軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

男って流されやすい生き物なんだよ

ユニバンス王国・王都北側街道

「お姫様な気分だね~。グローディアはこんな生活を送ってたの?」

「じゃないの? 腐った王女様だったしね」

「……腐ってもじゃないの? 旦那様?」

セシリーンの冷静なツッコミをスルーする。

あの馬鹿は先生の魔法で腐らせてもらえば良い。そうすれば発酵の美姫とでも呼ばれるだろう。美形ミイラとか呼ばれる謎の存在になれば良いと思う。

ちなみに先生の魔法を牛乳に使えばヨーグルトって出来るのかな? 納豆もいけるのか?

復帰したら確認してみよう。

ガタゴトと揺れる馬車に乗り僕らは一路王都へ向かっていた。

王都郊外に存在している我が家から王都へ行くのは普通に街道を使わないといけない。この街道は石畳とか敷かれた立派な物ではなく、土を踏み固めて作られたものだ。

石とか転がっているとそれに乗り上げた車輪で馬車が揺れるのです。

最初の頃は不快な揺れだったけど、ノイエとラブラブな時間を過ごせる馬車が完成してからは不意の密着が嬉しくなった。

本日は僕の隣にセシリーンが居る。

盲目の彼女は不意の揺れに弱く、ちゃんと座っていないとフラフラしてみているこっちが不安になる。対してレニーラは普段からフラフラしているから馬車が揺れても大丈夫。きっとシュシュも揺れは得意だろう。

「お~。あれが王都か」

窓に張り付いているレニーラが素っ頓狂な声を上げた。

「君は王都在住だったでしょうに?」

「期間は短かったんだよね。地方から登り詰めた感じだから。セシリーンもそうだよね?」

「ええ。最初から王都で歌っていたわけじゃありません」

「そうなんだ」

何故かそこから2人の苦労話を延々と聞かされた。

レニーラに多いのはセクハラだ。

お触りは当たり前。時には強引に部屋に誘われることもあったらしい。ただこの悪友はとにかく運動神経が良い。二階の窓から逃げ出すなど朝飯前だったとか。

下手をしたらコイツは舞姫じゃなくて泥棒としても大成できたかもしれない。

セシリーンもやはりセクハラだ。

目が見えないからと言って着替え室に男性が隠れて覗いているとか当たり前だったとか。

ただ彼女の耳は超人なので『着替えたいので退出をお願いできますか?』と伝え、それでも退出しないのなら直接耳の奥に言葉を飛ばしたとか。

どういう原理かと試しにやって貰ったら、四方から頭の奥に声が直接捻じ込まれた感じがした。ぶっちゃけ新種の拷問だ。これを食らうと自然と悲鳴を上げる。

『お~よちよち。痛かったね~』とレニーラが抱きしめてくれたので我慢できた。

胸の谷間に顔を挟まれたら世の男性はどんな痛みも我慢する。それが男の子だもん。

ただセシリーンがこちらを見て『うふふ』と笑い続けていたのが心底怖かったです。

王城内・アルグスタ執務室

「あれ? 鎮魂祭の会場に向かわないのですか?」

上司様が顔を出したら余所行きのドレスを着たクレアが資料整理をしていた。

「何してるの?」

「知らないんですか? 今日は国王陛下の指示で仕事はお昼までに切り上げるようにと」

クレアの説明が続いた。

半休日と指定されている本日は、午後から街に出るようにと言われているとか。お城に残るのは護衛の騎士たちとメイドが少数とか。手渡された資料から最低の配置だと理解した。

鎮魂祭が行われる本日は、出店とか多く出店しているので経済を回す観念から買い食いや買い物などをしろと言うことらしい。

貴族たちに向けたお店も多数出ているので大儲けだろうな。

そう言えばブロストアッシュからも出店の申請が出ていた。

『許可』とだけサインして……僕が何も知らないのはこの右から左の精神が原因か?

昨日の残りらしい仕事を終えたクレアは、城門の所でイネル君と待ち合わせをしてデートへ向かうらしい。と言うか、待ち合わせをしたくて仕事を残していたような気がする。

レニーラもセシリーンもクレアに優しい表情を向けている。2人とも察したらしい。

「何ですか! その生温かな表情は!」

「ん~。最近殺伐とした関係に涼風を得た気がしただけだよ」

「馬鹿にしてるでしょう!」

憤慨するクレアが可愛らしく吠える。

人妻の癖に本当に成長の少ないヤツだな。全く。

「これこれクレア君。今の僕はとても心穏やかなのだよ」

「私の心は波立ってるんだけど!」

「心の狭い奴め」

「なんですと!」

怒りの余りにクレアの口調がおかしくなってきた。

ここ最近こうしてクレア遊びが減少していたな。実に面白い。

「お兄ちゃんに噛みつく悪い妹さんにはお仕置きが必要ですね。レニ~ラ~?」

「ほい来た」

スチャッとクレアの背後に立ったレニーラが、少女の様に小柄な彼女を捕らえる。

懸命に逃げ出そうとするが、レニーラの運動神経は半端ない。ぶっちゃけ化け物だ。

囚われたクレアの前に僕は立ち、指を鳴らす演技をしながらクレアを見下ろす。

豆腐メンタルなクレアは一気に顔色を悪くした。

「旦那様? それ以上イジメるのなら私が止めに入りますが?」

ソファーに座るセシリーンの助け舟にクレアの表情が一瞬明るくなる。

「イジメじゃありません。躾です」

「そうですか」

『躾』と言われたせいでセシリーンがあっさりと引き下がる。

クレアの絶望感が半端ない。上げて落とすとは歌姫さんってば意外と怖い性格なのね。

「さてクレア君」

「なっなによ?」

「最近君はこの僕に噛みついてばかりです。だからこれから躾をします」

「……」

あわあわと唇を震わせ泣き出しそうな彼女の前で屈み、そっと頭を撫でてやる。

「苦労ばかり掛けててごめんな。今日はイネル君と全力で遊んで来い。明日は休みにするからさ」

告げて懐から小銭を詰めた小袋を取り出すとボリュームの無いクレアの胸に押し込む。

ブラと胸の間に押し込むのがコツです。これだとドレスの中を転がり落ちない。

何より用をなさないブラをしているクレアは……まあ良い。小さくてもブラを外すことで喜ぶ男たちは多いと僕は知っている。

「お兄ちゃんからのお小遣いだ。家計を気にせず今日は遊んで来い」

泣かれたり感謝されたりされるのは面倒なので、レニーラに視線でクレアを追い出すようにとお願いしてみる。

察してくれる悪友は、僕の懐からもう1つ小袋を取り出すとクレアの胸に押し込んで……いびつな胸の膨らみが完成した。

そしてそのままクレアを部屋から追い出し扉を閉じた。

「あは~。旦那君って人は」

「何よ?」

「何かズルい!」

軽い足取りで接近して来たレニーラが、僕の首に抱き着いてキスして来る。

熱烈な愛情表現にハリセンを取り出し一発叩いて黙らせた。

「のぉおお~。何か目の前にチカチカしたものが!」

「発情しないの」

頭を抱えて蹲る彼女をそのままに、僕はソファーに移動すると……今度はセシリーンがっ!

首に腕を回されてセシリーンも熱烈なキスを。レニーラとは違いハリセン対応が出来ない。

「もうセシリーン。ズルい」

「あら? 先にキスしたでしょう? だから私もしたのよ」

「もっとしたいから離れて!」

復活したレニーラが僕とセシリーンの間に体を捻じ込み抱きついて来る。また顔にレニーラの豊かな胸が。

ホリーと違ってハリのある胸は嫌いじゃない。ホリーの胸は柔らかくて大きいからあれはあれで悪くない。

「旦那様?」

「……」

何故かレニーラの向こうへと追いやられたセシリーンから恐ろしい声が?

そっと顔を至福な感触を与えてくれる存在から引き剥がし、体を横にスライドして……全身が震えた。

静かに笑うセシリーンが怖い。穏やかな笑みなのに恐怖しか感じない。

「セシリーン。怒ってる?」

「はい。旦那様」

舞姫は表情を微塵も変えない。

「女は胸の大きさでは無いという言葉は何処へ?」

「……」

一度目を閉じて僕は覚悟を決めた。

「セシリーン」

「はい」

ゆっくりと目を開いて彼女を見る。

「男って流されやすい生き物なんだよ」

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