軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

初めての野営ポイント

何もないまま進んでいた馬が、急に止まる。

どうも前の高級馬車でトラブルみたい。

「マリー。少し休憩だ」

ハートさんが馬から降ろしてくれたので、「うーん」と伸びをしてちょっとストレッチ。

みんなもそれぞれ馬を降り休憩を始めた。

「ちょっと見てくるわ。誰か付いて来てくれ」

ガインさんは聖騎士二人を連れて前の馬車まで歩いて行った。

何かを話しながら馬車に乗り込むガインさんが遠目に見える。

「どうしたのですかね?」

「教会の紋章の旗を見て、聖女で儲けようとしているのかもな。知らない人に付いて行くなよ?」

ハートさんがいたずら顔で片眉を上げた。

「タダで派遣も巡礼もするのに。儲かるのですか?」

「まあな。聖女はいくらでも金になるぞ」

ハートさんがクスクス笑いながら馬を撫でる。

「毛皮も肉も余す所なく売れるホワイトリヨンみたいですね」

「確かにな。怖くはないか?」

「ハートさんがいますからね」

私がふざけてそう言うと、久しぶりにデコピンされた。

暫くするとガインさんに「マリー」と呼ばれる。

テッドさんに馬を預けてハートさんと一緒にガインさんのもとへ歩いて行くと、馬車の影で御者が青ざめて立っていた。

「どうされました?」

呆れた顔のガインさんが、剣に突き刺し燃やした蛇を振っている。

蛇の串焼きか。

思わず私は顔をしかめた。

「食べるのですか?」

「あほ。噛まれたらしいから治してやってくれ」

なるほど。

ドアに手をかけ中を 覗(のぞ) くと、まるで絵にかいた王子様のような青年が青白い顔でぐったりしている。

ちょっと! 急がなきゃ。

幸いな事に意識がない。解毒の魔法をかけてから、回復魔法を慎重に重ねてかける。

良かった。内臓は大丈夫そう。

徐々に顔色が元に戻ると青年はゆっくりと目を開けた。

「あぁ良かった。ご気分は?」

「い、良いです」

起き上がろうとする青年の肩を押さえて「急に動いたらダメですよ」と優しく伝える。

健康状態を確かめる為に脈を取ろうとすると、ハートさんに手を 掴(つか) まれた。

「あり……」

「戻るぞ」

青年にお礼すら言わせないガインさんとハートさん。

私はすぐさま二人に腕を引かれて馬まで強制的に戻される。

「健康状態を……」

「問題ない」「もう平気だ」

いやいや、二人揃って警戒し過ぎ。

それにしても、あんなに高級な馬車と身なりで護衛も無しの旅?

訳アリっぽいからガインさんはいつもより警戒してるのかな。

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山の野営ポイントに着くと、私は馬も含めて全員に疲労回復魔法をかけた。

「ありがとうございます聖女様」「おお。凄いですね」「これが噂の……」

聖騎士達が派手に驚いている。

私は笑顔で会釈をすると、やり過ぎたかなと反省をした。

「今日はここで宿泊だ。準備しろ」

「「「はっ」」」

「まだ時間が早いですが、この先の野営ポイントまでは行かないのですか?」

テッドさんがガインさんに聞いている。

確かにまだ明るい。

「いいんだよ。ここなら温泉に入れるし」

「そうなんですね」

テッドさんが感心し何かのノートにメモをしている。

テッドさんは本当に真面目だな。

通りがかりの商人さんが屋台を出したり商売をしたり、意外にここは賑やかだった。

天然の温泉があるから人気なのね。

道の駅というより SA(サービスエリア) かな。

それに空調も結界も魔道具で張ってある。

利用者が魔力を流し込む決まりらしい。私もさっきやって来た。

「ありがとうございます聖女様」「お会いできて光栄です」

もちろんここでも笑顔を振りまき怪我をしていた冒険者さんを治療した。

野営ポイントは簡易の壁で区切られており、そのひと区画を私達は利用する。

食事は屋台で買って設置されたテーブルに集まった。

こういう旅も中々いいかも。ドライブ旅行みたい。

女性の聖騎士達と一緒に温泉に入って楽しかったし。

豪華なテントが聖女の為に用意され、周囲には 不寝番(ふしんばん) が交代で付くらしい。

慣れないから、寝る時は結界を薄く張ろう。

「おやすみなさい」

結界内で知らない魔力の侵入が。

向こうの方だ。こっちじゃないから放置でいいや。

「あ」

翌朝、二人の男性が捕縛されていた。

彼らの横を素通りし、聖騎士に囲まれテーブルにつく。

「……。昨日の侵入者は彼らだったのですね」

「 隠密(おんみつ) 魔法の気配が分かったの?」

テッドさんがびっくりしながらサラダを渡してくれる。

「え? まあ。私が動くと邪魔になるのでじっとしておりましたが」

嘘です。眠くて放置しただけです。

「流石マリーだね」

返事に困って微笑むと、テッドさんはキラキラとした目で私を見ていた。

「テッド、騙されるな。結界を張っていただけだぞ」

「そうだぞ。眠くて放置しただけだ」

フェルネットさんに至っては生暖かい目で私を見る。

何故バレた。

「でも、結界を張る危機管理は……」

「お前、そんな感じで今まで色々と騙されて来たんじゃないか?」

「ガインさん? 人聞きが悪いですよ」

「そうですよ。マリーは人を騙すような人間じゃありませんよ」

テッドさんがガインさんに抵抗すればするほど、フェルネットさんの私を見る目が冷たくなっていく。

「ははは?」

「あまりテッドで遊ぶなよ」

「誤解ですって!」

みんながテッドさんで遊んでいると、聖騎士がガインさんのもとに走ってきた。

「ガインさん。あそこの冒険者が引き受けてくれました」

聖騎士が指差すと、向こうで他の聖騎士達と冒険者が話をしている。

「良かった。後は頼む。後で教会宛に手紙を書くから渡してくれ」

「はっ」

王都に帰還予定の冒険者が、ついでに捕縛した侵入者を連れて行ってくれるらしい。

聖女を狙った訳ではなく、お金持ちと間違えた物盗りだった。

気の毒になるくらいに謝られた。暗くて教会の紋章の旗が見えなかったらしい。

ガインさんが『一筆書く』と言ったら泣いていた。

出発前の準備が整うと、話があるとガインさんの前に一同が集められる。

何だか重々しい雰囲気だけどなんだろう。

「マリーの警護の指揮はテッドが執る。ハートはテッドのサポート。聖騎士達もそのつもりで」