軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

その辺に落ちてる

ユニバンス王国・王都内上空

『ししょう』

「何よ?」

『わたしはもうだめです。にいさまたちのことをおねがいします』

「ちょっと止めてよね! あんな個性の塊のような人間の世話なんて私は嫌よ」

『でももう』

「あ~鬱陶しい! いつも『兄様。兄様。ハァハァ』とか思ってたんだから問題無いでしょ? 相手に恋心が暴露されたぐらい何よ? これからは堂々と愛しの兄様を誘惑していけるのよ! 背筋を伸ばして胸を大きくすることでも考えてなさい」

『にいさまはちいさくてもへいきだって』

「甘いわ! 胸は大きければ色々と便利なのよ! 具体的には……とか……とかして相手を喜ばせることが出来るの! でも小さいとそんなことは不可能! つまり小は決して大に勝てないのよ! 分かる? 分かれ!」

『ししょう?』

「にもかかわらずあの貧乳代表のユーアが私よりもモテたとか意味不明なのよね! 女は顔なの? 顔が良ければ胸なんて関係ないの? 何よクオーターって? 生粋の日本人が勝てるわけないじゃん! と言うかハーフみたいな顔立ちしててクオーターなのが腹立たしい!」

『ししょう、おちついて』

「そもそも私の方がこんなにも話しやすいのに、あんな女王様気質のあれが大人気だなんて……この世の野郎は全員踏まれたい病にでも罹っているの? 馬鹿なのアホなの変態なの?」

『ししょう~』

ユニバンス王国・王都内スラム廃墟

「さてと。義弟君」

「ほい」

「あの老人はどうするの?」

義姉さんが力みまくっている爺に目を向けた。

顔を真っ赤にして何かを絞り出そうとしている感じに見えるが、そこまでしないと扱えない魔法って色々とダメだと思います。それか命を対価にとか?

あの手の爺は他人に死ぬことを命じても自分が死にそうになったらあっさりと命乞いするタイプだ。物語の類だとそうなっている。

「周りの亡者たちと一緒に地の底にでも還してあげるのが一番でしょうね」

「そうじゃなくてどう倒すのかという質問なのだけど?」

「決まってます。ここはユーリカ先生に」

そもそも彼女が借りパクしていった僕の魔剣はどうなった?

辺りを見渡すと地面に突き刺さっていた。あの名剣エクス何たらのように。

「残念だけれどもそれは出来ないわよ」

「何故に?」

「使用者が攻撃されるような魔法を作る馬鹿が何処に居るの?」

「うわっ……だから奥の手か」

自分が攻撃されないからって言う自信から奥の手を使う気になったか?

だが心配するな。フラグの神様は基本的に意地悪だ。絶対裏をかいて嫌がらせをしてくる。

とりあえず地面に突き刺さっている魔剣を回収する。

「それでどう倒すのかな?」

「ん~。見てのお楽しみ?」

「相手が自滅するまで待機すると言うのは感心できないのだけど?」

「心を覗かないでください」

こうもあっさりと……つまりこれを逆手に取れば?

少し妄想してみたら、義姉さんが露骨に狼狽えて後ずさる。

ふむふむ。つまりこうか?

「貴方という男は本当に! ノイエを預けるのが不安になるんだけど!」

うりうり。こうか? こうしてこうすると?

「ふあっ! そんな……そんなことは……妄想で私を弄ぶな!」

意外と初心な義姉さんが地面を蹴って威嚇して来る。

ふむふむ。男女の営みに対しての免疫は少ないらしい。

実は僕らの行為を見ては顔を逸らしていた感じか? だったらこうしたら?

「ふあっ! そんな……無理よ無理。そんな行為はっ!」

「ノイエなら喜んでしますが?」

「……えっ?」

絶望じみた感じで義姉さんが視線を巡らせる。

ユーリカに溺愛されているノイエがその視線に気づくと、上下に頭を動かす。全力の肯定だ。

「ノイエが……そんなことまで……」

「実はここからこんな感じに」

「いやぁっ! そんなあの子は見たくないっ!」

頭を抱えて蹲り震えだした義姉に、ついでとばかりに日々のノイエの様子を見せつける。

貴女の妹はこんなにも元気に立派に成長しましたから。

「嘘よ……ノイエが……」

完全に沈黙したので僕は改めて爺を見る。

ようやく準備を終えたのか、ギンギンに血走った眼で僕の方を睨むかのように見ていた。

「遅いよ爺」

「煩いっ! これで殺してくれようぞっ!」

両腕を掲げ掌を空へ……そして爺は僕には理解できない言葉を叫んだ。

「さあ肉を得て蘇るが良い! この地に存在する数多の獣たっ」

叫んでいた爺が周りに居る亡者たちと一緒に吹き飛んだ。

ほらね? 直接攻撃は出来なくても間接攻撃有効とかそんな仕掛けがあるに決まってるじゃん。案の定だよ全く。

「オッオオッ……」

低い声を発して姿を現したのは……いつか見たな? 誰だっけ?

朽ちた建物を殴り飛ばして道を作ったのであろうその大柄な男。

たぶん男性であろうそれが体に蛇型のドラゴンらしい存在を巻き付けて歩いてくる。

撮影用に大蛇を巻き付けたとかじゃなくて、大蛇が体を食い破って巻きついている感じにしか見えない。

同化と呼ぶには余りにも互いが存在を強調し過ぎている。

「なんだっけ?」

どっかで見たんだよな~。あれが殴り合い……思い出した。

いつだか王都で暴れてオーガさんと殴り合った奴だ。懐かしいわ~。

「全く……また僕に消滅させられたくて出て来たのかね? 仕方ない」

本日出番のない僕としては、ここでカッコイイところを義姉さんにアピールだ。

足元の石を掴んで祝福を使う。

あとは全力で投げれば……現れた化け物にクリーンヒットした。そして地面に落ちた。何がって石が?

「……あれ?」

まさかフラグの神様……貴方の気まぐれは僕にも有効なのですか?

慌てて石を複数拾って祝福を与える。あとは全力で……はいダメでした。

「まさかの展開だよ!」

「お姉ちゃん?」

「ノイエっ!」

しゃがんで頭を抱えている姉の傍に寄って来たノイエは、ガバッと立ち上がった相手に抱きしめられた。

正面からギュッとされて……ノイエは若干嬉しそうに抱きしめ返す。

「貴女があんな風になったのは、やっぱりあれが原因なのね?」

「……違う」

「はい?」

「楽しい。凄く」

「……」

あんな行為を『楽しい』と言う妹に姉は戦慄した。

知らない間に妹が凄い速さで大人になっていたことを知った気がしたのだ。

「お姉ちゃん……もう居なくても平気みたいね」

「ダメ。ずっと居て」

「大丈夫よ。ノイエもう大人だし」

よくよく考えれば妹を育てることばかりで自分の人生を顧みなかった。

結果として自分は未婚のままで……現実を見つめ返し、ノーフェは胸の内で泣いた。

「あの~? あっちでノイエの大切な人が大変なことになってるんですけど~?」

姉妹の心温まる状況の邪魔をしてくるのは、桃色髪の存在だ。

その桃色を血の色に染めてやろうかと思いつつノーフェは相手を睨みつける。

「貴女がどうにかなさい」

「それが~。さっきから力が出なくて」

「首が取れて弱まったのかしら?」

「……」

『その原因は?』と言いたげな相手の視線を睨み返し、ノーフェは深く深く息を吐いた。

自分があれを使うのは正直もう難しい。と言うかこれ以上使うと自分自身が消えてしまう。

「ノイエ」

「はい」

「子供の頃に教えたおまじない……覚えてる?」

覗き込んだ妹の顔は、その目は、サッと横へと流れた。

「ノイエ?」

「大丈夫」

「何が?」

「その辺に落ちてる」

「落ちる訳ないでしょう?」

両手で頭を掴んで軽く振ると……目を回した妹が千鳥足でフラフラとする。

「出来るの? 出来ないの?」

「……出来る」

「覚えてるじゃないの」

腰に手をやり妹を睨むと、ノイエは軽く顔を伏せた。

「疲れるから嫌い」

「この子って子は~」

また両手で頭を掴み姉は激しくそれを振るのだった。

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