軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

娘に囲まれて私は幸せよ~

ユニバンス王国・王城内中庭

「やっぱり井戸」

「落ち着いてノイエ~!」

「そうよノイエ!」

ズルズルと荷物を引きずるのは国の英雄たるノイエ。

彼女の左右の手で掴むは元王子と元王女。

誰もがその様子に呆気に取られて……見えなくなるまで視線を向ける。

城を出て井戸を探すノイエは、反射的に右腕を動かした。

「あっ」

「あっ」

夫婦そろって声を上げ、飛んでいく夫にノイエは迷った。

守らなければいけない相手だ。絶対に守らなければ……けれど自身の本能が『逃げろ』と言う。

「アルグさっ!」

本能に逆らい夫を守ろうと動き出したノイエは、握ったままのグローディアと共に姿を消した。

立木にぶつかりそれを見ていたアルグスタは……しばらくして杖を突いて歩いて来た叔母と目を合わせた。

「アルグスタ?」

「……どうも」

「何をしているのか聞いても?」

「見ての通りでございます」

見事にひっくり返っている甥に……叔母であるスィークは額に手を当てた。

「何でもグローディアがやって来たとか?」

「ですね」

「話し合いは?」

「終わりました」

アルグスタとグローディアは喧嘩ばかりしていたが、そこはシュニット王がどうにか宥め必要な話は済ませた。

全てが終われば後は自由だとばかりに話し合いが終わるとシュニットは沈黙した。

従姉弟は迷うことなく掴み合って……やって来たノイエに捕まり、そのまま中庭へと運ばれて来たのだ。

説明を終えアルグスタは叔母を見た。

話を聞きながら辺りを見渡していたスィークは、軽くため息を吐く。

「2人を攫ったのはラインリアです」

「そうですか」

「わたくしも急いで来たのですが」

疲れた様子でスィークはその場で座ろうとする。

スッと何処からともなく椅子が差し出され、スィークが倒れることなど無い。本当に優秀と言うか恐ろしいメイドだ。

「ノイエは明日の朝までに解放して貰えれば……」

「グローディアは?」

「あのまま処刑しておいてください。結構本気で」

「全く……」

疲れた様子でスィークは頭を振った。

「彼女は正式な王位継承権を持つ者です」

確かにそうとも言う。だが僕は知っている。

「先ほど書類にサインをして放棄してましたけど?」

「それでも念の為に後継者名簿に名は残るのですよ」

知らなかった事実が!

と言うか前々から思っていたのですが、前国王様はメイドさんを孕ませては子供をポンポンと作ってましたよね? 実は男の子とか何人か居ますよね? 僕の弟は何人居るのでしょうか?

「全滅はあり得ないでしょう?」

「それでもです」

傍らに姿を現したメイドから紅茶を受け取り優雅に香りを楽しみ、スィーク叔母様が僕に視線を向けて来る。

「残せる血ならば残した方が良いのです」

「……」

残せる血ね。

「それが罪人でも?」

「……難しい所ですね」

苦笑し一口紅茶を味わった叔母様が、ソーサーごとカップをメイドさんに渡す。

あの~。そこの名も知らない優秀そうなメイドさん。ちょっと僕のことを助けてくれないですかね? 服が何かに引っかかっているのか体勢が元に戻らないのです。結構ピンチです。

「わたくしの一族も大概の悪事を働きましたから」

一族と言ってもヒューグラム家ではない。

あのヒューグラム家の有名な話の大本となったメイドさんが嫁いだのがヒルスイット家だ。そして叔母様の出身がそのヒルスイット家だと言う。

「それでも血が残るのは……きっと良いことだと思います」

「家名が消えても?」

「些細なことです」

些細と言い切れる叔母様も凄いと思う。

普通貴族は名こそ残せとばかりに無茶をするのにな。

「で、折角会ったんで叔母様に聞いても?」

「安心しなさい。わたくしがノイエにどうこう指示する気はありません」

撃てば響くとはこのことか?

椅子から立ち上がり叔母様は冷ややかな目を向けて来た。

「あれはわたくしの手に収まる人材ではありません」

「ですか~」

「ただ」

ニヤリと叔母様が笑う。

「貴方たちの子供がもし……わたくしが育てたいと思う逸材が現れれば、引き取りたいと申し出るかもしれませんがね」

恐ろしい言葉を残し、叔母様がメイドを連れて立ち去って行った。それは良い。

あの~? 誰か僕を助けてくれないですかね? 結構本気で? ねえ?

ユニバンス王国・王都貴族区内王弟屋敷

「両手に花よ~」

「リア義母さん。苦しい」

「放して」

「娘に囲まれて私は幸せよ~」

その日王弟屋敷のある部屋で、前王妃が2人の娘を抱きしめて頬擦りをし続けていたという。

ユニバンス王国・王都郊外ドラグナイト邸

「ただいま」

「……」

昨日義母さんに攫われたノイエが戻って来た。

右手には血液らしい物で汚れた馬鹿な従姉。左手には幼子を抱いたフレアさんが……どんなお土産ですか? 片方は粗大ごみとして捨てて来ていいよ。

「どうしてフレアさんが?」

「……私にも分かりません」

疲れた様子で説明してくれるフレアさんが言うには、屋敷から帰ろうとするノイエと馬鹿の見送りに出た彼女は……そのままノイエに捕まって連れて来られたらしい。

ちなみに義母さんは夜明けまで2人の娘を頬擦りし続けて燃え尽きたとか。

最後は吐血して……そこまでして娘を愛する彼女が凄い。

ノイエにお願いして2人を解放して貰い、血まみれなグローディアはミネルバさんがそのままお風呂場へ連れて行った。

残ったフレアさんは心底疲れた様子を見せる。

頑張れ。元部下だからノイエの行動は理解しているでしょう?

「屋敷に戻りたいので馬車の手配をお願いしても?」

「ポーラ」

「かしこまりました」

一礼した妹様が馬車の手配に駆けて行く。

王都郊外に存在するこの屋敷で馬車を手配するのは意外と面倒臭い。ぶっちゃけルッテ頼りだ。

屋敷の屋上に色つきのタイルを並べる。それをルッテが祝福で見て、タイルの配置から王都に連絡係を走らせる。

距離としては実はノイエ小隊の待機所の方が王都に近い。ついでに言うとモミジさんが居るから単独走も可能だ。彼女が来る前はフレアさんとミシュが早馬に跨っていたとか。

だったらフレアさんに馬を貸せば良いのか? エクレアが居る状況だと無理か。

「で、この子は本当に動じないな~」

母親にの愛らしい女の子がクリリとした目を向けて来る。

動じないだけで決して泣かないとかそんなことではないらしい。お腹が空けばちゃんと泣くらしい。

「……ふぇ」

「あっ」

「ふぇ~ん」

ずっと顔を覗いていたらエクレアが泣き出した。困ったどうする?

視線を巡らせたら何故かノイエが逃げ出した。

「あらあら……ごはん?」

よしよしと我が子なのに他人の子となっている娘をあやし、フレアさんが物陰を探す。僕が邪魔だよね?

黙って窓際に移動して外を見つめる。

反射して見えたら意味がないので出来るだけガラスに顔を近づけた。

「申し訳ございません」

「いいよ。そもそもノイエが悪いんだし」

ノイエがフレアさんを拉致して来た理由は謎だけどね。

ゴソゴソとメイド服を脱いでいるのであろう音がエロい。

「ノイエ様? 何を?」

「母乳」

「あの……それは」

「美味しいの?」

「ちょっと……んっ」

艶めかしい声が!

ウチのお嫁さんがまたいい感じに暴走していますか?

音だけというか、音声だけというのが本当にエロいのです。

「甘い?」

「……味見はしたことが無いので」

フレアさんは自分の物を舐めたりしないだろう。ただあの馬鹿兄貴なら絶対に味見しているはずだ。あれはそんなことをする馬鹿だ。なんと羨ましい。

「……分かった」

「ノイエ様?」

パタンと音がしてたぶんノイエが部屋を出て行った。本当に自由人だ。

もしかしてノイエさん……母乳の味を知りたくてフレアさんを拉致して来たの? 何してるの?

呆れつつ待っているとフレアさんから『もう終わりました』という声が。

振り返ると丁度また部屋のドアが開いた。

「にゃん?」

何故か猫耳を覗かせ……立って歩く猫がこちらの様子を伺っていた。

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