軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

その手を降ろすです~

登城してお仕事をしている間にポーラが王弟屋敷にドナドナされていた。

何故それを知ったのかと言えば、ポーラの姿を見失ったミネルバさんが慌てて捜索していたからだ。あの義妹にはそろそろ発信機でも取り付けないといけないのかもしれない。

いつも大人しいミネルバさんが慌てるわ、それに釣られてお城中のメイドさんが慌てるわ……ユニバンスって平和なんだね。

で、僕が嫌々仕事をしていたらポーラはお屋敷のメイドさんに捕まりドナドナされたという話に繋がった。

義母さんがノイエ恋しさから実力行使に出たのか? 何故かノイエさんは義母さん相手だと可愛い妹を見捨てるよ?

そんな訳でミネルバさんを走らせたら……ポーラを連れて帰って来た。無事にだ。

「最近のポーラは色々と楽しんでる?」

ミネルバさんが連れ帰って来たポーラが机越しに僕の前に立つ。

自由自在に人生をエンジョイしている気がするんですよ。この妹さん。

「はい。たのしいです」

やんわりとした皮肉もポーラには通用しない。輝かんばかりの笑顔で頷いてくる。

あのまま集落で過ごしていればポーラの人生は……あと数年で終わっていたかもしれない。娼館に売られる未来がほぼ決定していたからな。

今のポーラは夢のような生活を満喫しているのだろうな。

「それで何してたの?」

「はい」

トコトコと歩いて来てポーラがエプロンの裏から手紙を取り出す。

「そのエプロンってどうなってるの?」

「だめです」

手を伸ばしてひっくり返そうとしたら、ポーラが珍しく怒ったような声を発した。

「にいさまでもそんなぶれいはゆるされせん」

「無礼なの?」

メイドさんのエプロンって触ろうとしたら怒られるほど神聖なの?

チラリと部屋に待機しているメイドさんに目を向けたら『あの人痴漢したみたいよ?』的な目を全員から向けられた。納得いかないけれどそう言うことらしい。

気を取り直して受け取った手紙を広げてみる。フレアさんからの手紙だった。

内容は……ほほう。これはこれは。

「ふむふむ面白い」

「おもしろいのですか?」

「ああ。面白いね」

あの学院の地下は一度調査が必要かもしれない。

何をどうしたら召喚の魔女の遺産が眠ってるんだよ?

手招きしてポーラを呼ぶと、彼女は笑顔で僕の傍まで来る。

捕まえて膝の上に乗せ……そっと手紙をポーラに見えるようにして広げて見せる。

「……面白いわね」

「でしょう?」

「ええ。これはちょっと興味が湧いたわ」

クスクスと笑ったポーラが、僕に寄りかかって来る。

「……いきたいそうです」

「だろうね」

今回に関しては僕もちょっと乗り気だ。

何故なら召喚の魔女の遺産と言うことは、もしかしたら転移魔法に関する魔道具などが眠っているかもしれない。これを拒否することはできない。

「クレア~」

「はい?」

「ちょっと家族で魔法学院に視察しに行きたいんだけど……何か良い方法はない?」

「前にもそう言って行きましたよね?」

「行ったね~」

呆れるクレアが机の引き出しを開いて色々と書類を漁りだす。

「もう入学に関しての見学は使ってしまったので……」

ドサッと50枚はありそうな紙の束をメンタルお豆腐娘が取り出した。

「この書類にサインをしてから関連部署でサインをもらってください」

「却下だな」

おいおいクレアさん? こう見えても僕は元王子で王家に連なる人物ぞ? 王位継承権だって比較的高い位置なんですよ? そんな僕が何故そんなたくさんのサインを貰わねばならん?

「求む。もっと簡単に入る方法」

「ありません」

「即答かよ」

最近イジメすぎたせいかクレアが反抗期っぽいぞ。

「何かあるでしょう?」

「ありません」

「……」

「ジッと見ても無いです。あの場所の管轄は国であり、最高責任者はシュニット国王陛下です。だからちゃんと決まりを守らないと無理なんです」

「なるほどなるほど」

理解した。

僕の膝の上でスリスリと甘え続けていたポーラを降ろし、椅子から立ち上がる。

「つまり陛下に言って特例を認めさせればいいんだね?」

「……出来るんならどうぞ」

何その『やるだけ無駄』って空気は?

「この馬鹿娘め。アルグスタ様の実力を見せてくれようぞ」

「はいはい」

「……今日中に話をつけて近日中に学院に行ってやるからな」

「出来たら凄いですね」

何かイラっとした。

これが反抗期の娘か? お父さんの苦労も知らず……許せんな。

「近日中に入れたらお前にすっごい罰を課してやるからな?」

「無理ですから。なら入れなかったらブロストアーシュの高級ケーキを食べ放題ですからね?」

「宜しかろう」

大いに頷き僕は壁際に移動して待つ。

「ドーンです~。高級ケーキと聞こえたです~。ってあれ~です~?」

隠し扉を押して出て来たチビ姫を抱えて確保した。

「そんな訳でチビ姫よ。躾が嫌なら手を貸すが良い」

「どうして躾けられるのか納得いかないです~。待つですおにーちゃん。その手を降ろすです~」

サッと構えた右手にチビ姫が慌てふためいた。

「ならば自分が何をするか分かるな?」

「分からないけど協力するです~」

「うむ。流石はチビ姫だ」

どうやらこの国の王妃らしい存在を抱え、僕は自分の執務室を出る。

向かうは国王陛下の政務室……通行許可証は脇に抱えているからどうにかなるだろう。

「ポーラ?」

「はい」

「とりあえず猿轡が要るから何かタオルでも」

「わかりました」

背後に居るであろう妹に命じたら、スススと離れていったポーラがタオルをゲットに向かった。

「何かとても危険な空気を感じたです~」

ジタバタと暴れるおチビさんの腰をギュッと絞める。

幼いというか小柄なこともあってチビ姫の腰は細いというか華奢すぎて怖くなる。

「案ずるなチビ姫よ」

「はいです~?」

「ちょっと日々の君の態度に対し、責任者に文句を言いに行くだけだ」

「……放すです~!」

騒ぐチビ姫にポーラが持ってきたタオルで猿轡をする。

ついでに控えているメイドさんに『チビ姫が日々僕の執務室で仕事をサボっていることを陛下に告げたいので、お兄様に時間を作ってくれるかと聞いてきて』と言うと走って行った。

準備は流々……あとはいつも通り出たとこ勝負で。

「何でもキャミリーが迷惑をかけているとか?」

「ですね」

「む~!」

ジタバタと暴れる王妃を脇に抱え、僕は陛下と対面した。

馬鹿兄貴との話し合いの前に時間を作ってくれたらしく、軽い食事を摂りながら書類を見ているのは仕方がない。戦争やら何やらで陛下の仕事量は半端ない。

僕には無理です。

どれほど睡眠時間を削っても僕にはお兄様の仕事量をこなす自信はありません。

「最近はウチのポーラに紐のような下着を勧めているとかで、ウチのメイドさんたちからも文句を言われています」

「それは……本当に申し訳ない」

「む~……」

暴れていたチビ姫が燃え尽きたように静かになった。

事実本当にメイドさんたちからポーラの身を案じて色々と言われているのです。

「で、それは建前で本当は別件で来たんですけどね」

本題を切り出したらお兄様が心底呆れた様子でため息を吐いた。

「……別件の為にお前は我が王妃の恥部を晒したのか?」

「それは夫婦の間で解消してください。チビ姫は前から背伸びし過ぎです」

「分かった。今夜にでも話し合うこととしよう」

書類を読む手を止めて陛下が僕に視線を向けてくる。

スススと歩み寄って来た長身のメイドさんにチビ姫を手渡し、僕は陛下に目を向ける。

「特例で至急僕らに学院へ入れる許可が欲しいのです」

「無理を言う。国王でもそれは難しいぞ?」

「そうですか。ならあの学院に隠されているらしい彼女の魔道具はしばらく封印しておく方向で宜しいですね?」

「……」

深く深く息を吐いて陛下が机の上に肘をついた。

「あれの魔道具があると?」

「はい。本人からも、それと隠したらしいバローズ氏からも証言を得ています」

「……何がある?」

ため息交じりの重い言葉に僕は肩を軽く竦めた。

「分からないから見に行くんです。もしかしたら陛下から頼まれた物に役立つ品があるかもしれません」

「……そうか」

深すぎるため息の後にお兄様は引き出しに手を伸ばし、そこから1枚の書類を取り出した。

「現在ユニバンスは帝国と交戦状態なのは理解しているな?」

「普通の人よりかは」

「ならば強引だがこれしか方法はない」

取り出された書類は戦時特例に関する書類だった。

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