作品タイトル不明
本日のメインイベント~!
「さあやって来ました! 本日のメインイベント~! 術式の魔女が遂に大人の階段を~」
「枕カバ~」
「にゃが~」
変なテンションで騒ぐポーラに対し、頭から枕カバーをかぶせてギュッと入り口を結ぶ。
大きくてふかふかな枕を好むノイエさんの枕カバーと小柄なポーラだからできる一発芸だ。奇麗に収まった。
そのまま抱えて僕は扉を開いて廊下に顔を出す。
ビシッと英国の衛視のような直立不動のメイドさん……ミネルバさんがやはり居た。
先生とノイエがお風呂を終えて寝室に直行。その後に僕が来てポーラが合流すればミネルバさん的にはこの場所を離れられないはずだ。
任務に忠実なのも困ったものですね。
僕に気づいたミネルバさんが何とも言えない表情を向けて来た。
「またポーラが例のお菓子をつまみ食いしたっぽいんだ」
「……あのお菓子でしたらもう全て処分しましたが?」
無くなっていないのです。きっと隠していたのです。
その証拠にウチの純粋無垢な妹様が大暴走したのですから。
「だから引き取ってくれるかな? もし何なら一緒にお風呂に入ってから一緒に寝て監視しておいて。夜中にまた暴れ出したら大変だからギュッと抱えて寝てね。当主命令ってことで」
「……畏まりました」
袋に入ったポーラを押し付けると、困った顔をしてミネルバさんが立ち去って行った。
ただ表情の割には小躍りしそうなほど軽い足取りで遠ざかっていく。
まあ良いか。彼女は信頼できる人物だ。メイドとしてはだけど。
扉を閉めて一応施錠する。
ポーラはこの部屋の鍵を持っているからあまり意味はないけれど。
ひと仕事を終えて大きく息を吐くと……ベッドの上では先生がノイエを抱きしめて座っていた。
ベビードールを纏うノイエとは違い今夜の先生は赤いスケスケのキャミソール姿だ。そんな姿であの足とかクビレ派から生足派に派閥変更を考えてしまうほどに強力だ。
「……何よ?」
「あっポーラを封じたから今夜はもう静かなはずです」
「……そう」
ジッと足を見ていたのに気づいた先生がコソコソと隠そうとする。
というか馬鹿賢者に逆らえないらしい先生はやられたい放題だ。寝間着代わりに僕が使っている白シャツを準備したのだけど、ポーラの姿をした悪魔があれを持ってきて強要した。
それも僕の目の前で着替えるように命じたのだ。
僕は紳士なので目を閉じた。閉じましたとも……全力で片方を!
もう片方は薄く開いて見てました。だって先生の生着替えだよ? 見るよね?
身を隠すように着替える様子が余計にエロく感じたのは僕だけでしょうか?
それから僕の前で軽く踊れとか誘惑しろとかやりたい放題だ。まあ僕としては美味しい目を味わったので不満はない。不満など何処を押せば出てくるのかと聞きたい。
「えっと……そっちの白いシャツを羽織りますか?」
「……うん」
ノイエに抱き着くことで肌を隠そうとしている先生の様子が可愛らしい。
ただ抱き着かれているノイエの服が引っ張られて機能していない。もう半裸です。
椅子の背もたれに掛けておいた白シャツを手にしてベッドの傍に居る。
そっと手渡そうとしたら何故かノイエが受け取った。
「これこれノイエさん。邪魔はダメですよ?」
「……」
首を傾げてノイエが白いシャツを何故か放り投げた。
「これこれノイエさん。服が可哀そうでしょ?」
「隠すのはダメ」
「はい?」
抱き着いている先生の腕を瞬時に搔い潜り、ノイエがアイルローゼの背後に移動した。
赤いスケスケのキャミソールのおかげで先生の裸体がほぼ丸見えです。ブラはサイズが無く下着はノイエ用にと買っておいた新品の赤を穿いている。それは良い。薄い胸だけど先生の胸とか丸見えです。
先生は顔を真っ赤にして両手で隠そうとするが、背後に回ったノイエが抱き着いてその腕を制した。
「やめっ……放しなさい。ノイエ」
「どうして?」
「どうしてって……恥ずかしいでしょ!」
「……」
首を傾げたノイエが僕を見る。
「アルグ様は嬉しそう」
言い訳が出来ね~。
ほら先生が汚物でも見るかのような目を向けて来たじゃないか。確かに嬉しいけど。
「お姉ちゃんは奇麗? だからいっぱい見たい?」
「それは僕に対する言葉かな?」
「ん?」
また首を傾げて……ノイエの暴走が止まりませんな。
「離してノイエ。お願いだから」
「……はい」
渋々といった感じでノイエが先生から手を離す。
両腕でギュッと上半身をガードする彼女は、暴漢魔を前に震える女性のようだ。
というかそれだと僕が諸悪の根源か?
体ごと顔を背けたら、フワっと何かが抱き着いて来た。ノイエだ。
そのまま抱えられてベッドの上へと移動する。
「お姉ちゃんと一緒」
ベッドの上に置かれると、何故かノイエが僕と先生を纏めて抱きしめる。
「ノイエっ! 止めて……恥ずかしいからっ!」
先生が暴れるがノイエの腕から逃れられることは出来ない。むしろ僕とノイエとの隙間が埋まってしまい増々密着することになる。先生の肌の温もりを直に味わえます。
僕の上半身に抱き着く格好になった先生が抵抗を止めました。
「仲良く」
ギュッと抱きしめてノイエがそんなことを告げてくる。
「仲良く?」
「はい」
ノイエの顔が先生を見る。
「お姉ちゃんずっと震えてる」
「……」
「アルグ様は怖くない」
「……」
「だから大丈夫」
言葉の足らないノイエさんの発言は謎々な時があります。さあ頑張って考えよう。
ノイエさん的には先生が僕のことを怖がっているように映っているらしい。
普段は逆なんですけどね。僕が先生に対してビクビクオドオドしている状況ですけどね。
「ノイエ」
「はい」
「先生は裸を見られるのが恥ずかしいんだよ」
「……好きなのに?」
「はい?」
彼女の言葉に僕の思考が停止した。
分かってます。先生が僕に好意を寄せているのはね。
でも好きだからって何でもありじゃ……ああ。何となく分かって来たぞ?
「ノイエさん」
「はい」
「好きだからってみんながみんな、赤ちゃんを作ろうとしたりしないんだぞ?」
「!」
ノイエのアホ毛が奇麗な『!』になったよ。
ビックリだ。ノイエ的には僕に好意を寄せている人全員が赤ちゃんを作りたがっていると思い込んでいたらしい。
「作らないの?」
らしくないほどノイエが動揺している。
たぶん動揺だろう。表情は無のままだが声が震えていた。
「どうして? お姉ちゃん?」
「……」
僕とノイエが会話している間ずっと静かにしていた先生は、何故かギュッと僕にしがみついたままだ。目を閉じてフルフルと震えているのは……どんな状態なのか良く分からない。
たぶん恥ずかしいのかな?
「先生?」
「ふぁっ! 大丈夫だから!」
「何が?」
「……」
僕とノイエに見つめられている状況に気づき、コホンと咳払いをした先生が表情を正す。
顔は真っ赤なままだけどね。
「赤ちゃんなんてノイエが産めばいいのよ。私たちには」
「ダメ」
「……ノイエ?」
先生の言葉を遮りノイエが珍しく怒る。姉を相手にあのノイエがだ。
「赤ちゃんは幸せなんだって。そう言ってた。お姉ちゃんが言ってた。だから作るの。幸せな家族のために」
「……」
ポロっと涙を落とすノイエに先生は言いようの無い表情を見せる。
「そうね。ノイエの言う通りよ」
「はい」
そっと手を伸ばしノイエを抱きしめる先生は今にも泣きそうな表情を作っていた。
僕ですら分かる。ノイエの幸せはきっと両親が居て姉や下の子供たちが居る……そんな風景なのだろうと。だからノイエはいつも求めるんだ。
子供が居る家庭を。それが幸せだと信じているから。
けれどそれが幸せだとは限らない。それを知る先生はだからこそノイエを抱きしめて否定しない。
姉の優しさがそれだというのなら、先生はノイエの姉なのだろう。
それはそうと、ノイエ以外が赤ちゃんを産むって言うのは可能なんだろうか?
宝玉を使って外に出ている人たちが仮に妊娠することが出来るのならば……。
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