軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

言わないでよ~

「ルッテ。起きなさい」

「……おはよ~」

「はい。おはよう」

重く感じる瞼をどうにか広げ、彼女はベッドの上で身を起こす。

雨期特有の蒸し暑さで肌着が汗で張り付き不快この上ない。

「母さん。着替えは?」

「出してあるわよ」

「は~い」

ベッドから出て軽く背伸び。

くぅ~っと声と一緒に眠気も出して、肌着に手を掛けて一気に脱ぐ。

「ねえルッテ」

「なに?」

「……また大きくなった?」

「言わないでよ~」

身長と胸の成長が止まらない少女だった。

朝からガッツリとした食事を摂ってルッテは自宅を出る。

自宅と言っても兵士向けのアパートメントだ。近衛所属だから程度の良い家族向けの部屋を借りられるが、正直丸太小屋での生活の方がルッテは好きだった。

ふと空に目を向ける。

今日は薄雲が広がっているがどれも雨雲には見えない。雲の間から見える星が綺麗だ。

中休みと言った日なのだろう。たまに晴れてくれないと溜まる洗濯物の存在にも困る。

薄暗い道を進み、兵士たちの集合場所となっている広場へ向かう。

雨期なこともあって集まっている兵士たちの数は普段と比べてグッと少ない。

ルッテは馬車と人込みの間をすり抜け、各班の班長クラスが集まっている所へと向かった。

「おはよ~ございま~す」

「お~。ルッテちゃん」

年長の班長が手招きしてくる。

時間ならまだ大丈夫かと思ったが……人の少ない分、収集が早かったのかもしれない。

「なら始めますね~」

「よっしゃ来いっ!」

異様に元気な声に対してクスッと笑い、ルッテは自分の祝福を使う。

見るのは……王都に四つあるドラゴンの捨て場だ。

「ん~」

周りの人たちが固唾を飲んで少女の動きを待つ。

祝福を切ってルッテは目を開いた。

「東に居ますね。後は居ません」

「だ~マジかよ~」

班長の一人が頭を抱えて悔しがる。

雨期とは言え夜間に動くドラゴンが現れることもある。それは仕方のないことだ。

だが彼らは別の理由で悔しがる。

「本当に東だけ?」

「だけですね」

「俺2ヵ所に賭けてたのにな~」

悔しそうに手にしていた賭け札を丸めてくず入れに投げ込む者多数。

どの場所にドラゴンが居るのか……それを早朝勤務の兵士たちは賭けにして楽しんでいるのだ。

祝福でその賭けの片棒を担いでいるルッテも恩恵がある。賭けの払いを終えた胴元役の年配の班長が、ルッテに硬貨を何枚か手渡してくれた。

「ありがとうございます」

「な~に。俺たちもこうして小銭で遊んでるだけさ」

笑って残った小銭を小袋へと収めて行く。

賭けの儲けは兵士の結婚や不幸などの時に使われる。だから上司たちもこの行いを止めようなどとはしない。

ルッテは班長達に一礼をして自分の小隊の馬車へ向かう。

少数精鋭のノイエ小隊の馬車は、出発の準備を終えて待っていた。

挨拶して、騎士見習いとしての仕事をする。

大飯食らいな隊長は、雨期になるとあまり現場に出て来ないので食料は抑え気味だ。

それでも工事関係者に振る舞う分もあるので確りと数を確認してから馬車に乗る。

ゆっくりと動き出した馬車に揺られ……いつも通りに待機所へ辿り着いた。

馬車から荷物を降ろし、一応祝福で周りの様子を確認する。

野菜などは兵士たちが洗って皮むきまでしてくれるので、ルッテはそれを使ってスープやメインとなるおかずの仕込みを始める。

と、単騎で誰かがやって来る。

「到着~」

「おはようございます。ミシュ先輩」

「うむ。仕込みは終わってる?」

「はい」

「途中で本隊を追い抜いたからボチボチ来るよ」

「はやっ」

急いで味付けをしてスープだけは仕上げておく。

2個目の鍋は一人暮らしの長い先輩にお任せして、ルッテは普段通り小屋に入った。

自分の荷物からお菓子の袋を取り出し机の上に広げる。

隊長が来てなければ簡単な警戒だけで良いのでこんなにお菓子など、

「あれ? 隊長。今日はどうしたんですか?」

「晴れた、から」

「……理由はさておき、そんな小さくて大丈夫ですか?」

「胸は負けてない」

「そっちの意味じゃないんだけどな~っ! サラッと毒吐くようになりましたよねっ!」

「アルグ様言ってた。『薄い人より大きい』って」

「まさかの夫婦でなじられるとは思わなかったよっ!」

騒がしい声が表から響いて来る。

ルッテはクスッと笑って、自分の服装を確認してから外に出た。

「隊長。おはようございます」

「はい」

南部から戻って3日……ノイエはまだ若返ったままだった。

姿形は幼いままだが、その強さは相変わらずの最強だ。

双頭の大型ドラゴンの頭部を殴って粉砕する姿を見たばかりだ。

トコトコと歩いて来たノイエは、普段着るプラチナ製の魔道鎧では無くただの皮鎧姿だ。

『着替える必要は無いよね?』と思っていたルッテは、自分の胸を鷲掴みする小さな手を見た。

「隊長?」

「……大きいと垂れるってアルグ様が言ってた」

「こっちにも毒を吐いて来るとは思いもしませんでしたよっ!」

「ふっふっふっ……ルッテの脂肪は垂れればいい!」

「うっすい人は良いですよね! そんな心配も無くてっ!」

「にゃろ~。先輩様に対してその口は何だ? その胸削って薄くしちゃる~」

涙ながらに突撃してくるミシュに、カウンター気味でルッテは蹴りを放った。

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