軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

食堂で妄想

食堂に行くと、久しぶりに教育係のノーテさんとばったり会った。

「お疲れ様です、ノーテさん」

「マリー。遅くなったけど10歳おめでとう」

えー、もしかして、お祝いを言う為に、待っていてくれたのかな。

意外過ぎて驚き。

「その顔、意外過ぎて驚いてますね」

「そんな事ないですよ。はは。ありがとうございます」

ノーテさんは私の教育係だけど、普段は教会の運営管理の仕事をしているので、資料室勤務の私にとって良き相談相手だ。

「で、お祝いだけって訳じゃないですよね?」

「あら、マリー。私がそんな薄情に見えまして?」

見えるから言ってるのですが……とは言えない。

「ははは」

「正解です。そろそろ作法やダンスのレッスンを受けてみては 如何(いかが) かと。ヒールに慣れて、所作を学ぶ事は、あなたにとって、決して損にはならない筈です」

……。もしかして光適性の事、知ってるのかな?

政略結婚の為の道具にされちゃったり?

私は辺境の土地で、愛のない結婚生活を……。

いや、もしかしたら、どこかの悪徳貴族の 妾(めかけ) か側室にされるとか……。

と、ラノベでしか知らない政略結婚を妄想して絶望する。

「でも、毎日裏庭の掃除も、資料室の仕事もあるのですが、いつレッスンを?」

遠回しに時間が無いから無理、 的(てき) に言ってみる。

「資料室にマリーがいないと苦情が来るので午前中、週に2回なら無理が無いのでは?」

だめか。

とにかく身分のある人との接触は絶対に避けて……。

安全の為にレッスンも断った方がいいのかな?

いや、ここはいったん持ち帰ろう。

「……考えておきます」

そうだ! ハートさんかフェルネットさんに、偽装でいいから婚約してもらおう。

うん。それしかない。私頭いい!

「何々? ダンスレッスンてなに? 私も習ってるわよ。一緒にやる?」

ノーテさんと別れ席に座ると、待ってましたと言わんばかりに先輩女性黒神官のサーシスさんが、ぐいぐいと私の横にトレーを置いて座る。

ああ、終わった。

私の神官人生が終わった。

女性神官の中で一番噂好きで口の軽いサーシスさんに、未来の 妾(めかけ) 生活(妄想)がバレてしまう。

「こ、子供の頃、趣味でお父さんとダンスをしていたので、ノーテさんに勧められただけですって」

「お父さんって、あのイケメンのお父さんよね! 私をお母さんって呼んで!」

それだけは絶対に嫌だ。

何が何でも反対する。

「ははは。サーシスさんて、付きあっている方がいるじゃないですか」

「イケメンは別腹よ!」

サーシスさんは情報カモンと言わんばかりに、目をギラギラさせている。

怖いってば。

何か、当たり障りのない話を……。

「お父さんは今、冒険者の仕事が忙しくて、遠出も多いですし、そういう事は考えていないですって」

「フリーなのね! 今フリーなのね! 誰とも付きあっていないのよね!」

あ、間違えた。なんかヤバイ方向に……。

「いや、違っ……」

「いるの!?」

ぐいぐい来るな。

「いえ、いない、です……」

肉食ツヨイ……。

サーシスさんの興味がハートさんに逸れたので助かったけど、申し訳ないハートさん。

自分の身を守る為に、ハートさんの個人情報を少し 漏洩(ろうえい) させました……。

翌朝、ハートさんが恋人募集中という別物の尾ひれの付いた噂が女性神官中に流れ、何故か私がノーテさんに呼び出されて叱られた。