軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

煽る馬鹿と凍る先生

「ん~」

「なに?」

「ん~」

「?」

ノイエと向き合い僕は首を捻り続ける。

本日のノイエは赤いベビードールだ。それは良い。欲情はしたが根性でねじ伏せた。

だからノイエさん? 僕の根性を認めてよ。そう裾をピラピラさせて誘わないで。白い太ももと赤い裾って卑怯だと思う。

とりあえずノイエの太ももを撫でながら考える。

本日の話し合いでのことだ。

帝国と手打ちをしたいお兄様的には僕の派遣は仕方ないが認めている。

問題は往復の転移魔法だ。

あれは流石に魔道具が無いと無理である。輸送は……またミシュか?

それしか選択肢が無いんだけど、出来たらもう少し簡単に移動できるようになりたい。

つまりはゲームとかで転移場所を定めてワープ的な? でも移動先に魔道具が無いと飛べないわけで。

「……する?」

「はっ!」

危ない危ない。考えすぎていたら太ももではない場所を撫でていた。

ノイエを捕まえてコロンと寝っ転がす。正座している僕の太ももにノイエの後頭部を置く感じで。

するとノイエの赤黒の目が真っすぐ僕を見つめる。

「なに?」

「ん~」

ずっと悩んでいます。誰を呼ぶべきか。

魔道具に関しては先生だろう。けれど先にホリーを呼んで今後のことを話し合うべきなのかもしれない。問題はホリーを呼んだら終わる。

昨夜は夜中まで猫ファシーが居てノイエが撫でていたから回復に努めることが出来た。回復はしているはずだ。

でもホリーだよ? ゼロを突き抜けてマイナスになるまで縛り尽くそうとするお姉ちゃんだよ?

「決めた」

「する?」

違うんですノイエさん。胸を撫でていたのはそこに山があったから登っちゃった登山家的な発想であって、奇麗で手頃な双丘を披露しているその赤い山脈が悪いのだと思います。

「セシリーン。先生って呼べる? 少しお願いしたいことがあるんだ」

ノイエの姉たちを呼び出す係として扱ってしまっているセシリーンにお願いしてみた。

とても便利なんだけどお願いばかりで……出て来た時に体で支払っているから問題ないかな?

あの歌姫さんは捕らえどころが無いと言うか、いつも『うふふ』と笑いながら時折Sっ気を見せてくるから怖い。

これがリグの言っていた僕の前だと本性を晒してしまう現象か? 実はあの歌姫はSだった? こわっ!

ノイエの顔を撫でながら待つことしばし……何故かノイエの目が半眼になり顔が真っ赤になった。

「何してるのよ?」

「……可愛いお嫁さんと仲良くしてました」

睨まれたので顔から手を離すと、起き上がった彼女の色が赤くなる。先生だ。

「それで何かしら? 今忙しいの」

「あっうん。実はお願いがありまして」

陛下からの提案である使いきりの魔道具のことを相手に告げる。軽く頷いた彼女は素っ気なく『出来るか考えてみる』とだけ返事を寄こした。

それからベッドを降りて先生はスタスタと歩き机に向かう。

本日は機嫌が悪いのか拒絶のオーラが半端ないのです。

「また中で何かあったの?」

「何故?」

「先生の機嫌が悪いから」

「……」

絶対零度的な視線を向けられ睨まれた。

そんなに冷たい視線……プロのドMな人たちならご褒美なんだろうけどな。僕は素人レベルなのでその視線には耐えられません。ぶっちゃけ怖いです。

「リグが」

「はい?」

「リグがホリーに胸を削がれてのたうち回っていたわ。誰かのせいで」

「……」

えっとそれは僕のせいですかね? 僕のせいかな?

リグの告白を受けて求婚も受けて……結果としてホリーの逆鱗に触れたと。

あぶな~。もしお姉ちゃんを呼んでたらマイナスどころかオーバーキルに突入するまで搾られていたわ。僕って運が良いんだな。

「だから先生は怒ってるんだね」

不機嫌の理由も分かった。

アイルローゼは何でもリグを可愛がっていたとか。

彼女の刺青の関係で付き合いが長く良く一緒に居たとシュシュがそう言った。

妹と呼ぶにはあれかもしれないけど、アイルローゼはリグを大切にしていたんだな。

つまりノイエの中は先生VSホリーの構図ですか?

魔法が決まれば先生の勝ちだろうけど、あのホリーが素直に正面から戦うとも思えない。ちょっと見たい対戦でもある。

ただ何故か先生の絶対零度の視線が零度のままだ。

そろそろ機嫌と言うか目つきだけでもどうにかしてくれませんか? 怖いんですけど?

「ホリーはあの性格だから。ちょっと独占欲が強いけど……でも根は良い人だよ? 本当だよ?」

途中でホリーが見聞きしているかもと気づいて自分の発言にフォローしておく。

ホリーの場合はどの発言が地雷になるか分からないから要注意だ。

増々機嫌を悪くした先生が僕から視線を外す。

アカン。こっちの地雷を踏んだか?

対応に困ります。異世界ハーレムやっほい! とか言ってる人に聞きたいです。

どうすれば全員仲良く平等に付き合えるんですか? 僕には無理です。

「待たせたわね!」

バンッと部屋の扉が開いて小さなメイドが飛び込んできた。

こらこらポーラさん。後ろ足で扉を閉めない。

と言うか馬鹿賢者がやって来たよ。

「何となく楽しそうな空気を感じたから私の出番ね!」

「ごめん。何を言ってるか本当に分かりません」

「気にするな少年!」

ハイテンションの馬鹿賢者は酒でも飲んだのか? それとも白い粉か?

ポーラの体で何をしているのだ? 逆さに吊るして鞭打つぞ?

「ふふふ……。そこの魔女!」

「……なに?」

「忘れてないわよね? ん~?」

ドヤ顔で煽る賢者に先生が心底嫌な顔をした。

何事ですか? 力関係が全く見えないのですけど?

疑問符を掲げて首を捻る僕に対し、馬鹿賢者がチッチッと顔の前で指を振った。

「そこの魔女は現在私の飼い犬なのよ!」

「……頭は大丈夫? 悪いのは知ってるけど?」

「頭が悪い言うな! 馬鹿じゃないから!」

憤慨するがポーラの姿じゃ可愛らしさが先行するのです。

「転移魔法の技術を提供する代わりに、そこの魔女は私の言うことを聞かなければいけないのよ!」

ビシッと先生を指さしハイテンションの馬鹿がそう言った。

ああ、何だかとってもミシュっぽい。

「と言うわけで魔女」

「……何よ?」

「約束を果てしてもらいましょうか~。ん~」

正直ウザくなってきたので、僕はベッドを降りて煽りまくる賢者の元へと行く。

僕の接近に気づいた賢者の脳天に軽く拳を振り下ろす。

「いたっ」

「ウザい」

「だからって殴るな!」

「殴ってはいない。何より痛くないはずだ」

本当に軽く拳を当てたぐらいだし。

「痛いのよ! 大好きなお兄様に殴られた妹のダメージは甚大よ!」

「はいはい。少し黙りなさい」

テンション高すぎてついていけません。

「それで先生に何をさせる気よ?」

「決まっているわ!」

だったらさっさと言えよ。ウザいから。

「この魔女は見ててイライラするのよ! 私はスパッとした方が良いの! 具体的に言えば、『物語の悪役令嬢が実は良い人でした』とかじゃなくて悪役のまま突っ走って欲しいみたいな?」

「意味が分からん」

役なんだし実はいい人でも良いと思うぞ?

何よりこのテンションがマジウザい。何なの?

「そういうわけでそこの魔女! 見ててウザいからそろそろはっきりしなさい!」

ウザいのはお前だ。このまま連行して自室に放り込もう。

捕まえて抱えて運ぼうとする僕の手を逃れた馬鹿賢者が、改めて椅子に座っている先生を指さした。

「自分の妹分に先を越されて悔しいんでしょう? そうなんでしょう?」

「……」

音を立てて人が凍る姿を初めて見た気がする。

ノイエの姿をした先生がガチっと凍り付いた。

と言うか……今の言葉はマジですか?

「さあ私がお膳立てしてあげるから、ここで彼と一発しちゃいなさいよ!」

煽る馬鹿と凍る先生。

僕は黙ってハリセンを取り出した。

ごめんねポーラ。後でちゃんと謝るからね。

問答無用でポーラの頭にハリセンを振り落とした。

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