軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

栄枯衰退ね

ガタガタガタと震えながらレニーラとシュシュは中枢の隅で抱き合い座り込む。

はっきり言って怖すぎる。よくエウリンカが正気を保って動き回っているとすら思う。

「アイルが居るの?」

ただ動じない剛の者も居る。セシリーンだ。

彼女の両目は視力を失っているからあのおぞましい姿を見ることが出来ない。

「アイルにしては音が生々しいのだけれど?」

それもそのはず、エウリンカの全身に纏わりついているのはアイルローゼと言う一個人を構成する部品だ。臓器だ。生モノだ。それが張り付いているのだ。

見える人からすれば、それは生理的にも精神的にも耐えることのできない恐怖映像だ。

「セシリーン」

「はい」

「アイルローゼの声は聞こえるか?」

カタカタと震えるエウリンカがどうにか言葉を絞り出す。

『声?』と小さく呟きセシリーンは耳を澄ませる。

「聞こえないわね」

「そんなはずはない。ずっと自分の耳には彼女の声が」

「「ひぃぃ」」

エウリンカの言葉に怯える2人が悲鳴を上げる。

余りの様子にセシリーンは眉間に皺を寄せてより一層耳を澄ませる。

が、やはり何も聞こえない。

「聞こえないわね。どんな風に聞こえるの?」

「どんな風……頭の中にあの魔女の声が響くんだ」

「頭の中?」

声と言われてセシリーンはずっとエウリンカの周りの音に注視していた。けれど頭の中だと言うのなら話が変わる。

意識と耳をエウリンカの頭……特に深い部分に向ける。

「あっ」

思わず声が出た。聞こえた。“音”が。

「これは声じゃないわね。何かを響かせて音を発しているのよ」

「音?」

「ええ。その音を怯えているエウリンカがアイルの声と誤認識しているのよ」

セシリーンの耳にはただの音にしか聞こえない。

どう発しているのか分からないが、魔女が根性で音を出しているのだ。

『さすがうたひめね』

「お褒めに預かり光栄ね」

クスクスと笑いセシリーンは手を伸ばして寝ているリグの頭を撫でる。

「……なに? 眠い」

「起きてリグ。アイルが大変なのよ」

「アイルが?」

重そうに体を起こしてリグが軽く背伸びをする。

プルンと服からこぼれた大きい胸を揺らし、リグは目を擦った。

そして視界にとらえた。珍しい物をだ。

「なに? あれは内臓標本?」

別の方向に興味を持ったらしいリグは立ち上がりエウリンカに駆け寄る。

そっと手を伸ばし、エウリンカの腰に張り付いている左肺らしい物を掴んだ。

「実物だ」

「リグ。喜ぶのはどうかと思うわよ?」

「大丈夫。喜んでない」

ただ興奮はしている。ここまで奇麗な肺は珍しい。

「エウリンカ」

「何だい?」

ガタガタと震えるエウリンカは、必死に医者であるリグを見る。

何故か笑顔のリグにも恐怖した。

「ちょっと横になって。この内臓を全て確認するから」

「「「ひぃぃ~」」」

レニーラ。シュシュ。エウリンカが思わず悲鳴を上げる。

セシリーンの耳には4人目の悲鳴が届いていた。

アイルローゼもまたリグの言葉に恐怖していたのだ。

??・??

パラパラと頭上から土が降り注いで来る。

半円のバリアーがそれを防いでくれているが、このままだと生き埋めになりませんかね?

「そろそろね」

「何が?」

「蓋が外れるのよ」

「はい?」

ドゴン!

地の底に響くような轟音と振動。

パラパラと降って来ていた土が塊となって……生き埋め確定ですかね?

「ほら。太陽よ」

悪魔に乗っ取られたポーラが天を指さす。

ですが土の塊が邪魔で良く見えません。

「邪魔ね」

腰だめに拳を構えて馬鹿が真上に飛び跳ねようとする。

「しょ~りゅう」

「言わせないよ?」

僕の奥義、ハリセンアタックを馬鹿がサッと身を屈め回避する。

「冗談の通じない馬鹿ね」

頭上に右手を掲げて素早く彼女の指が文字のような物を綴る。

それを掌底の要領で押し出し、光の文字が半円のバリアーを突き破って……渦を巻き土の全てを吸い込んで開かれた天井から出て行った。

「完璧」

「本当に無茶苦茶だな」

「魔法なんて基本無茶や無理を具現化する道具よ」

気分良さそうに高笑いする悪魔は放置する。

それよりもここからの脱出だ。天井が開かれたのなら僕らの選択肢は1つしか無い。

「ノイエ」

「……」

「ノイエ?」

ずっと天井部分を見上げ首を傾げているノイエに気づいた。

何か見えますか?

「ノイエさん」

「……はい」

「何か見えるの?」

「見えない」

そうですか。

「でも」

「でも?」

「……お腹空いた」

「はいはい」

いつも通りのノイエでした。

鞄からフランスパンのような硬いパンで作ったサンドイッチを取り出す。これならば流石のノイエも飲むように食べられないはずだ。

手渡すと……モグモグと自動の鉛筆削り器に消える鉛筆のようだ。

「ん」

1本目を消化中なのにもうおかわりの手が!

仕方なく2本目を手渡し、ノイエの回復を待つ。

「それにしても何でこんな場所に転移したのかしらね」

「はい?」

何処からか折り畳み式の椅子を取り出したポーラがそれに座っていた。優雅だね。

「枯れ井戸に魔道具が落ちたとする。それなら可能性はある。けれど蓋までするっておかしいでしょう?」

「言われてみれば」

確かにおかしい。

「つまり魔道具がこの場所に放り込まれて蓋をされたと?」

「そう考えるのが普通でしょうね。さてと……燃料補給も終わったみたいだしまずはここから出ましょう」

気づけばノイエが2本目まで奇麗に平らげていた。

脅威の速度だ。胃袋と言うよりその速さに軽く引く。

「ノイエ」

「はい」

「僕らを抱えてあそこから出れる?」

「平気」

「宜しくね」

まずは片腕一本で僕のことを抱きかかえる。ついでポーラの姿をした悪魔の襟を掴んで猫持ちすると、ぽっかりと口を開いたノイエが天井を見上げた。

「行く」

底の地面を蹴り、途中で円形状の土壁を蹴り、簡単に外へと出た。

「ん」

「大変良く出来ました」

無事に着地し、ノイエが『撫でて』と言いたげに頭を突き出して来るので注意して撫でる。

注意する理由は宝玉を2つ縦に並べてバランスを取っているのだ。もう曲芸と言うより恐怖だな。

「で……ここが?」

ノイエに下ろして貰い僕は辺りの様子を見る。

廃墟だ。間違いなく廃墟だ。

砂に飲み込まれて行く廃墟然とした……何か映画とかで良く見た光景だ。

「栄枯衰退ね」

バサバサと砂を払ってポーラの姿をした悪魔も辺りを見渡す。

「ここまで徹底的に破壊されていると、隠れ財宝の存在は無さそうかしら」

「お~い。ここでアイテムを拾わないと僕らは詰むんですが?」

「頑張りなさ~い」

軽く手を振って来る悪魔が憎い。

「そうだ。ノイエ」

「はい」

「宝玉を貸して」

「……」

君はどうして『それは何?』と言いたげな目を向けて来るのかな? 頭上に存在している君のアホ毛の遊び道具のことだよ?

「頭の上の物を渡しなさい」

「……」

左右ではありません。上です。上を見なさい。

ツンツンと指で宝玉を示すと、ノイエが顔を上に向ける。

器用に2つの宝玉を支えているアホ毛の様子に気づいた様子だ。

「アルグ様」

「はい」

「……これは何?」

それは何を指す言葉でしょうか?

「リグ。ねえリグ」

「もう少し。肝臓ってこんな感じなんだ。奇麗」

「ねえリグ」

「なに?」

『邪魔をしないで』と言いたげに不満げな声がセシリーンの耳に届く。

あとは悲鳴だ。勉強熱心なリグの様子に全員が悲鳴を上げている。

「彼が呼んでいるわよ?」

「……少し待ってもらって」

「良いの?」

「……」

激しい心の葛藤をセシリーンは感じた。

彼に呼ばれていると知り外に出たい。でも目の前には自分の好奇心を満たす材料があるのだ。

「分かった。シュシュ」

「ほっほ~い」

指名され、ガクガク震えるシュシュが手を上げた。

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