軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

焼く気満々でした~!

ブロイドワン帝国・旧フグラルブ王国領

「にゃ~! 兄様! これは余りよろしくない感じです! 知ってますか? 人間は逆さに吊るしておくと死ぬんです! こんな愛くるしい妹が死んじゃいます。って火~! 火はらめ~!」

足首を縛って逆さに吊るした悪魔がとても楽しそうに悲鳴を上げている。

脅しが足らないのかと頭の下で焚火の準備を始めたら流石に重たい口を開いてくれた。

「だからあれは昔私が冗談で作ったの! 作れそうだったから!」

作れそうだからって作るなマジで?

「だって作れたんだもん。それに天空のお城的な物を作ったんなら必要でしょう?」

「作ったんか~い」

「いや~! 火打石は嫌~!」

カチカチと石と鉄とを擦って火花を飛ばす。

焦った悪魔がミノムシのように体を震わせ逃れようとする。

「可愛い妹が火傷したらどうするのよ! 何より足首を縛られてスカートだって捲れて!」

「案ずるな。ポーラの場合、下着の中まで知っている」

「威張るな変態! このロリコン! にゃ~! 火花はダメ! 顔に傷跡が出来たらどうするのよ!」

「この程度の傷ならリグが舐めれば消えると言うお墨付きだ」

「万全な対策でした~!」

捕まっている割には余裕だな? 本当に頭の下で焚火をしてやろうか?

「ってあそこの姉様がお肉の準備しているんだけど!」

「アルグ様。早く」

「「焼く気満々でした~!」」

僕らの冗談が通じないノイエさんは本気で肉を焼く気らしい。困ったもんです。

「傷物になる~! 助けて姉様~!」

「平気」

「はい?」

まさかノイエに見捨てられるとは思っていなかった悪魔が動きを止める。

僕も正直驚いた。ノイエが中身が違くてもポーラを見捨てるとは思わなかったのだ。

「アルグ様が面倒みる」

「「そっちか~!」」

って、誰が誰の面倒を見るのかな?

「アルグ様が小さい子の」

迷うことなくノイエの指先が僕とポーラの間を行き来した。

不意にポーラの顔が真っ赤に染まる。トマトよりも真っ赤だ。

「ねえさま!」

「平気」

「でも!」

「問題ない」

「だからって!」

「……」

クククと首を傾げてノイエが僕を見る。

「家族は一緒」

「まあノイエの理論だとそうだね」

「はい。小さい子はアルグ様が好き。好き?」

言ってから自信が無いのかノイエが質問をする。

真っ赤な状態のポーラが諦めた様子で口を開く。

「……だいすきです」

「なら一緒。お姉ちゃんたちと同じ」

はい解決と言いたげにノイエが僕から火打ち式セットを回収すると……ノイエさんノイエさん。言ってることと行動とが一致していない気がするんですけど?

「お肉食べたい」

「私はお肉じゃない~!」

必死に身を起こして悪魔が足首に巻かれているロープを切断する。

どうにか逃れ……するとノイエがガリガリガリと恐ろしい音をさせて火打石から火の塊を落とした。と言うか摩擦熱で何かが解けて赤くなりましたか?

「お肉を焼く」

「はいはい」

今夜のおかずに肉を食べるのも悪くない。

事情聴取は終わっていないが、調理はポーラに一任だ。

焼かれて行く肉とノイエをポーラに預け、僕は1人しゃがんでこちらに接近して来るロボット兵を眺めているリグの元へと向かった。

「リグ」

「なに?」

「まだしばらくかかると思うけど」

「ご飯が?」

「あれの到着」

整備不良か何なのか、迫り来るロボット兵の動きは鈍い。

正直普通に歩く僕らの方が早すぎるくらいだ。

「ねえ」

「はい?」

「……あれに見覚えがあると言ったら笑う?」

元ネタを知っていたら笑い話じゃ済まないけどね。

「ならリグがこの場所に居た頃に見たんじゃないの?」

「そうかも」

立ち上がりリグか歩き出す。追うように僕も彼女の後に続く。

行先は近づいて来るロボット兵だ。あれって名前あったっけ? 思い出せん。

「ねえ」

ロボット兵の前で立ち止まったリグが話しかける。

と、これまた凄い音を発してロボット兵が止まりゆっくりと片膝を着く。

「話せるの?」

彼女の問いに1つしかないロボットの目らしき部品が緑色で点滅する。

本当無駄に完成度が高いな。

「君はボクのことを知っている?」

問うリグにロボット兵が腕を動かす。

掌らしき部分をリグに向けて動きを止めた。

《確認》

物凄い機械音が辺りに響いた。

《登録者》

だがリグは首を傾げる。

「何を言ってるの?」

「……」

どうやらロボット兵の言葉をリグは理解できないらしい。

で、僕には理解できる。犯人はあっちで肉を焼いている悪魔だろう。

「知ってるって言ってるっぽいよ」

「そうなの?」

振り返ったリグが僕を見る。

軽く頷いて今度は僕が口を開く。

《彼女は登録者か?》

《登録者》

日本語で話しかけたら返事が来た。

おいおいリグよ。そんな目で見るなよ……惚れたか?

ここは出来る僕がスマートに聞き出してやろう。

《どうして分かった?》

《網膜》

無駄にハイテクだな!

《彼女の名は?》

《リグ・イーツン・フーラー》

《彼女の親は?》

《……》

《親は?》

《所長》

《何故答えに困った?》

《複数》

リグの一族が複数所属していたと言うか、登録されていたからか?

そして会話して理解した。コイツ片言でしか話さない。めっちゃ怠い。

「良し。面倒臭い」

「えっ?」

僕の本音にリグが目を剥く。

「馬鹿賢者~」

「呼ばれて飛び出て」

「言わせないって!」

僕のハリセンを素早く回避し、ポーラの姿をした悪魔がロボット兵の背中に登る。

「あ~はは! この私の手にかかればこんなもの……あれ? なにこれ? 改造されている?」

背中のハッチを開いた馬鹿から戸惑いの声が聞こえて来た。

グイグイと心配そうに僕の腕を引くリグの姿がちょっと可愛い。

「あ~うん。これをこうして……何故そっちに繋いでるのよ? 馬鹿なの? アホなの? こんな事したら動きに不具合が出るでしょ? はぁ? なにこれ?」

「楽しんでるとこ悪いけど、今は会話できるようにしてくれれば良いから」

「……それが一番面倒なんだけどね」

ガンガンゴツゴツと鈍い音がし、跪いているロボット兵が揺れた。

直しているんだよね? 解体してないよね?

「あ~これか。これを外してこっちに繋げれば……いけるかな?」

バタンとハッチを閉じて悪魔が背中から降りる。僕らの元に来て胸を張った。

「そもそもちゃんと喋れたのに喋れなくなっているのがおかしいのよ。何であんな魔改造を」

「日本語だったからじゃないの?」

「……」

とんだ盲点だったと言わんばかりにこっちを見るな。驚くな。どうしてスカートを捲ろうとしている?

《再起動……成功》

ガッと俯いていた顔が上がった。

「マスター。お待ちしてましたわ~」

「何処の方言だ!」

「ありがとうございま~す!」

ハリセンを食らった悪魔が嬉しそうに砂の上を転がって行った。

「兄さん。暴力はあきません」

「……」

「にしても」

クルっとロボットの頭が動いてリグを見る。

異音が消えた。動きがとても滑らかだ。

何より言葉がこの世界のものだ。方言と言うかアクセントがかなりおかしいけれど。

「あんな小さかった娘さんがこんな大きうなって……自分嬉しくてオイル出そうですわ」

「出すな。掃除が面倒だ」

「出ませんて。自分ただのロボットですから」

なら出るんじゃないの? と言うかもっと面倒臭くなったんですけど!

呆れ果てるリグは放置するとして、のんきに肉を焼いているノイエは我関せずだな!

なんでこんなボケばかり周りに居るのか……やっぱり犯人はお前か~!

砂の上に転がる馬鹿にハリセンを投げつけておいた。

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