軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

あのアルグスタを打倒するのはどうでしょうか?

ユニバンス王国・北部

「流石ですノイエ」

「……」

「光り輝いてます」

「……」

湯船の中で立つ彼女がその場でクルっと一周してくれる。

褒められて喜ばない女性など居ないのだ。それがあのノイエだって変わらない。

長いプラチナの髪は邪魔にならないように背中の辺りで青いリボンで束ねられている。

その束ねられた髪が回る動きでフワっと浮かんだ。

傷1つ染み1つ無い肌は本当に清らかだ。

そんな美の化身である僕の自慢のお嫁さんの体を覆うのは、面積のとても少ない水着。白と青をベースにしたビキニだ。

あの馬鹿賢者に頼み込んで描いてもらった絵面を元に、コリーさんに作ってもらった。

『水着ですか? 水に入るのに着るのですか?』と何度も首を傾げられた。この世界では基本海で遊んだりしない。川や湖でもだ。何故ならドラゴンが居るからレジャーが少ない。

水浴びをする時は木桶に井戸から水を汲んで、それを室内で全裸になって拭き清めるのが一般だ。お風呂なんて物は贅沢であり大衆浴場も存在するが、それだって何かの時に入るのが普通だ。毎日のようにお風呂に入るのは余程の金持ちか王様でもなければ無理なのだ。

しかし僕は運が良いことにその一握りの存在だ。ならば全力で楽しむことを考える。

結果として水着だ。

ノイエはたくさんの水が怖いから湖や海などに近づかない。そうなると水際のレジャーは楽しめない。

だが王家は温泉を所有している。つまりここならば好き放題だ!

「ノイエ奇麗だよ~」

「……」

少し頬を赤くしてノイエが僕の指示に従い色々なポーズをとる。

下手なアイドルなんて霞んでしまう……僕だけの最高のアイドルであるノイエが、僕だけの為に水着を着て、僕の指示でポーズをとる。

何この物凄い贅沢? 地球上だと石油王とかじゃないと出来ない遊びだよね?

「ほらノイエ。そこで屈んで……そうそう完璧です」

「……」

眼福すぎる。

ここ最近の嫌なことが全て僕の中から消え去っていく気がする。

今の僕なら10年は戦える。相手にもよるけれど。

褒めて褒めて褒めちぎって……気づけばノイエさんが背中のビキニの紐に手をかけていた。

スルッと解いて芸術作品とも思える中身がプルンとこぼれ出る。

本当に完璧です。良く分かってます。

「ってノイエさん?」

「……」

胸を終えて次は太ももの上、左右で縛っている紐に手をかけた彼女の様子でようやく気付いた。

どうやら僕は浮かれすぎていたらしい。水着って……男の何かを狂わせるんだね。

スルッと紐が解かれ……臨戦態勢を整えたノイエがズイッと僕の前に移動して来た。

「する」

「えっと……ここは外だし、ね」

「平気」

ムニュっと胸を押し付けてきてノイエがジッと僕の顔を見つめる。

「掃除は楽」

「まさかのメイドさん目線! って、あっ……あ~!」

褒めすぎてテンションマックスになっていたノイエさんに全力で絞り尽くされた。

ここ最近だと久しぶりなぐらいノイエが元気なのは良かったんだけど……明け方ヘロヘロでノイエに運ばれる僕を見たメイドさんたちが『今日は一日清掃ですね』と余りの惨状に愚痴をこぼしていた。

本当にすいません。色々とごめんなさい。だってノイエが……あれ? 気づけばノイエのアホ毛が元に戻ってた。

テンションなの? そのアホ毛はテンションで回復するの? ねえ?

ユニバンス王国・王都

王都内に貴族区と呼ばれる場所がある。王城から近く王都の中では最も治安の良い地域だ。

大半の上級貴族や王家の者の屋敷も置かれているこの地域に……その者たちは集まっていた。

現王家に不満抱く一派だ。

主だった者は南部に属する貴族であり、あとは王家の手の者に領地を取られた者たちなどだ。

誰もが王家を恨んでいた。

自分たちの罪や不正など微塵も気にせず、ただ『地位に相応しい権利を奪われた』と怒り不満を吐き出す存在たちだ。

ただそんな存在は昔から居た。昔から居たのだが……この1年で派閥に属する者たちが増えたのだ。全ては新しく王となったシュニットの手腕と怨敵アルグスタの存在だ。

あの狂暴極まりないドラゴンスレイヤーを手懐け、彼女が生み出す富を独占したのにもかかわらず、挙句にはあの術式の魔女までその手中に収めているという。

どれほど独占すれば気が済むのだ。

普通に考えれば仲間や下の者に対し利益を共有するのが礼儀のはずだ。

それなのに彼は他の上級貴族たちとはかかわりを持たず、生家であるルーセフルト家と古くから関係のある者など冷遇する始末だ。許せるわけがない。

腹いせに警告がてら暗殺者を差し向ければことごとく狩り取られてしまう。

下手をすれば差し向けた貴族に不幸が舞い込むほどだ。

何も分かっていない。貴族としての振る舞い方が何一つ理解していないのだ。

今日もある上級貴族の屋敷に集まり、各々が王家やアルグスタの行動に不満を言い募る。

このままでは全ての富はあのアルグスタに集中し、国王が思い浮かべている手順で国へと税として納められる道筋が出来上がってしまう。面白くない。大変面白くない。

とはいえワイン片手に話し合い愚痴を口にする者たちにはこの状況を変えることは難しい。

知恵があるのであればこんなことをせずに自分が生き残る方法を模索しているはずだからだ。現にこの派閥から抜け真面目に健全にと舵を切った貴族たちも居る。

だが悲しいかな……古くから甘い蜜を吸って来た者たちにはそんな考えや生き方は出来ない。故に群れて自分たちを大きく見せようとするのだ。

それだけであれば問題は起きない。何処の国にである普通の光景だからだ。

「でしたら……我々が一致団結して、王家打倒とは言いません。あのアルグスタを打倒するのはどうでしょうか?」

話し合いの場と化していたダンスホールだった場所にその声が響いた。

低く低く響いた声は、不思議と全員の耳に届いた。染み渡るように甘い声音でだ。

語りだしたのは、ジーグナントと言う貴族の当主だった。

ユニバンス王国・近衛団長室

「また馬鹿共が集まり不満大会か?」

上って来た報告書に、王弟であり近衛団長でもあるハーフレンは眉間に皺を寄せた。

定期的に集まり愚痴を言い合って毒抜きをしている馬鹿共の行動も一応監視している。

けれどこの馬鹿たちは群れるだけで行動は起こさない。他人にさせることはあっても自分から行い失敗するのを恐れているからだ。

失敗とはすなわち破産。全てを失うような愚かなことをする根性だけは無いのがこの馬鹿たちの特徴だ。

「……ん~」

ただ報告書を眺めていたハーフレンは少し気になった。

メイドたちがもたらした報告では、途中からメイドたちを会場から締め出したのだ。

貴族たちで何か秘密裏に悪だくみをした可能性はある。何処か破産寸前の中級貴族が貧乏くじでも引いたのかもしれない。

《普通に考えて……俺か?》

南部の貴族を取り締まったばかりだ。買った恨みの多さをハーフレンは理解していた。

「面倒だね本当に」

ガリガリと頭を掻いて彼は待機しているメイドに目を向けた。

「ミシュは?」

「陛下の命令でキシャーラ様の所に向かいましたが」

「となると戻り待ちか」

一方的に転移魔法で送り出せても帰りの魔力が準備できずに徒歩で戻る。

結果としてミシュは伝令として走り回る日々を送っている。

「仕方ない。誰か他の用心棒でも見繕うか……内部を捜索するかか」

適任が居ないことに気づき、嘆息気味に息を吐いてハーフレンは次の仕事へと移っていた。

優れた人材が不足しているのが現状のユニバンスなのである。

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