軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ノーテさんの報告

「ノーテとモーラス司教以外は下がりなさい」

わしがそう言うと、静かに神官達は部屋を後にする。

一方的に加護を奪われたあの 不遇の子(マリー) が心配で仕方がない。

扉が閉まる時間がこんなに遅く感じる事は、今までなかったわい。

「そ、それでノーテ。マリーの様子はどうじゃ」

出張から戻ったわしは思わず前のめりで質問をすると、ノーテは少し驚いた顔をしてレポートをモーラス司教に渡した。

「詳細はそちらに。印象としては、全般的に学習能力が高いと思われます」

「と、いうと?」

「ドアをノックしたら、ちゃんと自分で開けました」

「ん?」

そんな当たり前の事を?

「……。その習慣が無い者には難しいのです。でもマリーは一度目にした事を、すぐに実践しました」

「な、なるほどな!」

うむ。よく分からん。

「それと、一番驚いたのが食事ですね」

「ほう」

あの辺境の村は、食べるときは棒か手づかみだったようじゃしな。

今から 躾(しつ) ければ十分間に合うはずじゃ。

「完全に 馴染(なじ) んでました」

ん?

「すごく上品だったとか、下品だった、ではなく?」

「そうです。全く周りの白神官と同じで、違和感がなかったんです」

ん?

「それのどこが驚くのじゃ?」

「本人に確認したところ『食事の際は周りに合わせ、同じように食べる事が習慣になっている』と言っておりました」

「ほう」

考えたことも無かったわ。

上品であればあるほど良いと思っていたが、そういうものなのか。

「場所によっては手づかみで食べるそうですし、上級貴族のマナーも習得しているそうです」

確かにあの子の立ち振る舞いには気品があったが、上級貴族のマナーまで……。

「そして、夜は寝ますし、時間になれば起きてきます。自分で立てたスケジュールに合わせ、時間に正確に行動します」

「それも6歳の子には珍しいのか?」

「ええ。まず教育係はそこから教え始めるのですが必要ありませんでした。あんなスケジュールを立てるのは想定外でしたが」

その辺は冒険者と旅をしていたのだから出来て当然か。

「今は何を教えているのじゃ?」

「何も」

「へ?」

「本来、6歳の子供は規律を教える事をメインに、1日1時間ほど庭掃除のような簡単な仕事をさせ、それ以外の時間は、他の子供達と共に学ばせ共に遊ばせるものです。勝手ながらマリーにその教育方法は合わないと判断させて頂きました」

「で、何も教えていないのか?」

「マリーは読み書きや計算はもちろん、地理や歴史も一般常識程度の知識があります。人に助けを借りる器用さがあり、報告や相談も出来る賢さも。6歳の子供にこれ以上の教育は必要ないと判断しました。少々危機感が足りないので、門衛には協力を依頼しております」

なんともまぁ……。

「母親からは好奇心旺盛で少し気が強いとは聞いていたのじゃが……」

「そうですね。先日は変わった種を欲しがるので専用カードを渡し、自分で買いに行かせました。その報告書の内容は予想以上でしたよ」

なるほどな。

下手に口出ししない方が良いのかもしれんな。

「研究開発がしたいと言うので周囲の安全の為もありますが、庭師のドーマンの監視の目が届くので裏庭の離れの部屋に移動させました」

研究開発……。

ま、まぁ、あそこなら設備も揃っているしな。

じゃが、あんな所にひとりで怖くないのかな?

いや、ノーテがそう言うなら平気なんじゃろうな。

「それと……。資料室の整理もやらせています」

資料室ってあのごみ溜めの……?

人を配置すると数日でみんな逃げ出してしまう、あの?

「なぜ?」

「ああいう賢い子は難しい課題を出さないと、飽きてしまいますからね。手を貸すつもりで、相談に来るのを待っていましたが、あの子ったら私の想定以上の方向で……。ふふふ」

うーーーーん。

ま、まぁ、ノーテが、そう……言うのなら……。

「……。あまり無理をさせんようにな。今後も定期的に報告を頼む」

「かしこまりました」

ノーテにはマリーの適性の事も、家庭の事情も説明しておらん。

ただ白神官に育ててやって欲しいと言う、わしの無理な注文に対応してくれておる。

これは、一番評判が良かった教育係の彼女にしか頼めなかったな。

モーラス司教も頷いておるから問題なかろう。

それにしても最初はあんなに渋った教育係の復帰も、今じゃ楽しそうでホッとしたわ。