軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

閑話 13

ユニバンス王国・王城内アルグスタ執務室

「おにーちゃんが居ない隙に完璧な構想を練るのです~」

「「「「……」」」」

上司であるアルグスタ様が先日の化け物騒ぎで負傷し、お屋敷で休んで居る最中……突如王妃様がそんなことを言いだしました。

いつも唐突な人ですが、今日は輪をかけて唐突です。

「今回もどーせおにーちゃんが悪さをしたはずです~。

でも悪者は私の大事なシュニット様です~。シュニット様は朝から晩まであんなに仕事をしているのに酷いです~。許せないです~。だから今回はおにーちゃんに責任を取ってもらうです~。

具体的にはノイエおねーちゃんの膝枕を請求するです~。ついでにおにーちゃんの大嫌いなお仕事を押し付けるです~。その押し付けるお仕事を決めるです~!」

元気に拳を振り上げる王妃様は、アルグスタの机の上に居ます。

余り動かれると積み上げた書類が崩壊しそうで怖いです。

「さて……何が良いです~?」

ぴょんと飛び降りたショックでグラグラと書類の山が揺れますが、長身のメイドさんがスッと現れ山を押さえてくれました。

また積み上げなくて済んで内心でホッとします。

「えっと王妃様?」

「何です~?」

実は王妃様の次に若いのは今発言したパルです。

本名はパルミナーク・フォン・ノンエインと言って、前国王様の血を引く妾腹の子です。

金髪碧眼のユニバンス色と呼ばれている特徴を持つ女の子らしい女の子です。ドレス姿もとても似合っていて……年下なのに色々と羨ましいです。

“妹”のミルことミルミナークは男性の服装をしていますが、これもこれでとても似合っています。

「つまりアルグスタ様をいじめると言うことで宜しいのですか?」

「そうです~」

「ならば頑張りましょう!」

パルさんがまた変な方向に思考を走らせました。

何でも子供の頃にお世話になったハーフレン様が、パルさんたち姉妹に『弟のアルグスタはとんでもなく酷い男で毎日虐められているんだよ』とか手紙でのやり取りでそう信じてしまっているとか。

登城してからはアルグスタ様がハーフレン様をイジメているという言葉が噓だとは知った様子ですが、『近衛に仕事を押し付けて来る嫌な奴』という新しい認識の元……毛嫌いしているみたいです。

その割にはちょいちょいケーキをご馳走になったりしています。

財政面から嫌がらせをしていると本人は胸を張って言ってましたが。

「ではみんなで意見を出し合うです~」

指揮を執る王妃様は……自分から何も発言する気が無いみたいですね。

「王妃様」

「何です~?」

次いで私の大切な人、イネルが小さく手を上げました。

ヒューグラム家の後継ぎで、この私……クレアの夫です。大好きな人です。

「説明が漠然としているのですが?」

「です~?」

頬に指をあてて王妃様が首を傾げます。

「王妃様は何がしたいのですか?」

流石私のイネルです。毎日他部署に出向いては色々と交渉しているだけはあります。王妃様を相手に一歩も引きません。

凛々しいです。格好良いです。惚れているのに惚れ直せます。

「ん~。こうパッとして、ワ~っとして、キャーっとして、最後はシュニット様が国民全員から尊敬されるような感じが良いです~」

「「「「……」」」」

4人で視線を合わせて納得し合います。たぶん王妃様は何も考えていないと。

「さあみんなで考えるです~」

言って王妃様はメイドさんが準備した椅子に腰かけて、果実ジュースを飲みだします。

あれって甘くて美味しいんですよね。ただ甘い果実は高いから……流石王妃様です。羨ましいです。

「シュニット様がどんな風に悪く言われているか、みんな知ってるのです~?」

「オレが聞いたのは、代替わりしてから厄災が続くのはシュニット様が国王の地位に相応しくないからだって……」

近衛の仕事で城を出て、王都中を走り回るミルが口を開きました。

「でも考えて欲しいです~。筋肉おにーちゃんが陛下になったら……楽しそうです~」

私たちはちょっと視線を天井に向けて考えました。

あのハーフレン様が陛下になったら、確実に私たちの仕事が増えます。あの御方は何と言うか考え無しで行動することが多くて、後始末を部下に押し付けるのです。

良く押し付けられているパルとミルが顔色を悪くしていました。

「アルグスタおにーちゃんなら」

「「「「それは絶対に阻止しましょう!」」」」

私たちの心は1つになりました。

あの『動く厄災』と呼ばれているアルグスタ様が国王になろうものなら、この国は内外からの総攻撃でとんでもないことになります。

不思議とそれでもあの人が勝ちそうな気がするので、もっと最悪です。

国の立て直しと言う想像を絶する苦悩が待ち構えるのです。死にます。今以上に死にます。そうでなくても時折胃がチリチリと痛くなるのに……きっと胃に穴が開きます。私が死んじゃいます。

「つまり私たちはシュニット様に国王様を続けて貰わないといけないのです~」

「「「「その通りです!」」」」

私たちの心は決まった。

シュニット様の為に完璧な何を実行するのです。

「悪いことが続くと何かしらの催しを開催します。過去には連戦続きで国民の士気が下がった時には、ウイルモット国王様が大々的な催しを実行しました」

「知ってます~。二大姫の共演です~」

イネルの言葉に王妃様が嬉しそうに手を叩きます。私も知っています。

歌姫の天才的な美声に乗って、舞姫と呼ばれたお方が天才的な舞を披露したとか。

それを見た人たちはそれ以降どんな踊りでも歌でも比べてしまうとか。

ちょっとした弊害になっているとも聞きました。若手が育たないとか。

「でもその二大姫は罪を犯して処刑されたと」

「です~」

とても悲しいことですが、歴史に名を遺す御二人も今はもう居ません。

罪を犯して捕らえられ、国民たちから助命を望む嘆願がありましたが……結局は処刑されたとか。

2人の功績を考えれば多少の罪などと思ってしまうのは私が悪いのでしょうか? 先日のファシーと名乗る殺人鬼であれば処刑されて当然。二大姫なら助命されても良いと思うことは間違いでしょうか?

罪は罪。それまでの行いは関係なし。周りの意見などに左右されず厳罰に処した当時のお歴々は正しかったのかもしれませんね。私には絶対に出来ませんが。

「それだったら王都中の歌い手や踊り手を集めて盛大にやれば良いのでは?」

「そう言われると思って先日打診したです~。でも大半に断られたです~」

「やはり二大姫と比べられるからですか?」

「です~」

私の意見に王妃様がそう教えてくれました。

やはり二大姫は凄いのですね。ところで平民の出の人が“姫”と呼ばれることに問題は無いのでしょうか?

今度姫様を従姉に持つアルグスタ様に聞いてみよう。

「だから私は考えたのです~」

グッと両の拳を握って王妃様が立ち上がりました。

「催しは全てアルグスタおにーちゃんに丸投げです~」

とても楽しそうな笑顔で王妃様がとんでもないことを言ってます。

「丸投げですか?」

「そうです~。私たちはそれ以外のことを考えて、一番厄介なお仕事はアルグスタおにーちゃんに丸投げするのです~!」

「「「「おおおっ」」」」

王妃様の唐突な発言はいつも無茶ばかりですが、これは確かに妙案だと思います。

二大姫が亡き今、2人に変わる催しを考えるなんて……物凄く大変なことだと思います。

パルなんて『絶対に無理』だと言いたげに他所では見せられない笑みを浮かべています。

「これはおにーちゃんに対する罰なのです~。苦しんでもらうのです~」

「「「「賛成っ」」」」

賛成多数で決定です。

本当にあの馬鹿な上司は……いつもいつも無理ばかりして私たちを散々心配させるのだから、これぐらいの罰なんて喜んで受ければ良いんです。手伝ったりなんて絶対にしません。

本当に……いつも心配しているんですから。

後日

「舞姫レニーラならどうにか出来ると思うよ?」

伝説の殺人猫……じゃなくて殺人鬼を連れてやって来た私の上司は、罰を罰だと思わない強運を持っているのだと思います。

気づけば催しの準備を進める私たちの方が大変になってるし~! もう! 本当にあの上司、大っ嫌い!

……でも元気で良かったです。

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