軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

81【お祭りなんて、何日もするものじゃねえ】

東京都の某市で生まれた、田中駿介こと、シュバイツ フォン ロードランダ は、生き別れていたと思っていた父に会ったと思ったら、その人は三百年以上続くエルフのための国の、統治中の建国王だったのだ。しかし、俺が東京から転移したのはロードランダ王国の隣の帝国で、訳も分からないまま、周りのいい人の支えの中で生活をし、冒険者として活動しながら帝国の学園の学生となっていた。一年目の学年末の夏休み中に、父の国を訪れ、建国の王に初めて存在することになった王の第一子つまり第一王子が俺と言うことで、晴れて国民に発表したのだった。

王都を中心に、ロードランダ王国中がお祭り騒ぎになっている中、俺は、この国に滞在しているうちにやるべきことをひとつこなそうと思っていた。

それは、クリスのお祖父さんであるリーニング伯爵の王都の屋敷を訪問すること。これはなんと、先日冒険者の依頼で訪れた、グリーゼ フォン アルジルという、美術の好きな伯爵のお屋敷の三軒隣りにあった。簡単に隣と言うが、伯爵の建物が並んでいるので、二百メートルは離れている。

お招きいただいていたので、伯爵の孫でもあるクリスの案内で一緒に尋ねることにしたのだ。

ただ、三日前のド派手なお披露目の後なので、人間族の冒険者に変装して(俺自身は日本人に戻った感覚だが)同じく冒険者スタイルのクリスはエルフの格好で二人で歩いている。

俺は、ハロルドの手綱のために長いまま三つ編みにしてちょっと団子にして垂らしている。今は黒髪だ。

途中、祭りならではの屋台が色々ある。

「人形焼きじゃん。どれどれ、あんこ入っているからたい焼き?みたいな」

「こ、こんなの食べられないですよ」

「可愛いじゃん」

誰?って感じに下膨れにデフォルメされた、ブランネージュとか、翅を付けて見返りみたいになってるシュバイツとか、鯨の形とか、ペガコーンも可愛いぜ。

「おっちゃん、国王陛下とかハロルド様は分かるけど他はいつデザインしたんだよ。みんな初めて見たのは三日前だろう?」

「そう、その後だよ」

「それでもう焼き型が出来ているんだ。すごいです」

クリスも、この人形焼きのすごいところが分かってもらえたようだね。

「私の友達が、鋳造が得意でね、デザインから型まですぐに作ってくれたよ。魔法も使うからすぐさ」

「へえ、どういう魔法なんだろうね。錬金術かな、どんな職人さんだろう」

それで中身は、小豆餡や、カスタード、ホウレン草の入った翡翠饅頭風と中身のバリエーションも甘いものからおかず系まで豊富だ。

「一通りちょうだい!」

「お、坊ちゃん太っ腹だね、冒険者は自分で稼いだ小遣いがあるのか。幼いのにえらいぞ!はい、ブランネージュ様のあんこ入りもう一つおまけ!」

「ありがとー」

「えーそれたべ・・あ、齧った、国王陛下の顔を」

「うん?美味いよ、父さんの饅頭」

「信じられない」

「クリスも食べる?ほら、あ、これはシュバイツだ」

くんくん

「カスタードだな、ほら」

「も~、じゃあ齧っちゃいますよ」

がぶり

「あぁ齧られたーいたたた」

「えーそれはないでしょう」

“きゃははは”

“おうじまんじゅうたべられちゃったー”

「シュバイツ殿下美味しいです。ほらみんなもどうぞ」

齧られた俺の饅頭に精霊ちゃんが群がっている。

“おうじあまい”

“おうじおいしい”

「よかったな」

「自分の顔を齧られているっていうのに」

国王陛下の饅頭を食べながら指に付いたあんこを舐める息子の王子。それをシュールだと言うクリス。

「だって、こんなにデフォルメされてんだもん、何ともないよ。もっとリアルなのだったら怖いけどね。生地もなんか懐かしい味で美味しかった。

これ、帝都のお土産に良いな、もっと買っちゃおうかな」

「まじですか」

「うん、まってて」

「おーいエルフのおっちゃーん」

「そんなわけで、自分の顔の饅頭をいっぱい買うんですよ」

「それはそれは」

リー二ング伯爵夫婦はクリスの話に終始にこやかだ。

俺が黒目黒髪の人間族の格好でいるのもクリスやナティエさんから聞いているのか、問われることもなく、普通にクリスの友達として接してくれているのがありがたい。

「この人間の顔で食べるなら平気でしょ?逆に意識される方が怖い。いまあの王子を齧ってるんだーみたいな」

「ウッ確かに」

餡子やクリームで甘くなった口の中を、出してもらったストレートな紅茶でさっぱりさせる。

「さて、シュバイツ殿下」

「はい」

改まった伯爵に呼ばれて答える。

「先だっては娘と孫二人を誘拐から助けていただき、また、孫のクリスの受験にご助力いただきありがとうございます」

「いえいえ、彼が頑張ってたからですよ」

「それで、学費の件ですが、儂からキチンと払いますので。こう見えても、ため込んでますのでね」

若々しい顔なのに儂って・・・。

「というより、使うところがないので貯まるんですよ」

ナティエさんによく似た顔で伯爵夫人が微笑む。

貴族というのは、領地を守ったり、政務をしたり、お国の大事なお役目もあるので、そのための予算や給金が国家予算から出ている。まあ公務員の側面もあるという事だね。その中でやりくりしたり、領民から税金を貰ったりして、国からの予算の足りない部分を補ったりしている。勿論、領地の特産物をよそで売ってお金を得る場合もある。この伯爵の場合は森の恵みで領民全部がほぼ自給自足出来るので、支出より収入が少し多いそうだ。

「そして、娘と孫二人を助けていただいたお礼を考えているのですが」

「ありがたいお話ですが、金品は必要ないのです。こうやってクリス達と、友達になっていただくばかりか、王子の自分に仕えると言っていただいてそれだけで本当に充分なのです」

「なんと、欲のない方ですねえ。さすがに国王陛下の息子さんでいらっしゃる」

伯爵二人からしたら、孫の連れだもんね。若々しいけど、確かに孫を相手にほんわかしている感じもする。

「自分は、文字さえ違う他の国で生まれ育ち、ガスマニア帝国に来てまだ一年半しか経っていないのです。しかもこのロードランダ王国にはこの夏訪れたばかり。

自分が一番欲しいと思っているのは、信頼のおける友人と知人です。お金とかそういうもので得られるものではないでしょう?」

「では、微力ながら、私たちリーニング家は、古いだけが取り柄の伯爵家ですが、ロードランダ王国では、後ろ盾になりたいとまで言ってしまえばご負担になるかもしれませんが、困ったことがあったらいつでも頼ってください。」

「それは、本当にありがたいお言葉です。

いつか、伯爵のご自慢の森を訪問させてください」

「ぜひ、お待ちしていますよ」

そうして、クリスのお祖父さんとお祖母さんと順番に握手をした。

クリスのお屋敷をお暇してまた屋台の並ぶ通りに出たところで、セイラードがカーリンと護衛のブリドとラスを連れて平民を装って歩いていた。カーリンの護衛には女性のアリサねえちゃんが付いている。

「あ、シュンスケ」

「あら、シュンスケ君」

「セイラード殿下、みんな」

「しっ、ここでは私のことも呼び捨てで!」

「じゃあセイラード」

「うむ、屋台を見て回っているのだ、面白いな」

「俺達もこっちの方見て回ろうと思ってて」

「あ、あそこ、なんか絵を売ってる」

「アルジル伯爵のお宅の前ですね」

「こんにちは、アルジル伯爵」

「おや、殿下いらっしゃい」

「今は冒険者でお願いします」

「はい分かりました、シュンスケ君とクリス君と・・・」

「カーリン、セイラード、この方はグリーゼ フォン アルジル伯爵。

伯爵、この女性はカーリン嬢、湖の向こうのラーズベルト辺境伯のお嬢さん。そしてこちらは、セイラード殿下。ガスマニアの第三皇子です」

「「アルジル伯爵。会えてうれしいです」」

「これはこれは、こちらこそよろしくお願いします」

「それにしても、伯爵自ら屋台に立たれているのですね」

「はい」

屋台には古本と、洋画が売られていて、そのうちの洋画の半分はほとんど同じような絵だった。

「これはひょっとして」

「もしかしたら、全部シュンスケ君じゃない?」

「カーリン嬢良くお分かりで」

やっぱり!

「こちらは、色々な画家が描いた次の展覧会のための習作だったのです、しかもご本人を知らぬうちに、国王陛下のお姿から想像で描かれているのです」

「たしかに、髪色とか、瞳の色が違いますね」

「それにお顔が国王陛下にそっくりだわ」

「国王陛下にそっくりで人間族で言う六歳児に仕上げるなんて、素晴らしいですな」

「そう言う魔法があるのですよ、大人の姿絵を見て、子供の年齢に遡った様子を見る、または子供の姿絵を見て、大人になった姿を予想するとか、男女の姿絵から間にお子さんがいたらどうなるかとか」

ポン!そんなアプリあったぜ!魔法もあるのか。白魔法かな?

“もうそうと、そうぞうを、ていちゃくさせるだけさ”

白色くんからの回答ありがとう

「でも、その魔法は大体外れるのではないでしょうか」

「そうですね、沢山の方の肖像を取り込んで合成する感じです。こういうようになりそうには出来上がりますね。実際は育つ環境によって変わってきますよね」

「じゃあ、ブランネージュ様のお姿だけでは少し違うってことね。だって、シュバイツ殿下はお母様にもよく似ていらっしゃるもの」

母さんとのツーショット写真を見たことのある彼女が言う。

「おお、カーリン嬢はシュバイツ殿下のお母様をご存じで」

「ええ、お会いしたことはもちろんないですけど、ラーズベルト辺境伯領の教会には立像としていらっしゃってよ」

よかった、まさか写真を見たとは言えないよね。

「ええ、そうなんですよ。ローダ様がお母様と言うことをみんな失念していたのです」

まあ、誰だって、国の王子の母親が神様だとは思ってないだろう、

「しかし先日、間近で本来のお姿を見させていただいて、シュバイツ殿下が神の子だと実感いたしました」

「え?色を戻しただけでしょ?」

「そうか、シュンスケは自分の光ってるのを見えないって言ってたものな」

「確かに魔法学部の初めの授業でもそう言ってたわ」

「たしかに、殿下は光り輝いていますよ」

屋台の下でみんなで俺の話で盛り上がっている。

「以前、私を助けに来てくれた完全密室でもそれは光っていて、周囲の様子が少し見渡せたもの。まあ、精霊ちゃん達も光ってたけどね」

そんなこともあったね。

「でも、今回皆さんがお姿を見る事が出来たので、今までの習作はもういらないと、ここで普通の肖像画として売ってしまって、画家たちは新たな作品に取り組んでいるのです」

「光って、魔力ではないの?ほら、魔力量が多すぎて常に漏れているとか・・・」

「うん?教授はオーラのようなものと言ってたけど、あれは見える人が限られているらしいぞ」

「そんな話は聞いたことあるけど」

「その、光ってるのがゴッドってことじゃないかしら。シュンスケ君の伯母さまも光ってらしたもの」カーリンが後半小さな声で俺にだけ聞こえるように言う。

そうだね、叔母さんたちはいつも光ってるよ確かに。やっぱりそう言う・・・

「では、展覧会の招待状は皆様それぞれにお出ししますので、是非いらしてください」

「「「「楽しみにしています!ありがとうございます」」」」

伯爵の屋台を離れ、また歩いていく。

「あ、さっきの人形焼きが又ありましたよ」

「ほんとうだ、ってあの店の人は」

「あら、ラーズベルトのギルドにいるドワーフの兄弟ね」

「インテルさんとゴードンさんだ」

「こんにちは」

「おう、お前さんたちは、シュバイツ殿下」

「しっ」

「おっと、すまねえ。あ、兄貴」

「その人が例のお方だね。そしてカーリン嬢久しぶりじゃ」

「お二人も出店をされているのですか?」

「ああ、屋台をするからと申請すれば、通行証が一割で入れたのじゃ」

「お二人は通行証は要らないんじゃないですか?いつも、今日も山がきれいじゃとか言ってらっしゃるじゃないですか」

「それはな、カーリン嬢、周りがみんな通行証が必要な中、わしらだけがしれッと入る方がじつは難しんのじゃ」

「気を使うものなんですね」

「もしかして、人形焼きの焼き型を作ったのは、ゴードンさん?」

「そうじゃ、儂らはほら、ハロルド様は窓越しじゃが見れたしの。デザインはあらかじめ起こしておったのさ。ムー様はタイナロン様のところから話は聞いておったし」

「それで、こんなに速かったんですね」

「種を明かせばそうじゃ」

と言いながら、みんなに熱々の人形焼きを配る。

俺とクリスもさっき食べたしアイテムボックスにも沢山あるけど、そんなことは言わずまた食べちゃう。あ、今度はカスタードのムーさんだ。

また、屋台を見る。

あ、かき氷。よく見ると、〈ガスマニア帝国帝都名物〉ときれいなフォントで手書きがされている。

「なんか、見たことのあるかき氷だな」

セイラードがつぶやく。

「シュンスケ殿が作ってたかき氷ににていますね」

ブリドも言う

「寄ってらっしゃいーガスマニアの帝都の海の家でも売られていたかき氷だよ~」

売り子はエルフのチャラそうな兄ちゃんだ

「ひとつくださーい。このパイナップルの」

「お、毎度。はい!」

「え?アリサねえちゃん買っちゃうの」

「どのぐらい再現されているか知りたいじゃない・・・だめだわ」

「私も買ってみた・・・うん、これは私でも作れる氷だな。先日食べた後練習したけどな。頑張ってもこのクオリティだった」

「どういう事?」

っていうか、かき氷の練習したんだ。

「なんか、氷が痛いわほら」

と言って、アリサにあーんしてもらう。

「なるほど、これは氷の粒が大きいんですね」

「あー坊ちゃんたち人間族だもんな。ガスマニアから来たんだ。実はこれは食べたことのある友人から聞いて作ってみたんだよ」

「そうなんですね。あ、サワークリームに楓シロップとウォールナッツのトッピングなんてあるんだ!おいしそう。お兄さん、かき氷は自分で作っちゃうので、トッピングだけしてもらっていいですか?お金はこれ、みんなの分。器も貸してね」

「?ハイいいですよ」

カウンターの隅に、八つ分の器を置いてもらって、スマホの杖アプリのマルチタスクを起動しながら一気に全部に氷の山を作る。うん、富士山みたいな世界樹の形♪

「一つ多くない?」

「これにトッピングお願いします。

・・・ありがとう。じゃあ一つはエルフのお兄さんに」

「え?おれに?」

「食べてみなさい。本場のかき氷をね」

「お兄さん、帝都のかき氷はこの子が始めたんですよ」

みんなの言葉に焦り出すチャラいエルフ。

「そ、そんな。勝手にパクッてすみません!」

「シュンスケはお人よしだな」

「でも、このトッピングは思いつかなかったなー」

「「「「確かに、美味しい!」」」」

「この氷はたしかに舌触りが違う。道理でガスマニアから来た人の反応がいまいちだったんだ」

「そう、ふわふわかき氷。帝都は暑いからすぐ溶けちゃうんだ、王都の方が向いているかもしれないね。でもお兄さんはトッピングを工夫してくれたから嬉しいな、屋台が終わったら食べられないのかな」

「いや、俺はここの冒険者ギルドの料理人をしているんだ、夏のデザートに加えようかと思ってて」

「じゃあ、また食べられるね!」

「えーシュンスケならわざわざギルドに行かなくても」

「でも、新しいトッピングが出るなら食べたいじゃない。ね?」

「そうだな、シロップやトッピングは研究の余地があるからな」

最近料理が趣味だというセイラードもつぶやく。

「かき氷が、シュンスケさんが王都に通う理由になるならそれはそれでいいですね」

クリスは違う方向で賛成する。

「なるほど。ちゃんとお父上のための仕事もしてやれよ」

「お兄さん、新しいかき氷のトッピングや、オリジナルのメニューとかが出来たら、ガスマニアのギルドか、ここの王宮に教えてくださいね」

「王宮?」

「お知らせの手紙でも入れてくれれば!」

「わかりました」

「・・・あれはまだ分かってないな」

「?」

「シュンスケの正体を」

「しー、それでいいの!」