軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

この体は偽物なのよ

「にいさま?」

「もう何も言わないで……こんな日もあるのさ」

「はい」

『十分アルグちゃんを味わったから~』と言ってホリーは帰った。

僕の首を静かに拭う。

ずっと吸いつかれた結果……キスマークを通り越した模様を刻まれた。治るのかな? これ?

それと唾液で服がびしょびしょでもある。首を拭ってから着替えを済ませる。

「ノイエ。そっちは?」

「……」

これこれお嫁さん。ペシペシとお姉ちゃんの頬を叩かない。

何故叩く手が胸に移動した? 叩くな。揉むな。何がしたい?

「アルグ様」

「ん?」

「私の勝ち」

「そうだね」

勝利者が勝ち誇ったようにアホ毛を揺らす。

寝ているのか気絶しているのか謎なセシリーンは……妹の言葉に眉を寄せた。実は起きてませんか?

ポーラが持って来た軟膏を首に塗って貰いながら、次なるノイエの行動を待つ。

ベッドで横になっているセシリーンのスカートを手にすると一気に捲った。

「アルグ様」

「はい?」

「下着は白が良い?」

「嫌いではないが何を言いたい?」

今夜のノイエの下着は黄色だけどね。

「……これ嫌い」

迷うことなくノイエがスカートの中に手を入れて一気に引き抜いた。

あ~。何かアニメの類で見たことがあるな。かぼちゃパンツだっけ? 歌姫さんはかぼちゃパンツを履いてました!

暴走する姉に慌てたポーラが床に落ちたかぼちゃを丁寧に畳んで……何故また広げた? こっちに向けているその目は何を語っている?

「ノイエの下着でどうにかなる?」

「したぎだけなら……」

胸は語るな。そっとしてやれ。

再びかぼちゃを畳んでポーラが部屋を出た。衣装室に新品を取りに行ってくれたのかな?

「で、ノイエさん」

「なに?」

「何故にセシリーンの服を剥く?」

ワンピース調の衣服をはぎ取られた歌姫さんは全裸だ。生まれたままの姿だ。

僕の問いかけに脱がせた服を持ったノイエはベッドから降りると、ぽいッと服を投げ捨てる。

部屋の隅に置かれている水差しとタオルを装備して戻って来たノイエは、タオルを濡らすとセシリーンの体を拭きだした。

「何故に?」

「……前に言われた」

「何を?」

ノイエが昔に言われたことを覚えているとは珍しい。興味が湧く。

「病気の人は奇麗にする」

「ふむ」

「褒めてもらえる」

「ふむふむ」

「ご飯にお肉が出る」

「それか」

「お肉は大切」

言い切ってノイエがせっせとセシリーンを拭く。

つまり誰かが餌で釣ってノイエを働かせていたのだろう。

容疑者多数で犯人が特定できんな。この手のことをするノイエの姉は多そうだ。

「アルグ様」

「はい」

「背中を拭く」

「はいはい」

ノイエのお手伝いをする。セシリーンをひっくり返して……あれ?

抱きかかえてひっくり返してベッドに戻すはずが、相手に抱き着かれてそのまま押し倒された。

「ノイエ」

「拭くから」

「……良いけど」

押し倒された結果、セシリーンの背中がノイエに向く。彼女はそれをせっせと拭く。

長い銀色の髪を退けて首から背中へと……今歌姫さんが震えたような?

背中から腰へ……耳元に吐息が?

腰からお尻へ……ギュッと抱き着いて来た。

「起きてるやん!」

引き剥がそうとするが、ガッチリホールドして来る歌姫さんが外れない。

「ダメよノイエ。もう少し優しく」

「はい」

「んんっ……んっ」

艶めかしい声を発して何を企んでいるっ!

「離れろ~。セシリーン」

「お断りします」

開き直ったか!

だが僕は知っているのだよ。この状態から抜け出す魔法の言葉を!

「セシリーン」

「んんっ」

「少し汗臭い。ぐぇっ!」

ギュッとではなくガッと首を絞められた。

「嘘よね? 旦那様?」

「ちょっとだよ?」

「……」

僕から離れた歌姫様が両眼を閉じたままでノイエに顔を向ける。

「ノイエ」

「はい」

「今すぐお風呂に入りたいの」

「分かった」

無表情だがノイエのアホ毛が怯えている。危険を感じたらしい。

戻って来たポーラの横を過ぎてノイエが急いでお風呂に向かった。どうする気だろう?

「にいさま? ひぃっ!」

ポーラもどうやら地雷原に来たことを知ったらしい。

可愛らしい声だが本気の悲鳴が響いた。

「お風呂に入りたいの。ノイエの手伝いをしてもらえるかしら?」

「はっはひっ」

恐怖に震えながらポーラも走って行った。

気づけば2人はこの場から奇麗に脱出したような?

「それで旦那様?」

「はっはい」

ニッコリと笑いながらセシリーンがこっちを見る。

珍しく普段閉じている瞼を開き……白濁とした瞳が僕を射抜く。

「私はどうして外に居るのでしょうか?」

「どうしてセシリーンが外に……って何事よ?」

魔眼の中へと戻ったホリーは中枢に集う者たちを見た。

居るのはグローディアを中心に、ファシーとリグ。シュシュとレニーラだ。入り口にはカミーラが立ち門番のように外を見張っている。

「遅いわよ」

グローディアの視線がホリーを見る。

わざとらしく肩を竦めて、ホリーは話し合いの場から少し離れた所に腰を下ろす。

自称元王女様が非常呼集を掛けた様子だ。

「それで外で見ていた貴女の見解は?」

「魔眼の吸収……そう私たちが呼称している現象の逆が起きたとしか言えないわね」

「可能なの?」

「さあ? ノイエかカミュー。それとも刻印の魔女にでも聞いてくれる?」

「無理を言わないでよ」

どれもこれも難しいことにグローディアは肩を竦めた。

「で、逆に私への説明は?」

「分かっているわよ。ファシーが見ていたのだけど、忽然と消えたそうよ」

「何の前振りも無く?」

「ええ」

猫の姿をしたファシーは人が集まりすぎたのを嫌ってか、シュシュに抱き着いて辺りを警戒している。手を伸ばし背中を撫でようとするレニーラに猫パンチを振るっているが、まだ駆けて逃げ出す様子は見せていない。

もう本当に行動の全てが猫だ。

ああして自分が猫だと思い込むことで心への負担を減らしているのかもしれないが。

「つまり魔法の発動を感じなかったということね?」

「そうなるわね」

中枢には凄腕の魔法使いが居た。ファシーだ。

そのファシーが抱き着いていたセシリーンに施された魔法に気づかないのは考えにくい。

「つまり私たちの知る魔法とは別の力……それとも魔眼の力と考えた方が楽ね」

簡単な結論を口にしホリーは思考する。

視線はノイエの会へと向け、外の様子も確認する。

眠ったように気絶しているセシリーンをノイエが玩具にしていた。

心配しているのだろうが、どこか遊んでいるように……ふと疑問が生じた。

ノイエがセシリーンの下着を剥いだ。

昔に身に着けていた、あの施設に居た頃に身に着けていた物だ。

ハッとしてホリーは自分のスカートを捲る。

次いで一番近くに居たシュシュのスカートを捲った。

「あ~れ~だぞ~」

「ちょっと待って」

慌てて立ち上がりホリーはレニーラを見て諦める。すでに下着のような物だ。リグも同じだ。

「ちょっと!」

元王女様のスカートを捲って中身を確認し、ホリーは一つ頷いた。

顔を真っ赤にして拳を握るグローディアにホリーは顔を向ける。

「大失敗よ」

「……何が?」

殴るのを後回しにするとして、グローディアは質問を優先した。

「どんなに頑張っても私たちは子供が作れないという理由が分かったのよ」

「……どういうことよ?」

訝しむグローディアにホリーはため息交じりで顔を振った。

「この体は偽物なのよ」

たぶんそれが事実だ。

ホリーはそう確信を得た。

「本物の体は別の場所に在るのよ」

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