軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

流石にこれはやりすぎよ!

「……なぐれませんでした」

ショボンとしているポーラは本当に悲しそうだ。

何処の世にドラゴンを殴り飛ばせなくて肩を落とす少女(12歳)が居るのだろうか? だがおかしなことに僕の目の前に居て悲しんでいる。

「まだまだポーラも修行が必要なのです。頑張りなさい」

「はいっ!」

ギュッと拳を作ってやる気を見せるポーラの姿に周りで掃除をしている野郎どもが、小動物を見つめるような目を向けてくる。

性欲にまみれていないから許そう。もしそんな目を向ける愚か者が居たら前線送りだ。

ササッとポーラは自分のメイド服に付いた埃を払うと、愛らしい笑顔を向けてくる。

「にいさま」

「ん?」

「きょうはどうしてばしゃをいれかえたのですか?」

「ああ。あれね」

本日は学院に行く前にお城に寄ることとなっている。

陛下からの指示だ。たぶん随行者が増えるのだろう。

おかげでドラグナイト家が所有している僕とノイエの甘々空間を作り出す馬車は使用できない。仕方なく王家所有の普通の馬車を借り受け仕事中に入れ替えて貰った。

一応こんな時の為に普通の馬車を所有しようかと工房の方に発注は掛けてある。

ただあの工房は現在車椅子の生産で忙しいらしい。世の中には足腰の弱い貴族が多いらしい。それと戦傷で歩けない貴族もね。

完成はいつになるやらだ。

「今日はお客さんが乗るからね」

「そうですか」

納得した様子でポーラが頷いた。

「だからもうひとがのっているんですね」

ちょっと待て。何の話だ?

鞄の中に収められていた服を広げ……彼女は自分の頬が引き攣るのを感じた。

あり得ない。こんなのはもう服ですらない。スカートがスカートの機能をはたしていない。

激情のまま引き裂きたくなったが……グッと我慢する。

分かっている。犯人はあの性悪な魔女だ。

自身の手助けをダシにこんな足をさらけ出すような服を着せて辱めようとしているのだ。

『フーフー』と息を吐き出し感情を抑える。

前ならこれぐらいの嫌がらせなど受け流すことが出来た。少なくとも学院時代の自分なら……気づき彼女は苦笑した。

あの頃の自分は周りを見ている暇などなかった。

天才を演じ天才であり続けることを求められた。

辛くて辛くて……唯一の息抜きは可愛い弟子たちとの日々と褐色の少女との生活だった。

まあ同年代のあれらの関りも含んでもいいかもしれない。

それだけだった。

自分に残っている『楽しい思い出』はそれぐらいだった。

あとは嫌になるほど辛く感じる物ばかりだ。本当に辛い。

「ねえファシー? どうせ見ているのでしょう?」

向かい合う形で座っているリスに彼女は目を向けた。

「戻ったら話したいとリグに伝えて」

リスは何も答えない。ただ小さく頷くと身を丸めて眠りだした。

その愛らしい様子に彼女は目を細め、そっと手を伸ばす。

サワサワとリスの毛を撫で、

「先生! 是非ともその服を!」

ノックも無しに開いた馬車のドアに向け、掴んだリスを全力で投擲した。

酷い。ドアを開けたら何故かリスを投げつけられた。

こっちもあっちもビックリだよ。慌てたリスに軽く額を引っ掻かれた。

「だいじょうぶです」

恐怖で逃げ出したリスはポーラが保護して抱きしめている。

増々周りの野郎どもの目が小動物を愛でる感じになっていた。

「アルグスタ様。私の知ってるリスと大きさが全然違うんですけど?」

「我が家ではあれぐらいの大きさに育てる秘術があるのです。飼い主はノイエなので」

「……毎日お腹いっぱいなんですね」

うんうんと頷き納得したルッテがポーラの元に行ってリスを撫でている。

モミジさんも触りたい様子で……やはりどの世界でも小動物は最強らしい。

「アルグ様」

「ご飯は終わった?」

「はい」

ドラゴン退治と食事を終えたノイエが僕の元に来て……何故か首を傾げる。

「それ?」

「これ?」

どうやら額の傷が気になるらしい。

「さっきリスに引っ掻かれてね」

「……」

「落ち着きなさいノイエ」

「大丈夫。まだ食べられる」

ノイエの怒りが食欲となってリスに向けられてしまった。

背中から彼女を抱きしめて落ち着くのを待つ。

ってノイエさん。僕を引きずらないで。ポーラさ~ん。そのリスを抱えて逃げて~!

何かを感じたポーラがサッとモミジさんの背後に隠れた。

「ちょっとノイエ様? 私が何か?」

「邪魔。食べられない」

「ひぃっ!」

何かに恐怖したモミジさんが祝福を使って防御する。

流石のノイエも彼女の祝福を前にすると攻撃の手段がない。

「はい。落ち着こうね。ノイエ」

「……」

「今夜はノイエと2人でゆっくりしたいな?」

「……」

ダメか。ノイエのアホ毛が怒ったままだ。

「分かりました。明日の夜ならノイエの好きにして良いよ」

「はい」

クルっと僕の腕の中で半周し、チュッとノイエがキスして来る。

気のせいか最近のノイエさんは駆け引きというかおねだりを覚えましたか?

ようやくノイエが落ち着いたので、モミジさんが祝福を解いて……両手でお腹を押さえフラフラと配給先へと向かう。

本日はミネルバさんが食事を作っている。野性味溢れるルッテの料理とは違い、上品なお食事を提供しているのです。ただノイエは特に気にせず流し込むかのように食するけどね。

時折ミネルバさんがこっちを、馬車の方を見ている。

先生に気づいたか? なんて恐ろしい人材を僕の屋敷に送り込んできたのでしょうか?

ノイエを抱きしめて切り株の椅子に座ると、ゴロゴロとサボり魔が転がりながらやって来た。

「働け」

「その日が来たら頑張ろう」

それは絶対にその日が来ないパターンだ。

フードで顔を隠し地面の上に横になっているイーリナがこっちを見る。

「もう1枚のプレートはまだか?」

「ああ。忘れてた」

「おい」

ピクッと抱きしめて居るノイエが反応した。イーリナの暴言にではない。

「だから直接自分で聞け」

「何を言っている?」

怪訝な声を向けてくる彼女とは違い、ノイエは何処かソワソワしている。

腕を離してあげると、スルッと抜け出し立ち上がった。

「お姉ちゃん」

フワっと歩いてノイエは戸が開いた馬車へと向かう。

その登場に場の空気が凍り付くのを僕は感じた。

静かだが息を飲みノイエ小隊に属する歴戦の雄らしい者たちが表情を硬くしている。

本能で何かを感じ、その容姿からそれが何であるのかを理解し震えだした。

長い髪を軽く払い馬車の中から姿を現したのは、この国で上位に入る有名な存在だ。

恐怖の象徴とも呼べる我が国で最も有名な魔法使い。術式の魔女の称号を持つ稀代の天才がその姿を現した。

髪や目と同じくらいに頬を赤くして。

「流石にこれはやりすぎよ!」

やはり下着が見えるくらいスカートにスリットを入れたのはダメだったらしい。

絶叫で色々と台無しにしつつもアイルローゼが姿を現した。

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