軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

お兄様は役立たずかも?

『苦労はして来たけど……誰が娼婦よ……酷すぎるわよ……』と完全に怒って拗ねてしまった先生はノイエを抱きしめてブツブツ文句を言っている。

もうこれは会話にならなさそうだ。そっとしておく。

そうなると自然とターゲットは僕になるわけです。

「初めましてでしたな。私はバローズ。バローズ・フォン・クロストパージュと申します。まあ家名の方は一応公の場で名乗っている程度ですが」

「こちらこそ。僕がアルグスタ・フォン・ドラグナイトと申します」

軽く握手をして……何故かお爺さんが悲しげな目を向けてくる。

「シュニット王から聞いております。現在最もこの国で嫌われている貴族だとか?」

「語弊が凄まじいですね。嫌われているのは上級貴族からです。中級や下級の貴族からは意外と支持を集めているんですよ?」

「ええ。ですがそれらは数であって力とは呼べません」

座席に座り直してお爺さんが僕を正面から見てくる。

「現在この王都では、貴方を排斥しようと貴族たちが集まり悪だくみをしているのです」

「本当に好きだなあの馬鹿共は~。今回も暗殺者をいっぱいですかね?」

前回もそんな話があったけど、結局僕の元には誰1人として暗殺者は来なかった。

やはり無敵のアルグスタさんは持って生まれた運が違うのだと思います。

「暗殺者は雇っている……と言えば語弊が生じそうですな。事実裏で仕切っているのは他国の者の様子。貴殿は他国からも恨みを?」

「はい。共和国と帝国から」

「……あの二か国を敵にするとは」

呆れた様子でお爺さんが額に手をやる。

隣に座るフレアさんが『アルグスタ様ですしね』って感じの目を向けてくるので軽く睨んでおいた。

失敬な。僕はただ全力でノイエを愛しているだけです。気付くと周りが敵だらけなだけで。

「そのどちらかか、はたまた別の国か……貴殿を殺そうと上級貴族たちを唆しているのですよ」

「そうですか。ならウチの馬鹿兄貴に話を回しておいてください。あれには色々と恩があるんで否でも協力するはずです」

カウンターで軽くフレアさんを睨んでみたら、物凄く冷たい目を向けて来た。

ん~? 愛しい旦那が屋敷に帰って来れなくなるのがそんなにも嫌ですか? 僕はノイエと3日と離れたくないですけどね。毎日でも一緒に居たいです。

ただ自重は大切だと訴え続けます。効果が無くとも。

「確かにそうですな。けれど今回の案件に近衛は介入しません」

「介入しない?」

「ええ」

好々爺然としたお爺さんが笑みを向けてくる。

「陛下は今回その馬鹿騒ぎに乗る貴族たちに暴走を促しているのです」

「あ~。あれか」

前回陛下に呼び出されて話し合った一件だ。

何でもこの国は国力に対して貴族の数が多いらしい。特に上級貴族は多すぎるくらいで、僕らのような王族はなんちゃってな場所を領地にするから問題は無いが、本来の貴族は税金が取れる確りとした土地を欲する。けれどもう渡す土地が無いのだ。

よって国から年金のような形で領地を持っていない貴族たちにお金が配られる。その支払いがユニバンス王国にとっては重すぎる足枷なんだとか。

「で、僕を餌に貴族の数を減らす企みをしているってわけだ」

「ええ。現在も反アルグスタ派閥内に間者を送り込んで情報を集めています」

「……国王派の貴族が良くそんな場所に」

勇者だわ。僕なら一発で怪しんで除外する。

と、何故かお爺さんが笑いだした。

「私は国王派でもありませんしね。家名はあくまでクロストパージュですが、この家のために頑張った記憶もありませんから」

とんでもないことを言い出したよ。このお爺さん!

「……つまりはそれを言い訳に伸び伸びと?」

「ええ。それに私の魔法は人の精神に作用する物。混ざっていても目立たないようにするなど得意中の得意なのですよ」

「厄介な魔法で」

「ええ」

と、お爺さんはそっとその目を横に向けた。

「ですがいつからか人の精神を操る魔法ばかりを研究するようになりましてね……若気の至りと申しますか、たぶん誰も結論を出していない答えを欲したのでしょうな」

何故か彼はフレアさんを見つめている。その理由は良くは知らないけど。

「だから言ったのよ。人の精神を覗くことなんてキルイーツの風呂覗きと大差無いと」

「一応研究の一環ではあったのだがね……それを風呂覗きと一緒にするでない。何より彼の覗きは人の体の研究の一環だったはずだ。弁護は出来ないやり方であったがね」

ノイエを抱いて精神を取り戻したらしい先生が口を挟んできた。

あれ? あの先生は防犯上の何たらで……と僕に説明してくれたのだが、それってやっぱり覗きに関係していますか? 覗いてたの? アイルローゼの裸体を?

イラっとしたから、今度会ったら二つある玉を一つにしてしまっても良いのかもしれない。

「それで私の支援者を餌に、馬鹿な貴族たちを一網打尽にするのは良いのだけれど」

良くないです。と言うか僕を財布扱いしてますよね?

「他国の間者はどうするの? 貴方は荒事には向かないでしょう?」

「あはは。こんな老いた身を案ずるのか? その優しさを出会った頃に見せてくれていれば私もここまで老いることもなかっただろうに」

「何を言ってるのかしらこの老害は? 私に散々厄介ごとを押し付けたくせに」

「はて……そんなことをしたかな?」

「したわよね? フレア?」

「私は何とも……」

大叔父と師匠の板挟みに苦労するフレアさんがそこに居た。

やはり自然と不幸が寄って来る体質らしいな。

「まあいいや。なら僕は普段通りしていればいいのかな?」

知らん間にまた命を狙われるとか嫌なんですけどね。

だけれどもバローズさんは静かに息を吐いた。

「貴族たちを纏めていた男が死んだ」

「はい?」

「自然死らしいが……どうも嫌な感じがする」

自然死なのに嫌な感じって暗殺の類ですか?

「帝国であれば魔道具の類が考えられる。共和国なら……暗殺者か」

「どっちも嫌なんですけどね」

「諦めるが良い。貴殿は敵を作りすぎた」

「……今度からは自重します」

自重大切。僕はこのことをノイエやその家族に対しても強く主張して行こうと思います。

「……もしかしたらヤーンの一族かも」

「はい?」

ポーラの声に目を向けると、彼女は頬杖をついて窓の外を眺めていた。

「聞いたことがある。共和国の北の方に金を積めば国すら滅ぼし生き物が住めなくなるようなほどに破壊する一族が居るって。それがヤーンの一族」

片目を閉じて言葉を綴るポーラは間違いなく馬鹿賢者だ。だって鏡に映る彼女の顔が笑っている。楽しげに笑っている。コイツは他人の不幸で白米を食べる人の屑だ。

「頑張ってくださいお兄様。その一族は秘術を使うそうです」

「……秘術って?」

念の為に聞いてみたが、鏡越しのポーラは笑うのみ。

「知りません。ただドラゴンの類は使わないので……お兄様は役立たずかも?」

その通りです。ドラゴンが相手じゃないと僕は役に立ちません。

誰か他にヤーンの一族を知らないか見てはみるが……反応はゼロでした。

敵が分かっても攻撃の仕方が分からなければ意味がない気が。

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