軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

拒絶反応って知ってる?

「頑張れシュシュ~!」

「む~り~だぞ~」

全身から冷や汗を垂らし、シュシュは必死に色々な“あれ”に抗う。

胃の辺りがムカムカして何かが込み上がって来る。戻しそうだ。

「アイルローゼの声が……声が……」

「エウリンカ! 確りしろ~」

「声が頭の中に響くんだ」

ノロノロと腰かけているホリーに向かい突き進むエウリンカが止まらない。

シュシュの封印魔法を受けているが、当の術者が今にも戻しそうな蒼い顔をして震えているせいか、拘束の力が普段よりもかなり弱い。

全力でギュッとしてしまえばたぶん一発で解決できる。だが復活中の魔女にそんなことをしてしまえば、今回の遠征でアイルローゼの助力は絶望的だ。

腕や足の動きを阻害するように全体的に緩い魔法でエウリンカを拘束する。その度にプリンッと生々しい臓器が動き回りもうシュシュには耐えられない。

彼女の頭の中で何かがプチっと切れた。

「あは~! もう無理だ~! こんな気持ち悪い生物はまるごと封印してやる~!」

「シュシュ落ち着いて! なんか人格変わってるから!」

「駆逐するの~! 駆逐してやるの~!」

「ダメー!」

シュシュの腰に抱き着いてレニーラは相手を押し倒す。

完全に目が逝っている。普段フワフワとしているあのシュシュの目がだ。

「落ち着いてシュシュ!」

「もう嫌だ。もう嫌だよ……」

緊張の糸が切れてシュシュが泣き出す。これはもうダメだ。

立ち上がりシュシュを引きずり歌姫の足に預ける。抱き着いて泣きじゃくるシュシュをセシリーンは優しく抱きしめた。

「仕方ない。エウリンカ~!」

「声が止まらないんだ」

何かに操られるように動くエウリンカは、真っすぐホリーの元へ向かっている。

間違いなく術式の魔女があの奇人を動かしているのだろう。

魔道具が、隠されている魔道具と言う単語にだけ反応したのだろう。それがアイルローゼだ。

「エウリンカ~? ダメか」

暴走する彼女は止まらない。諦めレニーラはズカズカと歩いて近づき、無造作にエウリンカの髪に手を入れてみる。普段この変人は長い髪の中から魔剣を取り出していた。

ゴソゴソと手を動かしてみると、指に硬い物が触れる。小さいが硬い物だ。

指で挟んで引きずり出すと……1本の剣が姿を現した。こうして魔剣を隠していたらしい。

「ちょうど良い大きさだね。うん」

軽く振るってレニーラはその場で舞う。

剣舞の要領で振るった剣は、アイルローゼの部品を傷つけることなくエウリンカの手足を刎ねた。

「好きじゃないんだけどね~。武器を使うのって」

トントンと肩を叩いてレニーラは苦笑する。

より一層酷くなった惨状を目にして……レニーラは口元を押さえた。

「……何か混ざっちゃったんだけど?」

「ごめんなさい。私の目には何も映らないから」

胸を押さえて羨ましそうにレニーラは歌姫を見る。

ただし何かしらの存在は、1人我関せずなセシリーンに対しそこまで甘くなかった。

「ごめん……セシリーン」

「はい?」

抱きしめているシュシュから何やら嫌な音がして歌姫は視線を向ける。

蒼を通り越して白くなっているシュシュの表情は、その口元から何かか堰を切って溢れ出た。

「エロエロエロエロエロ~」

「いゃぁ~!」

胸元に生温かな物を受けいつも穏やかな歌姫が珍しく大絶叫した。

ブロイドワン帝国・旧フグラルブ王国領

「大丈夫。全員落ち着いて……うぷっ」

ロボを脅していたホリーが何やら独り言を続けたかと思ったら、口元を押さえて蹲った。

ウチの愛らしいお嫁さんに何て失態をさせる気かと! 今すぐ帰れ! そして戻してから戻って来い!

「お姉ちゃんは我慢できる! 出来るよね!」

行け! 名医!

僕の腕に抱き着いているリグを差し向けようとしたが、彼女は抱き着いたまま寝ていた。

本当にこの姉たちは自分のペースで生きてるな!

「起きてリグ! ノイエが大変だ!」

「……死ななければノイエは大丈夫」

そうだけど時と場合によっては死ぬことよりも大変なことも起こり得る。

何よりノイエの女性としての尊厳が失われてしまう。それは死守せねばならん。

「起きてリグ。ノイエを救って!」

「眠い」

「起きてくれたら何でもするから!」

「……分かった」

ムクッと起きだしリグが蹲るノイエの元へ向かう。

何やら様子を確認し、鎧の留め具を外して……何故かグイっと彼女の腹部を押した。

「エロエロエロエロエロ~」

「辛い時は我慢せずに出せば良い」

たぶん医者としては満点回答なのかもしれない。僕が頼む相手を間違ってしまっただけだ。

とりあえず後始末をしようかな。

「さあ魔道具は何処に隠されているの?」

復活したホリーが再度ロボに詰め寄っている。

君の粗相を片付けてくれた相手に容赦ないヤツだな。

僕はご褒美を求めるリグを背後から抱きしめギュッとしている。

何故か彼女はこの体勢を好んでいる。何より胸の下に腕を回して支えているから楽っぽい。

そんなに重いのか? 確かに僕の腕にはずっしりとした重みを感じていますが。

「姉さん。落ち着いて。体調は大丈夫ですか?」

「心配いらない。諸悪の根源は混ざって背後に転がってるから」

ちょっと待て? ノイエの魔眼内で何が起きている? 説明を求む。

「さあ何処にあるの?」

「分かりました。案内しますからもう少し待ってな」

「どうして?」

詰め寄るホリーにロボは肩を竦めた。

「隠してある場所が特殊ですから……だから帝国軍に気づかれなかったんですわ」

「特殊って?」

「夜にしか入れないんですよ」

「夜にだけ?」

「はいな。ですからお日様が出ていると入れませんし、入り口も分からないんですわ」

「なら仕方ないわね」

納得してホリーが引いた。引いて僕の横に戻って来た。

抱き着いて来て……幸せな状況なのにホリーからリグに対するどす黒いオーラを感じる。

「お姉ちゃん」

「なに? アルグちゃん」

「折角の機会だしロボに質問してみれば?」

気分を変えるためにホリーにその提案をしてみる。

「……あまり知りたいことも無いのよね。今の私に必要なのは火力だから」

言ってることは頼もしいのに、リグを睨みながら言われると怖くなる。

「火力意外に知りたいことは?」

「ん~」

頬に指をあててホリーが悩む。

「ああ。忘れてた」

「何を?」

「アルグちゃんに質問しなさいと言われていたのだけど……今ならロボの意見も聞けそうね」

笑ってホリーが口を開いた。

「ホムンクルスって何?」

ホムンクルス? あれ? 前にもそんな単語を?

「自分の創造主であるイーマ様が確立した魔法技術です」

僕がお姉ちゃんに質問する前にロボが語り出した。

「人の血肉を用いて同等の人を作り出します」

「人を作るの? 作れるの? 本当に?」

「作れます。ですが体だけです。中身……内臓ではなく『精神』や『魂』と呼んでいた物の作成は成功しなかったと言ってました」

「……つまり肉体のみで良いのね?」

「はい」

黙ってホリーお姉ちゃんが考え込む。

するとクイクイとリグが僕の腕を引っ張った。

「体を作れるの?」

「そう言ってるね」

あれだ。とある有名漫画だと魂の創造は出来ないらしい。

だがそれをあの悪魔が知らないわけがない。あれは僕の想像をはるかに超えたオタクだ。

「内臓などもあるの?」

「あるね」

「……」

「どうしたの?」

今度はリグが考え出した。

沈黙する2人から視線を外し、ロボを見つめて互いに首を傾げる。

「それはグローディアとの交渉材料になる」

「はい?」

口を開いたのはリグが先だった。

「前の王妃様の内臓を移植するのはどう?」

「あ~」

言わんとすることは理解できる。

ただ誰の内臓を移植するの?

「拒絶反応って知ってる?」

「知らない。何それ?」

やっぱりか。

「人は他人の内臓を入れると拒絶……受け入れない力が働いて腐ったり悪化したりするんだよ。リグ?」

僕の言葉にリグは目を見開いて驚いた表情を見せる。

「君のおかげで医療の謎が解けた。長年の謎が」

「……それは良かった」

三大魔女はそっちの知識は無かったのかね?

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