軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ファシーのことを悪く言うなよ?

先生が去ったのちに僕に訪れたのは……追及だった。

登城するなり近衛の屈強ゴリラたちに前後左右を固められ連行された。

案内されたのは会議室と言う名の取調室だった。かつ丼など出ない。出るのはお茶ぐらいだ。

取り調べに来たのは馬鹿兄貴とフードで顔を隠したバローズ氏だ。お城の中では目立ちたくないのかな?

その2人が僕を追い詰めるのです。

まず尋ねられたのは、学院の地下で発見された召喚の魔女の遺産だ。

あれは何故かポーラの姿をした刻印さんが夜な夜な調べている。調べているはずだ。朝になると数が減っている不思議な現象が起きているけれど。

立場上というか言い訳として、召喚の魔女の遺産は現在調査中ということにした。

そう聞けば陛下辺りは『アイルローゼが調査している』と思うはずだ。

実際はその上の存在だ。刻印の魔女が調べている。

次いで尋ねられたのはアイルローゼが作った試作品の数々についてだ。

こっちは大人しく全て提出することとなった。問題は無い。先生も許可を出している。

アイルローゼ作の試作品や研究資料は彼女が所有権を放棄したということで全て国に納めることで話が纏まった。管理は現在秘密裏に作られつつある『魔法管理省(仮)』という部署だ。

その部署の責任者は僕が就任予定なので、行った仕事が帰って来るっぽい。どんなイジメかと?

その2つの件は意外と簡単にまとまった。先生の“術式の魔女”と言う肩書に感謝だ。

だがその術式の魔女と言う存在が僕の首を絞めるのです。

ノイエの姿をしていないアイルローゼと言う存在だ。

この案件は国の最重要機密扱いとなるらしくバローズさんには退出していただいた。

代わりにやって来たのは、2代目メイド長を従えた国王陛下だ。初代とは違い不幸に愛されているメイド長様だな。彼女に負けないぐらい僕も不幸体質っぽいけどね。

神はどうやら僕に試練を課すのが趣味らしい。神と言う存在が居ない世界らしいけど。

『誰か~本気で助けて~!』と僕は心の中で叫んでいた。

「アイルローゼがノイエの外に出れるとは知らなかったな~」

バキバキと指を鳴らしている馬鹿兄貴は、そのまま拘束して捨ててきてくれないですかね? 貴方の主人でしょう? フレアさん。

捨てられた子犬のような目でフレアさんをジッと見つめてみるが、彼女はあっさりと無視した。

酷いメイドだ。初代メイド長なら……馬鹿兄貴と一緒に僕を脅迫しているな。2代目の優しさに感謝しよう。

「言ってませんでしたっけ?」

「すっ呆ける気か?」

「全力で!」

こうなってしまったら仕方ない。最終手段ノイエの盾も召喚する覚悟を決めた。

だから強引に連れて来たウチの可愛い妹を窓際に……そんな可愛い妹が2代目メイド長に捕まっていました。もう少し頑張ろうよ?

最悪ノイエに窓を割って来てもらうしかない。

「アルグスタよ」

「はい。何でしょう?」

陛下に呼ばれたのでこれ幸いと馬鹿兄貴から顔を背ける。

「お前は兄貴が相手だと言葉遣いから何から変わるよな?」

「尊敬できる相手に対してはこれが僕の普通です」

「ほほう。面白いことを言うな?」

今にも殴り掛かって来そうな気配を感じてそっと耳の下を指で触れる。

こっちも本気で呼ぶぞ?

「ハーフレンも落ち着け」

「はいよ」

チッ……そのまま怒って殴って来いよ。ノイエを呼んで有耶無耶計画が。

色々と諦め改めて陛下に目を向ける。

「アイルローゼが外に出れるということは、他の者も出れるのだな?」

「……確認が取れているのは数人ですが」

出来ませんとか言い訳は通じないしね。

「数人か?」

「はい」

ここで無理をする必要はない。

落ち着いて当たり障りのない会話に持ち込め。

「アイルローゼは知っての通りです。あと自分が確認しているのは3人ほどです」

「3人と?」

「はい。何でも外に出るのには膨大な魔力が必要だとかで」

一度視線を陛下から、ポーラの背後に立ち彼女が暴走しないように背後から腕を回しているフレアさんを見る。

ノイエ以外のメインウェポンを封じられてしまった。

「フレアさん。アイルローゼ先生の魔力量は?」

まさか自分に質問が飛んでくるとは思っていた無かった彼女が軽く驚いた。

「……私が知る限り当代随一でした。現在はノイエ様が居りますが、たぶんそれを抜きにすれば歴代でも上位に入るかと」

「と、元弟子だった人物から証言を得ました」

視線をまた陛下に戻す。

「その魔女が言うには、外に出るのに準備が必要だとか。それと魔力も」

「準備と魔力?」

「ええ。その準備期間は教えてもらえませんでしたが……でも十分でしょう?」

「十分と言うか」

苦笑してお兄様が頭を振る。

「つまり魔女は姿を現すことで、自分の存在を周りに認識させたと?」

「どうなんでしょうね? でも魔女が実在しているって馬鹿な貴族たちは納得したはずです。仮に彼女が偽者だとしてもね」

「彼女は本物です」

弟子だったメイド長の言葉が念を押してくる。

「と元弟子だった人物から証言を得ました」

何だかんだでフレアさんって先生のことを慕っているんだな。

「だがお前の言葉だと、真偽のほどはどうでも良い様子だな」

「はい。僕がアイルローゼと一緒に行動していると知れば……馬鹿な貴族は腰が引けるでしょう?」

あの“術式の魔女”が僕と一緒に居るのだ。ノイエと一緒に。

この国で最も恐れられている2人を傍に置いている僕に喧嘩を売る……ぶっちゃけ自殺志願者としか思えない。

「つまりお前は、私にこれ以上自分を餌に釣りをするなと言いたいのか?」

「そんな恐れ多い」

恭しく首を垂れる。

「ですが陛下。あの『死の指し手』も外に出れますので」

これは脅しと言う名の保険です。

ヒクッと頬を引き攣らせたお兄様が深い息を吐いた。馬鹿兄貴は頭を掻き、何も知らなかったフレアさんが、我が子の代わりにポーラを抱きしめ精神的な癒しを求めている。

死の指し手ホリーはユニバンス王国内で有名な殺人鬼だ。

知名度だけならナンバーワンのファシーに続いて有名なのがホリーかもしれない。

故にその名は恐怖の代名詞でもある。

最近だと僕はホリーと言う存在自体に恐怖していますが。

疲れたご様子で陛下が首を左右に振った。

「判明しているのは3人……アイルローゼを含めれば3人だったか? あとの2人は?」

「吸血のリグと封殺のシュシュです」

魔法学院に関係した魔法使いの名を出す。リグは学院生では無いけどね。

「……両名とも私は詳しく知らないのだが?」

ホリーとは違いこの2人は知名度が低いのです。

リグはキルイーツ先生が必死に庇おうとしたし、シュシュは地方都市で暴れたからな。

「陛下。両名とも魔法学院に所属、もしくは関係した魔法使いにございます」

「そうなのか?」

「はい。……旧友にございます」

ポーラを抱きしめ精神安定を図っていたフレアさんがそう告げてくる。

ただウチの妹はヌイグルミとかじゃないんですけどね。

「そうか……それでアルグスタ」

「はい?」

「その4人以外は?」

それを聞く? 全力ですっ呆けるよ?

「居るみたいですがまだ判明していません。と言うか向こうからの接触を待つばかりなので全容解明はいつになるやら」

両手を上げてお手上げの姿勢を見せておく。

ぶっちゃけ全て把握していますけどね。レニーラとシュシュが内部に詳しいので聞けば教えてくれるし……まあ出て来たくない人もいるので余計なことは言わない方が吉かな。

「……アルグスタよ」

「はい?」

改まってお兄様が声をかけてくる。

「死の指し手以上に危険な人物が居る可能性は?」

「……それは誰の何を指しての言葉でしょうか?」

正直ノイエの中の面々は危険人物しかいない。全員犯罪者だ。

と、黙って話を聞いていた馬鹿兄貴が頭を掻きながら口を開いた。

「前にお前が帝国のオーガに襲われたことがあったよな?」

「あったね~」

馬鹿兄貴よ。余計なことを言う出ない。

「その現場で血みどろファシーのような戦闘跡が確認された」

「……それが事実だとしたらヤバいっすよね?」

すっ呆けモード全力発動。

「ヤバいというかあれは危険すぎる。狂ってるしな」

おいおい馬鹿兄貴。ファシーのことを悪く言うなよ?

あの子は本当に優しい子なんだ。ただちょっと不幸が重なってあの日大暴れしてしまっただけだ。

「ならノイエの中に居たとしても出て来ないことを祈っておいてください」

それ以上返事のしようがないから僕は話を区切った。

ただポーラが少し悲しげな顔をしていた。

ファシーのことを悪く言われるのは彼女も面白くなかったのだろう。

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