軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

驚くのがそっちかよ?

「むぅ」

「あはは」

「む、ぅ!」

拗ねたノイエが僕に抱き着いて離れない。

今朝は少し遅く屋敷を出た。リグが消えるのを待ったのだ。

無事に宝玉に戻り、ノイエの頭の上に置かれている。アホ毛がクルっと巻き付いて確保している。ただ現在宝玉は2つある。どちらがどちらかは僕には分からないが、ノイエはいつも自分基準で持ち歩いているのだ。

「む、う!」

「はいはい。拗ねないの?」

「むぅ」

膨れるノイエが本当に可愛らしくて愛らしい。

リグの胸をこれでもかと捏ねてストレスを発散したと思うが、僕に対しての不満が残っているらしい。だから大好きなドラゴン退治を後回しにしてもリグが消えるまで僕から離れなかった。何より今も抱き着いたままだ。

「ノイエが悪いのです」

「……悪くない」

「なら昨日は何処で何をしてたのですか?」

「……知らない」

昨日の失踪をノイエに問えばこの通りだ。でも自分は悪くないと主張を繰り返すので、罰の実行に踏み切った。

リグとのプレイは社会見学です。社会の厳しさを教えたのです。こっちが本番です。

まず可愛いお嫁さんを縛って動けなくさせて、そして何も出来ないことを良いことに色々としました。一晩中頑張っちゃいそうな勢いでした。ただ彼女が燃え尽きてぐったりしたから許してあげました。僕ってとっても優しいと思います。

と文章にしたら色々と問題ありな気がするが、ただノイエを簀巻きにしてベットの隅に放置して……約束通りリグのご褒美をしただけです。まだまだ不慣れなリグだけど、何気に向学心は強めなのか何でも挑戦して終始顔を真っ赤にしていた。

ただそれでも彼女の経験は浅すぎる。結果として深夜過ぎに燃え尽きて寝落ちしてしまった。

満足そうだったし僕も満足したので、リグの胸を枕に眠ろうとしたらノイエがめっちゃ拗ねてた。

ただ拘束を解けば僕の身が危うい。何よりこれはノイエへの罰だ。簀巻きのまま朝まで放置していたら、リグが縄を解くなり襲い掛かった。

その圧倒的な何かを存分に捏ね回して……それが終わってからは僕に抱き着いて膨れている。

本当にノイエは可愛らしい。

「怒ってますか?」

「知らない」

「頬が膨らんでますよ?」

「知らない」

「拗ねてますか?」

「知らない」

「僕が大好きなのはノイエだよ」

「……知らない」

顔を赤くしてノイエがグリグリと額を押し付けて来る。

本当に何て愛らしい生き物なのでしょう? 知ってますか? これが僕のお嫁さんです。

「ねえさま……ずるい」

馬車の隅でチョンと座っているポーラの発言は気にしないでおこう。

妹だと思って可愛がっていた少女に愛されてしまうとか……どんなハーレム野郎の物語かと。

大丈夫。ポーラもこのまま順調に成長すれば、僕のような遊び人ではなく真実の愛を見つけるはずだ。見つける……この可愛らしいポーラを汚すような男など許せんな。あれだ。ポーラはこのまま永久に奇麗なままでいて欲しい。病んでデレるとかあってはならない。

と、ノイエのアホ毛が急に回りだした。

「どうしたの?」

「お城」

抱き着いていた腕を解いてノイエが体を起こす。

まだクルクルとアホ毛が回っていた。

「とても嫌な空気が居る」

「意味が分かりませんな?」

「えっと……」

考え込んでノイエが軽く頷いた。

「アルグ様なら大丈夫」

「説明が面倒になって放り投げただろう?」

「投げてない」

フルフルとノイエは顔を左右に振る。

「面倒なだけ」

「そっちは認めるのね!」

王都の北門を潜る前にノイエと別れた。

僕を抱きしめたまま一緒に行きたい素振りを見せていたが、僕には僕で仕事があります。

何より昨日勝手に半休しているノイエさんの我が儘は許さないのです。

『今日はちゃんと仕事をするのです』『むぅ』『そうしたら今夜は背中からギュッと抱きしめて頭を撫でてあげるから』『……』

昔ならこれで納得してくれたお嫁さんなのに、まだ拗ねている。

『今夜はダメです。僕は休みます』『むぅ』『でもノイエが今日頑張ったら、明日は僕が頑張るかもしれません』『……分かった』

大変高度な交渉の末にノイエは仕事に向かった。

あとは馬車に揺られてお城へと……はて? 何故にポーラがソワソワしだすのか?

理由は簡単でした。

お城に到着するとズラッとメイドさんたちが……ここにもメイドランドの魔の手が?

「にいさま?」

「だからポーラは我が家の一員だからね?」

急いで馬車を降りて合流しようとしている我が家の妹様は、もうメイド病の末期なのかもしれない。つかメイド病って何さ? ユニバンスでは大流行している気がするけどね。

「お待ちしておりました。アルグスタ様」

「これはラーゼ義姉さっ」

「メイド主任でございます!」

これがあの有名な縮地か?

一瞬でラーゼさんが目の前に移動して来て、真顔で僕の目を見ている。

どうやら外でメイド主任以外の呼び方は禁止らしい。出来たら取扱説明書を頂けないでしょうか? 結構本気でお願いします。

「それで何か御用で?」

「はいアルグスタ様」

恭しく一礼したメイド主任が、スッとその顔を上げた。

「スィーク様がお待ちです」

「……」

そう言えば昨日会いに来ていたのに会わなかったな。もしかしてヤバいっすかね?

チラリとポーラに視線を向けるが、この子は人の善悪を理解しているのか怪しい部分がある。あのスィーク叔母様の呼び出しなのに『早く行きましょう』って感じの表情を浮かべている。

「叔母様はどちっ」

「案内いたします」

言葉の途中で遮られた。これが有無を言わさぬってヤツか? 強引だな。

前後左右をメイドさんにガッチリガードされて……僕はメイドランドで指名手配がかかるほど悪いことをしましたか? まさか……あれを知られたのか?

戦慄した。背筋に冷たい物が走った。

拙い。拙過ぎる! 叔母様があれを知られただと? まさかそんな……裏切者は誰だ? 決まっている。馬鹿兄貴のほかに誰が居ようか!

《あの馬鹿兄貴……今度会ったら根も葉もない浮気話をフレアさんに言ってやる~!》

ユニバンス王国・王都貴族区内王弟屋敷

「ハーフレン様? 笑っても宜しいでしょうか?」

「……好きにしろ」

ベッドの上に横になっているハーフレンは、目元に置かれている濡れタオルを置き直し視界を遮った。けれど幼馴染で一児の母たる最愛の……二代目メイド長は、そのタオルを摘まんで持ち上げると、自分の主人である最愛の人物を睨みつけた。

「スィーク様に敵うと?」

「……まさか部下に攻撃させて来るとは思わなかったんだよ」

てっきり正面の化け物が動くとばかり信じ切っていたハーフレンは、控えていた彼女の部下2人の強襲を受けた。おかげで完全に不意を突かれ、あとは防戦一方だ。

いつあの化け物が牙を剥いて来るのかを警戒し、終始防御に徹した。

結果として完全武装でやって来た近衛騎士たちの介入もあり大事には至らなかった。

「本当に……もう」

怒った様子でタオルをベッド横の洗面器に落とし、冷水で冷やす。

手袋などせず素手で冷水に手を入れ、フレアはそれを搾ると相手の顔に乗せた。

「普通額だろう?」

「顔を隠したいのかと」

「お前の怒った顔を見るくらいならな」

「ですか。怒りたくもなります」

左目の周りに大きな痣を作っている彼にフレアは心底呆れる。

「そのようなお顔、リチーナ様もお腹を抱えてお笑いになります」

「他人事だ思って全力で笑ってたよな」

笑い疲れてエクレアを抱えて居間へと移動したリチーナは、今頃ラインリアと壮絶な乳飲み子の奪い合いをしているはずだ。

「それでどうして……ハーフレン様?」

「な~に、少し親父の言葉が分かった気がしただけだ」

尻を撫でる相手に、最大のため息を吐いてフレアは絶対零度に近い視線を相手に向けた。

「で、どうしてあの人とやり合ったのですか?」

「あ~。まあ良いか」

ハーフレンは諦めつつも尻を撫でる手は止めない。

エクレアを産んでフレアの尻が良い感じになった気がするのだ。

と、現実逃避を止めて……苦々しい記憶を引っ張り出す。

まさか仲裁に入った副官が事の顛末を告げてしまうとは思わなかったのだ。

「ノイエは恐ろしいことにスィークの姪にあたる存在なんだとよ」

「……」

尻を触る手をどうしようか悩んでいたフレアですら、流石に思考が停止した。

「……隊長に親が居たのですか?」

「驚くのがそっちかよ?」

衝撃的すぎて思考が狂ったのだと思いたい。

ハーフレンは苦笑しながらため息を吐いた。

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