軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

フレアさんに適当な浮気話を吹き込んでやる!

ユニバンス王国・王城内国王執務室

「分かっていると思うが、スィーク?」

「はい陛下」

恭しく首を垂れる存在にシュニットは言いようのない不安を感じた。

目の前に存在する叔母は、現王家の者を何とも思っていない節すら感じられる。口煩い貴族や家臣などは、ドラグナイト家と同様に警戒し力を削ぐべきだと言い出す始末だ。

けれどそう言って弟の家を攻撃した貴族たちはどうなった? 自分が主導したことではあるが、ことごとく蹴散らされて消えて行った。

仮にハルムント家を地方の領主にし王都から追い出す方が怖い。弟の言葉では無いが、この叔母ならメイドたちで国を興しかねない。

「重ねて」

「分かっております。陛下」

表情一つ変えずにスィークは頷く。

「ノイエがこの場所に現れ暴れないように十分に配慮します」

「……」

躊躇いシュニットは軽く頭を振る。

「ノイエだけではない」

「と申しますと?」

どれが最悪だと想像し、シュニットは最強同士の戦いを回避することが必至と判断した。

目の前の人物は現王家のことを何とも思ってはいないが、それでも“王家”に対しては忠実な存在である。

少なくともあの魔女との戦いを選ぶことは無いはずだ。

「ノイエは自分の体を使い、複数の者を憑依させることが出来るらしい」

「……それは事実でしょうか?」

スッと目を細めスィークは自身の前に座る国王を見た。

国王が使う椅子に腰かけているのは、ひ弱で勉強ばかりしていた男だ。少しは鍛えるべきだと進言したが、これの下の弟が真逆の成長をしていたことが悪かった。

結果として最低限の体力作りぐらいで、護衛は貴族の中から信用できる者たちを集めることとなった。

それとて上辺だけの忠実な護衛だ。喜んで死んでいける者などほとんど居ない。

死を伴侶にして生きられる者などそうは居ない。だからこそスィークは現王家に対しきつく当たる。

少しでも弱気を見せれば食らいつき食い破る。常に危機感を持っていなければ、この国に巣くう貴族の皮を被った亡者たちは直ぐにでも手のひらを返し自分たちの益だけを求めることだろう。

そんなことは今は良い。今知るべきはノイエの秘密だ。

「事実だ。私たちは彼女に宿る術式の魔女と会話している」

「振りではなくて?」

「魔女の弟子であった者が本人だと認めたよ」

「……」

ならば事実だろう。

次代の繋ぎにとようやく手に入れたあの娘は基本人が良い。故に厳しくも優しくも出来る。

痛みを知っているからこそ、その後のフォローが素晴らしいのだ。現に今も王弟屋敷に詰めているメイドたちはフレアのことを信奉している。

それで良い。

二代目のすべきことは後を継いで維持することだ。現状を保つことに長けた者が良い。

心の中で頭を振り、スィークはため息を吐く。

どうも今日は思考が脱線しがちだ。らしくもなく緊張しているのかもしれない。

「分かりました陛下」

恭しく首を垂れてスィークは伏した顔……その口元を笑みで歪ませた。

「最大限の注意を払い。平和的且つ穏便にアルグスタとの会話を致しますので」

「……そこまで言うのであれば許可しよう」

昨日の王弟を叩きのめした一件を保留して、だ。

ユニバンス王国・王城内控室

叔母様が来ない。

余りにも長い時間放置プレイなので、『お手洗いにでも……』と抜け出そうとしたら見張りが3人も来た。内1人は何故かウチの妹様だったけどね。

個室にまで乗り込んできそうな様子だったので、ササッと小の方を済ませてまた待機だ。

このまま待機しているのなら『僕の執務室に居ても良くない?』と気づき、『仕事がありますので……』と逃げ出そうとしたらクレアごと仕事が運ばれてきた。

『何をしたんですか?』とブチブチと小言を言う存在が煩わしくものんびり仕事をして時間を稼ぐはずが、たくさんメイドさんが居ると流れるようにサインしていくだけで仕事が終わるんだよね。

誤字脱字は即発見されて提出者の所へ送り返される。計算違いも同様にだ。

普段の仕事が馬鹿らしくなるほどあっさり終わり、『今日は午後からケーキを食べてのんびりして良いですか?』などとおチビな部下が、いけしゃあしゃあととんでもないことを言いだしやがった。

イラっとしたからメイド主任さんに、『適当に嫌がらせに思える仕事をあのお馬鹿娘に与えて置いて』とお願いしたら、少し柔らかな表情を見せて応じてくれた。

ラーゼさんもS寄りの女性なのだろうか? イールアムさんにちょっと同情だな。

逃げ出すことが許されず、仕方がないのでぼんやりとポーラ相手に鎮魂祭の舞台演出を話し合うこととした。

妹様は時折考え込む振りをしては、何かしらの電波を受信するのか無茶なことを言いだすのです。

全方位から見れるような舞台とかマジ無理ですから! 気球で吊って空に浮かべます? はぁ? 舞台を動かすな? そろそろお前の性根を叩き直す日が近いらしいな!

白熱した話し合いの結果、僕とポーラの姿をした悪魔とが殴り合いの喧嘩を始めようとした矢先に……遂に悪魔がやって来た。

スィーク・フォン・ハルムント。旧姓はスィーク・フォン・ヒルスイット。

ヒルスイット家の唯一の生き残りであり……ノイエの叔母にあたる人だ。

「失礼。待たせたようね」

「はい。おかげで今日の仕事が全部片付きましたけどね」

「優秀でしょう? ミネルバ以外にも何人か見繕ってあげましょうか?」

「御免こうむります。下手をしたらポーラと引き換えにとか言い出しそうなので」

クスリと笑った叔母様は、その視線を僕の横に居るポーラへと向ける。

魔女が体を動かしていた都合、彼女は逃げそびれた。

「その子が手に入るのであれば我が家のメイド全てと交換しましょう」

「それほどの価値があるなら手放しません」

「おや? わたくしとしたことが」

コロコロと笑う叔母様の機嫌は良さそうだな? 大丈夫か? 騙されてないか?

それとポーラさん。どさくさに紛れて君は何故に抱き着いて来ているのかな? ギュッとされてもリグのあれを味わいつくした後なだけに……残念です!

「で、叔母様。本日のご用件は?」

「ええ」

騙し合いをしても僕は目の前の人には勝てない。だからさっさと切り込むに限る。

最悪の場合はノイエの召喚から逃亡までの時間稼ぎだ。事前にポーラと打ち合わせできなかったのが悔やまれる。

「昨日のことです。わたくしが登城しただけでどこぞの大馬鹿者が挨拶に来ました」

知ってます。どうなったのかは知らないけれど、あとで嫌がらせをすると固く誓っています。

「その馬鹿者は何故かヒルスイット家のことを調べているとか。ついでに締め上げて全てを吐かせようとしましたが、邪魔に遭いましてね」

まさか……裏切っていなかっただと? 知ってたよ。本当だよ? 今度エクレア用に僕の記憶を駆使して玩具を作り出し送ろうじゃないか!

あの家は男の子が出来るまで産み続けなければいけない宿命だしな。フレアさんの実家って女系で有名なクロストパージュ家だったね。頑張れリチーナさん。

「もう少しの所で人生を終わらせてやれたというのに」

そこまでやったんだ。流石叔母様だ。

「その大馬鹿者を生かす代わりに面白い話が聞けました」

やはりアイツが元凶か! 前言撤回! フレアさんに適当な浮気話を吹き込んでやる!

「何でもヒルスイット家の調査を持ちかけたのが……貴方なのでしょう? アルグスタ」

叔母様の背後で待機するメイドさんたちの手にそれぞれ武器が。

脅迫を通り越して自白の強要ですか?

いきなり崖っぷちからのスタートとか、本当に僕って不幸すぎやしませんかね?

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