど?」

「だぞ~。良くないぞ~」

シュシュがフワフワと踊り出す。

会話が間延びするから抱きしめて封じようとしたが、僕の両手には二代目エチケットトイレがある。無理だ。

「大丈夫~。頑張って~普通に喋るように~気を付けるぞ~」

「多少延びてるぞ?」

「誤差の範囲だぞ~」

そうか? まあ普段のシュシュに比べると短いか。

「それであの馬鹿は……抉ったね」

「抉ったぞ~」

で、両手で押さえつけるように持って……割れだした。

「やっぱりね~」

全力でフワるシュシュが前へと出た。

「旦那様~」

「何でしょう?」

「全ての魔力をつぎ込んで~一発大きいのをするから~後は頑張れだぞ~」

まさかのここで丸投げ?

「そんなシュシュ! 一緒にエロエロしようと約束したじゃないかっ!」

「してないぞ~」

したはずだ。僕の心の中にはその誓いが宿っている。

「僕を独り見捨てて逃げるだなんて許さないぞっ! 一緒に最後まで居てくれ! 最後まで一緒に胃液で喉を焼こうっ!」

「本気でお断りだぞ~」

フワるシュシュが動きを止めた。

「無事に生き残るんだぞ?」

「先生も居るしどうにかなるっしょ……お疲れ様」

悪ふざけもここまでらしい。

シュシュが魔法の詠唱を始める様子を見つめる。

ノイエもそうだけど戦う女性って本当に奇麗だよな~。

もっとこう女性が世に出て行く環境作りが大切だと思うよ。うむ。今後の僕の課題はそれだな。

なんかあっちで化け物が騒いでいるが、悪い環境であればそれを改善する努力が必要なわけです。反発すれば反発した分だけ自分に返って来るしね。

だったら少しずつ仲間を増やして環境を変えていく地盤を作らないと。

確かに地道で達成するまでに何年かかるか分からないけど、それを達成したら……僕にそんな権限なんて無いけど、その人に『魔女』の称号を送りたいと思うよ。

偉業なんて僅かな期間で達成できる訳ないんだから。

あの先生ですら10年近く術式の研究をしてそれが評価されての授与なんだし。ただ先生の場合は“神童”で普通の人よりスタートが早かったけどね。

「やりなさいシュシュ」

「ほ~い」

横に移動し射線を開けた先生の横をシュシュの魔法が飛んでいく。

化け物と化した残念魔女の手前で停止し、光の膜を広げて包み込む。

「そんな……こんな馬鹿なことがあるかっ!」

醜く嗤う化け物からその声が響いて来た。

馬鹿なことと言うのであれば、そもそもこの人たちに喧嘩を売ったお前が悪い。

ぶっちゃけ異世界人である僕の存在が霞んでしまうほどに、ノイエの中の家族たちはチート揃いなんだ。

これがラノベだったら絶対に作者はクレイジーな生物だろう。

広がる膜が化け物を覆い尽くす。

肩で息をするほど疲労したシュシュが今にも倒れそうだから慌てて駆け寄る。

「使う?」

「……ばか」

「知ってる」

持っていたエチケットバケツを放り捨て、今にも崩れ落ちそうなシュシュを抱きしめる。

「ふざけるなっ!」

絶叫に等しい声に視線を向ければ、自分が潰そうとした虹色の石をどうにか戻そうとしている愚かな存在が居た。

自分で扱えきれない武器を使った者の末路かな?

ズンッ!

地震かと思うほどの地面に響く振動とシュシュが作った膜の中が一瞬で白い煙に覆われた。

やはりどうにも出来ずに爆発したらしい。

「……旦那さん」

「ほい?」

自力で立ててないシュシュを抱え直すと、彼女は薄く笑ってキスして来た。

「ご褒美楽しみにしてる、ぞ」

フッと音も立てずにシュシュが消える。

代わりにコロコロと足元で宝玉が転がっていた。

何か凄いの請求されそう。まあここまで頑張ってくれたのなら仕方ない。

「ロボとニク~」

適当な方向に声をかけると、パタパタと開閉部分を動かし飛んでいるロボが落ちて来た。

ロボはスルーしてその上に乗っているニクという名のリスを捕まえる。

『なんでやねん!』

「こっちはファシーの使い魔だしね」

石畳の上に落ちたロボを踏んづけて、ニクに2つ目の宝玉を押し付ける。

背中と尻尾で一つと両手で一つ抱えたニクが全身を震わせた。

頑張れニクよ。これは試練だ。

「なに馬鹿をしてるんだい?」

「ウチの飼いリスに対する躾?」

「虐めだろう?」

何故か歩いて来たオーガさんがニクを回収する。

まさか非常食にする気か? ウチのノイエですらまだその選択肢は選んで……実行はしてないのに。

「そっちの緑のは?」

「……ポーラの玩具です」

『なんでやねん』

「まあ良い。預かっとくよ」

摘まむようにしてロボまで回収した。

本気で喰う気か? ロボは堅いぞ?

「それであのメイドは?」

「魔力切れで帰りました」

「何だいそれ?」

「そう言う魔法です」

「はんっ! 本当に魔法って奴は面倒だね」

異世界人であるオーガさんからして魔法とはやはり厄介な物らしい。

日本人な僕からしても意味不明な存在だしね。作ったのは同じ日本人ですけど。

「終わったんなら帰り支度を始めて良いのか?」

「ん~」

終わったんだよね?

問われて視線を巡らせると、何故か先生が移動していなかった。

自分の方に向かい漂って来る白い煙を……白い煙が先生を避けてどんどん消えていく。

何あの魔法? 焚火の傍で使ったら最強だな。

「先生があの場所から移動してないのって嫌な予感がするんだけど?」

あまり触れたく無いフラグだったけど、仕方なくオーガさんに聞いてみる。

彼女はニクを肩に乗せると、空いた手で近場に転がっている壊れた未来の猫型ロボットの頭部を掴んだ。

「確認すれば良いんだよ!」

オーガさんが軽い感じで投擲した残骸が、青い弾丸となって目にも止まらない速度でっ!

ズドンッと化け物が居た辺りに振動が走り、新しく煙が立ち込める。

振動と音で自分の横を何かが通り過ぎたことに気づいた先生が、驚いた表情でこっちに顔を向けて来る。

違うんです先生。犯人はこのオーガです。

僕は必死にオーガさんを指さし彼女の怒りの矛先がこっちに向かないようにした。

「はんっ! 生きてるじゃないか」

「はい?」

先生の睨みもどこ吹く風か、オーガさんが頭を掻きながら発した声に……僕は新たに煙が立ち込める方へと目を向けた。

無理です。煙で何も見えません。

しばらく待つと煙も落ち着き、そしてようやくそれを見た。

枯れた枝を適当に集めて材料にし、それで作った蜘蛛の頭部が人の頭と言った感じの何かだ。

僕的にはあれを『人間』とは定義できない。はっきり言って化け物だ。

枯れ果てた感じの蜘蛛は弱々しく動き、ヒビだらけの顔がアイルローゼを見る。

「負けない。まだ終わりじゃっ」

言葉の途中で蜘蛛が地面と仲良しになった。強制的にだ。

「帰った」

大きな背負い袋を背負った場の空気も読めないウチのお嫁さんが、蜘蛛の背に着地した結果とも言う。

良く分からないがとても重そうだ。

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