軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

僕に何かを分けてくれ~!

「ん~? クレアく~ん? 何か言うことはあるかな~?」

「……」

羞恥に顔を真っ赤にしたクレアが全力でスカートを押さえている。

どこぞの娘はこれでも人妻らしいので、本日はどれほどの家事力を身につけているのかのテストをします。

そんな訳で何か良い感じで嫌がらせになる衣装は無いかとポーラに尋ねたら、彼女は自室から超ミニスカートのメイド服を持ってきた。

笑顔で差し出された服を見て、僕がそっと彼女の顔を見たのは言うまでもない。

なぜこんな超ミニのメイド服が存在しているのだろうと悩んでしまったが、馬鹿賢者が作らせたのだろうと察したら納得できた。

あの馬鹿はウチの可愛い妹をどうする気なのだ? まあポーラにだったら似合いそうだけど……クレアに向けていた視線をチラリと横に立つ妹に向ける。

「なんですか? にいさま?」

「ポーラが着るなら靴下は長い方が良いなって思っただけ」

「わかりました」

輝かんばかりの笑みを向けて来た彼女にその理由は説明できない。

我が家に来てから色々とお肌のお手入れを受けているポーラだが、子供の頃から受けて来た体罰により、腕より足の方が傷跡が多い。

本人がそれを気にしていないなら問題は無いんだけど。

まあ良い。とりあえず本日はテストと言う名の罰ゲームです。

「クレアよ」

「……はい」

「まずは部屋の掃除からだね」

「……はい」

顔を真っ赤にしてクレアが掃除の準備を始めた。

時折『ひあっ』とか『きゃんっ』とか悲鳴を上げてはスカートを押さえて顔を真っ赤にする。

超ミニの怖い所は、少しでも角度を誤れば中身が見えてしまうのだ。ちなみに本日のクレアさんの下着は黄色でした。

「誰だったかな~? 学院に入る許可は簡単に取れないとか言ってたのは? ちょっと陛下にお願いしたら簡単に取れたんですけど~?」

「くっ」

本当に悔しそうに箒を手にしたクレアが掃除を始める。

「だめです」

「はい?」

ただ真面目を絵に描いた我が家の妹様が怒り出した。

「おそうじはたかいところからです」

「……そうなの?」

「そうです」

まずはハタキで高い所の埃を取るのだと、ポーラはクレアから箒を奪った。

高い場所の掃除を残しておくとあとから埃が出てまた床などを掃除することになる。

僕だって知っている基本的なことだけど、クレアはああ見えてお嬢様だったからそんな基本を知らない。貧乏貴族に嫁いで苦労しているのかもしれないとちょっと不憫に思ってしまったよ。

「ふだんはどうしているのですか?」

「……イネルが」

前言撤回。この馬鹿な人妻は掃除を旦那に押し付けていた事実が発覚した。

男尊女卑が強いこの世界でそれを許しちゃうイネル君は余程クレアのことが大好きなんだろうな。僕もノイエにお願いされたらどこまでも掃除してしまう気がする。

「まずはこうです」

「はい」

パタパタと控えめに掃除をしていくポーラを真似してクレアもハタキを動かす。

ポーラの方は問題ないみたいだが、部屋に居るメイドさんたちがクレアの動きに対して何故か拳を握り、助言したそうな苦しい表情を浮かべている。

このお城のメイドさんって大半が叔母様の所の卒業生だから優秀なんだよね。

全員がスパイ属性っていう恐ろしいおまけ付きだけどさ。

高い場所の掃除が終わると低い場所の掃除に移る。

ついで水拭きをしてから拭きまでする。

眺めていて知ったが日々この部屋は僕が来る前にこれらの掃除をされているのだ。

メイドさんたちに深く感謝だな。

「もっとこしをいれて」

「はい」

「こうです」

「はい」

床にわざと汚れを付けてポーラがそれらの掃除をクレアに叩き込みだす。

と言うかクレアさんや? 真面目にお掃除のレクチャーを受けていて自分の格好を忘れているでしょう? ねえ?

スカートから黄色い下着をさらけ出しながら真面目に掃除するクレアは……少しは自分でも掃除を覚えたい気持ちがあったのかもしれないな。うん。

「アルグスタ様。陛下から……」

書類を抱えて部屋に来たイネル君が奇麗に凍り付いた。

ビシッと言う感じで凍り付いている。ただしその視線は真っすぐ自分の妻であるクレアの晒されている黄色い下着を凝視だ。まあスカートから覗く下着ってエロく感じるからな~。

イネル君って僕と違って衣装の類で遊んだりしないだろうしね。

「ってクレア! なんて格好を!」

ようやく氷解したイネル君が顔を真っ赤にして持っていた書類を机に置いた。

「邪魔をしないで! 私だってこれくらい!」

クレアの奇行を制しようとする夫の手を払い、彼女は掃除の続行を願う。

間違っていない。間違っていないぞ……ただ間違っているとしたら忘れた羞恥心とスカートの丈だろう。

「見えてるから!」

「見えて……?」

顔を真っ赤にして両手で視界を隠そうとするイネル君の様子に、クレアはそっと自分の視線を下に向けた。見る見る顔が真っ赤になって、『うっ!』と呻いて駆けだして行った。

慌てて追いかけるイネル君の背中を見つめ……何故かポーラを除いたメイドさんたち全員が『ほふっ』と生温かな息を吐き出す。

本当にユニバンスって平和な国なんだな。

「にいさま」

「なに?」

「したぎはみえたほうがいいんですか?」

軽く首を傾げて質問してくる妹の言葉の意味を僕はよく吟味する。

返事を一つでも間違えたら、僕はとんだ変態にならないか?

「ポーラよ」

「はい」

「下着は見えないからいいんです」

「でもにいさまはふだん」

「ノイエに対しては良いのです。ノイエは僕のお嫁さんですから」

「……」

何故かブスッとしてポーラが使い終わった掃除道具を片付けだした。

ちなみにその日1日クレアは超ミニメイド服姿で過ごし、帰りは夫婦並んでとても初々しい感じで帰宅したという。

翌日2人に休みを与えた僕って超親切な上司だと思うのです。

「そんな訳でノイエさん」

「はい」

えっと……前回宝玉を使ったのがファシーだったな。

あれからカウントして……明後日の夕方以降か。

「3日後のお昼から魔法学院に行きます」

「はい」

「その日は朝から僕も小隊の面々を連れてドラゴン退治をするから、ノイエは王都から遠くに居るドラゴンを退治して欲しいんだ。また3日後に同じことを言うけど分かるかな?」

「大丈夫」

グッと拳を作ってノイエが自信満々に頷く。下手したら今夜中にも忘れるんだけどね。

「何をするの?」

「……たぶん掃除かな?」

「掃除?」

アホ毛を奇麗な『?』にしてノイエが首を傾げる。

「魔法学院の地下に何でも召喚の魔女の遺産があるんだって。だからそれを僕らが根こそぎ……は無理だろうからある程度確保しちゃおうかと。ついでにアイルローゼの試作品も持ち出して、穴埋めにも使えるだろうしね」

「……」

動きを止めたノイエの髪が青くなった。

「たぶん前の学院長が来るわよ?」

「それを鑑みて宝玉を使えるようにしてから出向こうかと」

「……学院長に魔女の姿を晒すの?」

「ダメ?」

ベッドの上に座っているホリーはゆっくりと足を組み替える。

短めのベビードールの裾から覗くノイエの白い太ももが艶めかしくて……危ない耐えろ。これはお姉ちゃんの罠だ。

「少し早い気もするけど……一度魔女が健在であると広く姿を晒すのも悪くないかもね」

「みんなに見せちゃうの?」

実際はノイエの魔眼の中に存在しているということになっているから姿を現さなくても良いはずだ。

僕も学院の地下に行ってから先生に出てもらい、帰りにどう姿を隠すのかを考えていた。

「ええ。その方が色々と都合は良いのよ。何より魔女が本物かどうかなんてどうでも良いの。『術式の魔女』が健在だと周りの人たちに印象付けられるのであれば問題ないから」

「そうなんだ」

まあ難しい話はお姉ちゃんに一任だな。

「問題は先生が行ってくれるかだけど?」

「行くわよ。刻印の魔女も一緒に行くのでしょう?」

「みたいだね」

「ならあの生真面目な馬鹿が動かない理由が無いわ」

「そうっすか~」

先生のことを『馬鹿』と言えるお姉ちゃんも凄いです。

「で、アルグちゃん?」

「はい」

「お姉ちゃん忘れてたの」

「なにがですか?」

艶めかしげな表情を浮かべ、ノイエの姿をしたホリーが迫って来る。

「リグをお嫁さんにしたお詫びをしてもらっていないことを」

クルンとその目を怪しくした彼女を全力で抱きしめて組み敷く。

世界中のみんな~! 僕に何かを分けてくれ~!

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