軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ゆとり世代

ユニバンス王国・北部ドラグナイト家別荘

「そんな訳で……悪魔よ、出て来いやっ!」

「……何よ」

椅子にちょこんと座っていたポーラがやさぐれた。

右目に模様が浮かんだだけでこの有り様だ。お兄ちゃん泣きそうだよ。

「質問なんだけど良い?」

「内容による」

「どんな内容だと却下?」

顎に指をあてて愛らしい姿で悪魔が宙を見る。

「冗談で作った合体ロボ的なヤツが何処にあるかとか?」

「ロボ~! あるの? 本当にあるの?」

床を転がっていた緑色の球体を掴んでシェイクする。今のコイツは『なんでやねん』としか言わない。本当に使えないヤツだ。

白状しろよ。気合いだよ。だって合体ロボだぞ? 憧れるだろう!

「あるの?」

仕方なく本人に確認する。

「途中で頓挫したのよね~」

「何故?」

「自重に耐えられなくて膝から崩れたのよ。あれって絶対に足の強度を度外視してるわ。本当に作るなら2本足は無理よ。4本かキャタピラよね」

「お前は男のロマンを理解していないのかっ!」

「ありがとうございます!」

ハリセンにて悪魔にロマンを叩きこんでおいた。

「他には?」

「大型宇宙戦艦を……強度不足で頓挫したけど」

「どうして!」

何故諦める!

「大気圏内で作って打ち上げるって……全体の強度が足らなくて半ばから折れるのよね。あれは絶対に大気圏内での運用は無理。大気圏外で作って動かすなら」

「だからロマンに現実を持ち込むな!」

「ありがとうございます!」

どうやら1回では教育が足らなかったようだ。

「他には?」

「……世に発表できないモノなら複数かな」

「代表的な物を具体的に」

「異世界と言えば『女騎士が触手で』と思ったので触手を」

「R18の重要性を思い出せや!」

「ありがとうございます!」

別の意味で再教育が必要でした。よってこれらの行為は全て教育の範囲内です。

ハリセンで人を叩く場合は同意を得て愛情をこめて叩きましょう。

「で、その触手は?」

「……」

「何処を見ている。遠くを見るな。目を瞑るな。口笛を吹いて誤魔化そうとするな!」

「いやん。お兄様怖い」

「お前……さては作って放置したろ!」

僕の指摘に悪魔は椅子に座り直すと、スッと背筋を伸ばした。

「後悔はしてないわ」

「懺悔しろ!」

「ありがとうございます!」

特大ハリセンにスイッチして悪魔に道徳の何かを叩きこんだ。

「……アルグ様」

「はい?」

悪魔祓いを完了し、汗を拭っていた僕はその声で振り返る。

温泉からの夕飯を堪能していたノイエがようやく来た。来たのだが……どうも様子がおかしい。

こっちを見てアホ毛がへんにゃりしている。気配的には絶望か?

「……仲間外れ」

「お~い。ノイエさん?」

「小さい子ばかりズルい」

「落ち着けノイエ」

スッと目の前に移動して来たノイエが僕の顔をジッと見る。

「叩いて」

「ですから」

「叩いて」

「……」

「叩いて」

「はい」

物凄い圧によって押し切られました。

「で、何の話だっけ? そうだ。質問だったな」

「何よ?」

椅子に座り直した悪魔が膝を台にして頬杖をつく。

だから止めなさい。その恰好はスカートが捲れて中身が見えるから。

「あの宝玉って5日で回復するんだよね」

「厳密に言うと120時間よ」

「で、その時間のカウントって出た時からスタート? それとも戻ってからスタート?」

「出た時からよ」

おおう。それってば結構重要な情報なんですけど?

「何故教えなかった?」

「聞かれてなかったし~」

「ゆとり世代か!」

「ゆとり世代よ!」

「ならば仕方ない」

そう言う僕もゆとり世代だしな。相手のことを悪く言えない。

出て来た時からカウントスタートしていたと言うなら消えてから4日で出れたということか?

「最初に聞いた説明と違くない? あの時は時間のことは言ってなかったっけ?」

「はいはい。面倒ね」

悪魔の指が動いて宙に文字を書く。それをポンと押したら僕に直撃した。

頭の中が真っ白になって……

「……そうだね。最初からその説明だったね」

「そうよ。忘れないでくれる?」

「情報量が多すぎるのが悪いんだと思います」

本当に色々と聞かされすぎてて頭の中がごちゃごちゃなのです。

「ときに賢者さんや」

「何よ?」

「……出来たらポーラは危険な場所に連れて行きたくないんだけど?」

椅子を引っ張って来て賢者の前に置き、向かい合うように座る。

「ぶっちゃけ帝都は戦場になる。ノイエが1人で奮戦するのは確実だし、僕が足手まといにしかならないのも確定だ」

「だったらこの子を連れて行きなさい。少なくとも貴方よりかは遥かに強い訳だしね」

自分の胸に手を置いて賢者がそう言って来た。

分かってはいる。ポーラの方が僕より確実に強いことは分かっている。

「でも危ない場所にポーラは連れて行きたくない」

だってポーラは可愛い妹なのだから。何より武器にするために引き取ったわけではない。

「……心配無用よ。この子は私が守るから。少なくとも最後まで生き抜くことは確定している」

「本当に?」

「ええ。だってこの子に何かあったら私が死んじゃうもん」

ヘラヘラと笑う相手の言葉を信じるしかない。

この愉快犯が帝都での一戦を見ないと言う選択肢があるわけない。

「なら絶対にポーラだけは守ってね」

ポーラの無事が確定しているなら、後はどうするか問題だ。

「そんな訳でホリーお姉ちゃ~ん」

「……」

ミニハリセンをアホ毛で掴んで自分の頭を叩いているノイエは無反応だ。

と言うかそのアホ毛は絶対におかしいだろう? 触手か? 実はアホ毛という名の触手なのか?

「お姉ちゃ~ん?」

「……」

おかしい。返事が無い。

「ノイエ」

「はい」

「ホリーを呼んでみて」

「?」

「青い人」

「はい。青いお姉ちゃん」

だが無反応だ。

「何をした賢者!」

「まだしてないわよ」

「する気だったのか?」

「ど~かな~」

ケラケラと笑いながらタコ踊りする存在が憎い。

「お姉ちゃん出て来てよ。ほら……出てきたらキスしてあげるから」

「んっ」

アホ毛を止めたノイエが目を閉じて両手を広げた。

まあ良いんですけど……何故か罠っぽく見えるから怖い。このままキスしに行ったら青くなったりしないよね?

恐る恐る近づいてキスしたらノイエのままでした。

「何があった! どうしてお姉ちゃんが出て来ない! セシリーン!」

「……」

無反応だ。何があった?

「賢者!」

「あの歌姫なら中であたふたしてるわよ」

そのピンチフラグはなにっ!

「分かった分かりました。こうなれば最終手段だ」

たっぷり休んで回復しているから大丈夫だ。今の僕ならホリーが相手でも一晩は戦えるはずだ。

「ホリー」

そっとノイエを抱きしめて彼女の耳元に唇を寄せる。

「孕ませてやるから出て来い。今すぐにだ!」

ああ見えてお姉ちゃんはMっ気が強い。

暴走して襲い掛かって来るけど、でも基本Mだ。たぶん『ド』が付くほどの。

抱きしめたままで待つこと暫し……ノイエの色が青くなった。

「ごめんなさいアルグちゃん。お姉ちゃんずっと考えごとをしていて気づかなかったの!」

「ダメ。呼んだのにすぐに来てくれなかった。ノイエも呼んだのに」

「ああ。ごめんなさい。代わりにお姉ちゃんなんでもするから! どんなことでも……アルグちゃんが望むことならどんなことでもするし、させてあげるから!」

出来たら無茶をする場合はホリーの体の時にお願いします。

色々なことを考えるとノイエの体でした方が安全なのは分かっているんだけど、それでも僕の中の何かが許しません。

腕の中に居るホリーは……臨界点突破寸前だ。そろそろ暴走する。

「ならご褒美はこれから行く帝都をどう攻略するか……その作戦を聞かせてくれて、僕が満足したらで良い?」

「満足したら?」

キラッではなくギラっとホリーの目が光った。

「満足したら満足させてくれるの? 孕ませてくれるの? ねぇ?」

「満足したらね」

「……ふふふ……あはは……お姉ちゃんがアルグちゃんを満足させてあげるんだから!」

大絶叫でホリーが歓喜した。

たぶん僕は選択肢を間違えた気がします。

今夜が命日になるかもしれない。本気で。

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