軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

どう、して?

「アルグの馬鹿は見つかったか?」

「はい。現在ハルムント家にてスィーク様とお会いなっているご様子です」

「あの婆と?」

命知らずな発言に彼の傍に居たメイドたちが全員一斉に顔を背ける。

見てもいないし聞いてもいないと言いたげだにだ。

ハーフレンはそんなメイドたちの様子など気にせず確認を急ぐ。

「何か伝わっているか?」

「それがあのお屋敷は……」

難攻不落の屋敷であることは密偵の長であるハーフレンが一番理解している。

けれど漠然とした情報だけで動かされている彼からすれば、なんでも良いから手掛かりとなる物が欲しかった。

城内の通路を歩き……ハーフレンは迷うことなく扉の前に立った。

「陛下。近衛団長ハーフレンです」

「構わん。入れ」

「はっ」

許可を得て室内へと進めば、いつもと変わらない兄が座していた。

もう風景の一部と化しそうなほどに国王たるシュニットはその場所から余り動かない。動けない。仕事が山のようにありすぎるが故にだ。

「城内が慌ただしい様子だが何があった?」

「はい。ある場所からの密告により、現在王城内の警護を厳にしています」

「ふむ。その密告とは?」

「はい。何でも『他国からの工作が始まる』と」

「なるほど」

現状他国からの工作を受けているのは1人ぐらいだ

それを良く知るシュニットは誰が騒ぎ出したのかを理解した。

「それで近衛団長はどう判断する?」

「はい。現状集められるだけ近衛所属の騎士を集めています。集まり次第随時防御を固め、」

ハーフレンは言葉の途中で口を閉じた。

バタバタと走って来る足音を耳にし、何か起きたと理解したからだ。

「失礼しますっ!」

「何事だ」

「はっ」

騎士らしい若者が礼儀作法を忘れ、扉の枠に手をかけ空気を貪りすいながらどうにか口を動かす。

「王都の北より大群が接近中とのこと。その数千!」

「……誠か?」

「はいっ」

報告を終えた騎士を下がらせ……ハーフレンは改めて頭を掻いた。

「陛下?」

「分かっている。シュゼーレを呼べ」

「はっ」

国王の指示に部下が走る。

国軍の動員は視野に入れていなかったシュニットとハーフレンはほぼ同時に顔を顰めた。

「数はどれほどだ?」

「よくて1千も集まれば良い方かと」

「で、あるか……」

顎に手を寄せシュニットは弟の言葉を頭の中で吟味する。

少ない兵を遠方の新自治領に送り出している今、王都ユニバンスは完全に兵力が足らない。

この状況で数千もの敵が寄れば……耐えられず、この国の中枢は陥落するかもしれない。

「アルグスタは?」

「現在スィークの元で交渉でもしているんだろうな」

「兵力の不足をあそこのメイドで?」

「ああ。少数だが精鋭ぞろいだ」

初代メイド長が育てているメイドたちは恐ろしく強くなる。

手駒として使えれば確かに役立つが……考えを纏めシュニットは口を開いた。

「国軍には北門に入ってもらい死守するしかないだろう」

「そうだな」

「近衛は王都の守りを固めて欲しい」

「畏まりました」

恭しく一礼をし退出しようとしたハーフレンは足を止めた。

また伝令代わりの騎士が駆けて来たのだ。

「失礼します」

「何だ?」

「はっ」

足を引いて横に避けた王弟の存在に驚きながらも伝令である若い騎士は口を開く。

「上級貴族ネーグランズ家において多くの貴族たちが殺害されているとのご報告がっ」

「ネーグランズ?」

その名にシュニットは渋い表情を浮かべた。

貴族たちの会合場所として知られる屋敷だ。そして今回バローズを派遣し調べていた者たちにも場所を提供している。

「先手を打たれたか?」

シュニットは弟に目を向ける。

確かにそう考えるのが正しいのだろう。ハーフレンも同意見だった。

「分かりませんが調べる必要はあります」

「出来るか?」

「やります」

「任せた」

「はっ」

退出する弟の背に……シュニットは深く息を吐いた。

どうしてもこの手の搦め手は好きになれない。けれど今後国を良くしていく上では必要となる方法でもある。

《覚悟が足らないということか》

自分の甘さを認め、シュニットは一度自分の顔をパンッと叩いた。

僕らは現在廃墟と化している王都の北に存在するスラムに向かい移動していた。

ぶっちゃけもう僕らの仕事は無い。叔母様には各所への伝達もお願いした。

初代メイド長が動けば……彼女を知る人は決して逆らわない。恐ろしくて逆らえない。

だから各所の報告を後回しにした。どうせ嫌われ者の僕の言葉じゃ動く人は少ない。

ハルムント家を出る時にミネルバさんがらしくないほど抵抗したが、結局ポーラの言葉を受けて彼女は残った。

何を言っていたのかは聞こえなかったが。

そんなポーラは御者席に座って馬車を動かしている。

ナガトは命じれば勝手に歩いていく馬なので本来は御者など要らないんだけどね。

「つきました」

馬車が停車し扉が開かれる。

ポーラの出迎えを受けながら馬車を降りれば……確かに廃墟だった。

壊れた家屋もそのまま、むしろ時間の経過からか酷く傾き崩壊寸前の物もある。遠くには崩壊している家屋もあった。

あの日ファシーが暴れ人を殺し回った場所だ。

「ではにいさま」

「ああ。ちゃんと真っすぐお城に向かうんだぞ」

「はい。にいさまもねえさまもどうかごぶじで」

寄り道癖のある妹と馬車を見送る。

ポーラには僕らを目的の場所で降ろしたらお城に向かうよう命じておいた。守れないならそのままハルムント家に置いていくと告げたら従ってくれた。

流石のノイエも僕ら2人のハンデを背負って活動するのは辛すぎるだろうから仕方ない。

「さてと。ノイエ」

「はい」

モグモグと表情を変えずにパンを食べているお嫁さんと向き合う。

彼女の頭上には宝玉がユラユラと揺れている。本当に器用にアホ毛の上に乗せている。

それとは別にノイエの足元でリスが宝玉に乗り……玉乗りをしていた。こっちもこっちで器用だ。

「中はどんな感じ?」

「?」

首を傾げるノイエをそのままに少し待つと、彼女が黄色くなった。

「のわ~」

で、珍しい声を上げて頭上から転がり落ちた宝玉をキャッチする。

あれってノイエにしかできないんだな。

「危ないぞ~」

「落としていなければ問題ない」

「ん~。だぞ~」

納得いかない様子で彼女が首を傾げた。

「で、シュシュ」

「ほ~い」

「中はどんな感じ?」

「ん~」

フワフワと揺れながらシュシュが宝玉を抱きかかえた。

「今回は~命令~する~人が~居ないん~だぞ~」

「ホリーお姉ちゃんは?」

最高の知恵者が居るでしょう? 僕は彼女を味方にするために最終手段である手札を切ったのだから。決して身の安全のためにではない。断じて違う。

「魔力~切れで~寝て~るぞ~」

「……」

どういうことだ? 何故ホリーまで?

理由を聞けば納得だ。ってどこまで僕の足を引っ張るぅ~! あの魔女は~!

「腹立たしさが止まらないっ!」

「落ち着け~旦那~ちゃ~ん」

落ち着けるか!

僕に抱き着いて制しようとする彼女を全力で抱きしめ返して癒しとする。

今はシュシュだが関係ない。ギュッと抱きしめたついでにキスもする。

強引に大人のキスを味わう。ノイエの温もりは僕にとっての精神安定剤なのだ。

しばらく味わったら落ち着いたから彼女を開放した。

「……強引なのも悪くないんだぞ」

頬を真っ赤にしてフワフワ揺れながら、シュシュが宝玉を抱いて踊り出した。

「こうなれば居る人だけで頑張ろう」

「たぞ~」

シュシュも応援してくれるから問題ない。

「で、誰が出れるの?」

「ん~?」

クルクルと回りながらシュシュが答えてくれる。

セシリーンはダメだろう。戦いには向かない。

レニーラは……最悪有りとも言える。

シュシュは魔法を使う都合ノイエの体を使った方が良い。

エウリンカは……溶けて水になったとか聞いたけど居るんだ。ただあの魔剣使いは使えるのか? 今後の課題として今回は見送りだな。

残るはリグとファシーか。

「リグは良いかもだけどファシーは出したくないな。そうそう。ファシーに今回は外に出ちゃダメって伝えておかないと」

「……どう、して?」

そんなの決まっているでしょう?

「ファシーは優しすぎる子だから人の形をしたモノを攻撃するなんて……ん?」

何か違和感が?

振り返るとリスを抱いた猫耳パーカー姿の小さな子が居た。

ミニスカートから覗く足も白い。意外と肌白なんだよね。ファシーって。

「ファシー?」

「は、い」

今回僕が最も適していないと思った人物が勝手に外に出ていた。

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