軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

今回は冤罪よ!

ブロイドワン帝国・帝都帝宮内

「アルグ様」

「おっおう」

共和国の鎧騎士たちを鉄屑と血肉色した液体へ変化させたノイエが、僕らの居るドーム状の壁の外まで来た。

ただ様子がおかしい。アホ毛なんて完全に力を失いへんにゃりを通り越えてペタッとしている。垂れ耳のウサギほどのペッタリ感だ。

「もう無理」

「はい?」

気絶でもするかのように意識を失うノイエが倒れそうになる。

が、彼女の背後に居たオーガさんが……おいお前? もう少し愛情を持ってノイエに接しろ。頭を掴むな。

「この化け物は底なしか? オーガのアタシの方が可愛く思えるよ」

「可愛くはない。鏡を見ろ」

「あん?」

イラついた様子でオーガさんがこっちを見る。

「ノイエを上の穴から入れなさい」

「生意気言ってるとこの娘を食ら、」

「トリスシア様」

「……」

ドームの上に居るポーラの声にオーガさんの顔が渋面になった。

渋々といった様子で彼女は出入り口と化している上部の穴からこっちに向かいノイエを押し込んでくれる。

「ポーラも良い?」

「はい」

スルッとその身を翻しポーラの中に入って来た。

手早くノイエの状態を確認し、ウチの優秀なメイド様が一息つく。

ちなみにオーガさんはシッシッとポーラに追いやられ……金棒を振り回し残っている人形たちを潰しに行った。出来たらあっちの巨人の方をどうにかして欲しいが、あれは知能が足らないのか、オーガさんが近づくと彼女を追って僕らから遠ざかっていく。

手近な者を攻撃するように作られているのかもしれない。

「それでノイエの様子は?」

「疲労困憊です」

「えっ?」

ノイエの辞書にそんな言葉は存在していないと思っていました。

「肉体では無くて精神的にですかね?」

「つまり今の僕らと一緒なわけだ」

ノイエが咲かせる血肉の花で、僕もシュシュも疲労困憊なのです。精神的にはもう死んでいる。

「ノイエの祝福って精神には効かないんだね」

「そうみたいです」

エプロンの裏から長いフランスパンのような物を取りだし、ポーラはそれを仰向けで寝ているノイエの口に押し込んだ。

「私は外で警戒します」

「宜しくね~」

「はい」

クスッと笑いポーラが上部の穴から出てまた上に立った。

ただ若干横着を覚えたのか、その場で待機しつつ銀色の棒を伸ばして近づいて来る敵を攻撃している。

それで倒される敵の方にも問題ありかな?

「もごご」

「な~に? ノイエ」

パンを震わせるノイエに対し、シュシュが傍に座って様子を伺う。

「もごっご。もごも」

「うん」

「ももご」

「うんうん」

何故に会話が成立しているの?

「もうノイエは甘えん坊なんだから~」

『ぞ』を忘れてシュシュがノイエの上半身を起こすとギュッと抱きしめる。

嬉しそうにパンが上下しているから……正解らしい。本当か?

「それでシュシュ、ノイエは何だって?」

「食べたから寝るって」

何処の大怪盗だよ! 実際にはまだ半分ほどしか食べてないしね!

ただ本当に眠いのか、パンを咥えたままでノイエは目を閉じてしまった。

「旦那さん」

「ん?」

「これでノイエも使ってしまったけど……どうするの?」

どうしようかね。

「こっちに残っている戦力はポーラとオーガさんのみか」

それとポーラより上の所でパタパタと浮かんでいるロボとリスが居るが……使えるのはリスが持っている宝玉だけだ。

「ノイエの中で使えそうな人って?」

「ん~」

寝ているノイエに頬擦りしながらシュシュが……ちゃんと僕の言葉を聞いてますか?

「お~い」

「はっ! つい」

完全に僕の存在を忘れてノイエに頬擦りしていたな?

ノイエ中毒は不治の病だから、仕方がないと言えば仕方がない。

「逃走用に準備して貰っていたローロムの出番が無いなら……誰も居ないね」

「そっか~」

今回ばかりはタイミングが悪かったとも言える。

「で、シュシュさんや」

「なに?」

「ぞ~を言わないシュシュも嫌いじゃないけど違和感が凄いな」

「……旦那ちゃんは意地悪なんだぞ~」

ギュッとノイエを抱きしめてシュシュが顔を真っ赤にして拗ねた。

「色々なシュシュが楽しめて僕としては満足だけどね」

「……ばぁ~か」

小さく舌を出して彼女は安定を図るようにノイエを抱きしめる。

と、急にその顔を険しくさせた。

「間に合えっ!」

ノイエを抱いていた腕を解いてある一方向に掌を向ける。

先生が居なければ『天才』の名を欲しいがままにしたであろうシュシュの口から、いつも以上に高速な魔法語が綴られる。余りにも早くて聞き取れなかった。

ゴパンッ!

それは人生史上初めて聞いた音だった。

シュシュが作り出したのであろう追加の光の壁に何かが当たる。

大きくしなったその壁が、同時に変化しぶつかったモノを包み込む。

『どうして?』と疑問に思う僕の視界にそれが入った。

追撃のように人形を全身に纏った巨人も飛んで来たのだ。

その巨人から守るように変化した壁が巨人の攻撃と言うか特攻を防いだ。

「だ~。しんどい!」

声を上げて脱力したシュシュが大きく息を吐く。

ドームの上に居たポーラが舞い降りシュシュが作った壁に向かった。

「お姉様」

「ほいさ」

ポーラの声にシュシュが適当に手を振る。

追加で作られ変化した光の繭がほどけて……中からオーガさんが出て来た。

「なに?」

「攻撃されて飛んで来たんだぞ~」

「納得」

シュシュの解説だとそう言うことらしい。

ポーラがオーガさんの具合を確認し……何故か思いっきり頬を叩いているのは見なかったことにしよう。そんな日もあるさ。人間だもの。

「何がどうしたの?」

「たぶんあれだぞ~」

「あれ?」

状況に付いて行けない僕にシュシュが指をさす。

その誘導に従い視線を巡らせると……何か居た。絶対にアウトの奴が居た。

「版権!」

思わず本音が口から出ていた。

あの魔女は著作権って言葉を知らんのか?

前回のキング様にも度肝を抜かれたが、今度はハリウッドを敵に回す気か!

「いい加減にしろ~! 本気で説明を求むぞ! マジで!」

僕の視線は真っすぐポーラを見つめた。

だって間違いなくあんなふざけたモノを作るのは刻印の魔女に決まっている。

そうだろう?

『師匠?』

《私じゃ無いから。今回は冤罪よ!》

『……』

《信じてよ~!》

全力で叫び魔女は弟子の目を通してそれを確認する。

やはりあった。あれがここにあると言うことは……あのフグラルブ王国と呼ばれていた場所から運ばれてきたのだろう。だが仕方ない。

《あれは始祖の魔女が作り出したモノよ》

『本当ですか?』

《……ちょっとは手伝ったけど外見はあの馬鹿の仕事よ》

『やっぱり』

弟子の呆れ果てたため息が聞こえて来る。

《ホムンクルスの体で大きくなったからって調子に乗ってるでしょう? 魔力が切れればすぐにでも元の体なんだからね! 分かっているの?》

『分かってます。それで師匠……あれは?』

《あ~うん》

弟子の目を通し刻印の魔女はそれを見上げた。

《マシュマ〇マンね。良く出来ているわ》

それはマシュマロが大好きだった始祖の魔女が作り出した……せっかく異世界に来たんだからって張り切って作ったはっちゃけた作品の1つだった。

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