軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

30【ガスと酸素あるいは炎と光のデュエット】

理科で、ガスバーナーを使ったのは中学一年生の初めのころだっただろうか。

青い光が、キッチンのコンロと一緒じゃんってすこしがっかりしたことを覚えている。

「だから、火魔法っていうけど、生活の中で火を維持するのに何がいるか分かるでしょ?」

午後の一コマ、ほかの生徒は普通授業中だが、一年生の普通授業は入学後すぐのテストで

合格し、勉強せずに終了している。俺は、同じく普通授業を終了しているセイラード第三皇子と、火魔法の効果的な使い方についてオープンカフェの一角で論議をしている。

こういう勉強の議論やそのレポートなどが、さらに卒業の加速に役立つのだ。

ちなみにお互いに六歳と十歳である。日本人からしたら、おいそれとマッチやライターなんかで火遊びなんてすれば、目を吊り上げた大人にぺんぺんされるところである。

「火は火魔法一択だろう?」

これだから上流階級のお坊ちゃんは。

「暖炉で火魔法の魔法使いがずうっと魔法を使ってるわけじゃないでしょ?」

「魔道具で維持するのか?」

「違います。例えば乾いた木は燃えますよね、この紙は木材でできてます。」

と言って、ポリゴンで漢字練習に使ってた紙切れを一枚出す。藁半紙っぽいので、火はつきやすそうだ。それを小さく折りたたむ。

今日は腰につけているウエストポーチから 陶器の真っ白な器も出す。この器はもともと五組セットだったのだが、母さんが何かでひっかけて盛大に割っていたのを思い出す。

一組しかないので食事には使えない、ことはないだろうけど、今はこういう魔法の実験用に使う専用だ。

器に、紙切れを入れる。

「これもこれも、魔道具ではなく、普通の日用品ですね」

「そうだな」

「それからこれ」

キャンプで使う火打石みたいなものをだす。マグネシウムの棒でできていて、擦るとすごい火花がでるんだ。前にキャンプ用に買ったやつ。

「これはマグネシウムって金属でできているんですけど、海水や、俺たちの体にも必要なミネラルの一つ。これを擦ると火花が出ます。魔道具ではないですよ。ラスさん」

護衛の一人のラスに渡す。魔道具はそれそのものに魔力があるので、魔力を感知出来たら、魔道具かどうかは分かる。ラスは、護衛として、魔力を感知するための魔道具を持っている。

「確かに、この道具には魔力を感知しません」

「でしょ?それで、ラスさんは火属性ないですよね」

彼は風と水の属性持ち。しかし魔力が少ないから騎士学部らしい。護衛もしなくてはいけないしね。

「はい」

「その棒を、もう一つの板みたいなので勢いよく擦ってください。そちらの何もない地面に向かって」

「わかりました」

ガリガリバチバチバチ

「「おおっ」」

「きれいな火花が出ましたね」

「これは」ラスが自分で火を起こせたことにびっくりしている。

まさか、上級貴族は属性越えた作業は魔法が使えないとできないとか思ってる?

「じゃあ、この器の中の紙の上で同じことをやってみてください」

テーブルが燃えたら困るので、石畳の地面に置く。

「はい」

ガリガリバチバチバチ

「おおっ紙が燃えたな」

「でしょ?この一連の動きに魔法は存在しませんよ」

「なるほど」

「で、今度はこれを。これは器と組になってる陶器でできた蓋です。これをまた、ラスさんがその炎に蓋をしてください」

今度は器にジャストサイズの蓋を渡す。ま、茶わん蒸しの茶碗と蓋。

「蓋を開けて」

「火が消えた。一瞬だな」

「まあ、紙もちょっとしか入れてないですけど」って言いながら燃えカスを魔法で手を使わずに魔法で取り出す。

「この部分はまだ燃えるはずです」まだ燃えてない部分が残っている。

「というわけで、火を起こすには(ここではとりあえず)火花、炎を維持するには燃えるもの、今でいうと紙ですね、そして、空気の中のとある気体、酸素と言いますけど、それがあれば魔道具も不要です。だから、どの家にも、魔法使いがいなくても、かまどや暖炉があったりするのですよ」

「ほうほう、なるほど。私はそんな生活での基本さえいまいち解ってなかったということだな。うむ。」

周囲に便利なものや優秀すぎる人達に囲まれすぎていたらそうなるだろうな。

俺だって、わざわざキャンプに行かないと原始的な火起こしも分からないもん。火花出す道具もちょっと今風の便利グッズでもあるし。ちょっとしたバーベキューならライターで済ませたりするしね。

「で、次ですが。一口に炎と言っても色に違いがあるでしょ?」

左の人差し指にオレンジ色っぽい黄色の火を灯す。ろうそくみたいな。

「また、お前は詠唱なしで」

「俺は想像力がすごいらしいので」

この世界も魔法には詠唱が要る。現象のイメージが明確に出来ないときに詠唱の力を借りるのだ。

俺は燃えるものとして、大気中から炭素をかき集めて燃やす想像をするのだ。

「こういう炎もありますね」

右の人差し指でも同じ炎を出す。

「同じ炎だな。あ、だんだん青くなっていく」

この炎に酸素を意識して供給すると、ガスバーナーのちょうどいい炎になるのだ。

少しパチパチと音が伴っているのも分かる。

「青い炎のほうが安定しているな」

「ろうそく色のほうが風で揺らいでいますね」ラスも感想を言う。

一度炎をキャンセルしてまた次の道具を出す。

「ではラスさん、俺の投げナイフがここに二本同じものがあります。ギルドでもらった、普通の鉄製です。この二本の先を炎であぶってみてください。」

そうしてまた両人差し指から色違いの炎を二つ出すと、ラスが二本をそれぞれの炎に近づける。

「できるだけ炎の先のほうがいいですよ」

「わかりました・・・ああすごい。青い方の炎の勢いが分かります。」

「おお、青い炎の方のナイフが赤くなっていく、さらに黄色く。これは・・・青い方が高温なのだな」

「正解です!」十歳にしてはと考えると素晴らしい答えだぜ。俺は中学で習ったんだもんな。

二本の投げナイフに水をかけて冷やす。

ジュー

色が変わった方が激しく水蒸気を上げる。

「なるほど、ただ単に火じゃなくて、高温の炎にすれば効果的なんだな。」

「はい、それに、赤や黄色の炎では、体に悪いガスが発生するので、煙突のある暖炉じゃない、トンネルなどでは危険なのです。

で、高温にするには魔力を増やすのじゃなくて、空気を意識するのです。」

「ほうほう、よし、ラスの風魔法と組み合わせてみよう。私も青い炎を出したい!」

「はい!」

「シュンスケは、全属性と聞いたが、それぞれの属性の事にも細かく習得しているのだな」

ラスと一緒に護衛でいるブリドが話しかける。

「まあ、魔法の事以前に、理を知る必要がありますよね。で、それを知れば詠唱は要らなくなるようですよ。イメージがしやすいですからね。平民の生活の中にはヒントがいっぱいあるんです。何でも自分でやりますからね。」

「なるほど」

ただ、平民はみんな、魔力はあっても使えるほどの量がないらしい。だから、平民から魔法使いになれるのはごくまれで、親や爺さんとかが貴族の筋ならたまに魔法使いが出てくるらしいけど。

この学園の普通学科の授業は、日本式に言えば、国語と算数と社会だけだ、理科がない。

今はすごく思う。理科や物理って大事なんだけどなー。特に魔法の勉強には。先に属性に走るのはちょっとどうなんだろう。でも教授のやり方にケチをつけるわけにもいかないしね。自分で気付けってことなんだろうかね。でも理科なんて自主学習で出来るものか?

俺的には五属性の中だっだら光属性が一番難しい。この世界の光属性は、つまり物の色の見え方をコントロールするということだ。日本では色彩学とかカラーコーディネートとか、生活を豊かにするための色の世界という事だった。

大学で、インダストリアルデザインを学ぶ傍ら修めたいジャンルだった。光の三原色とか、RGBとか。魔法に応用すると、幻影を作ったり、姿を隠したり、ごまかしたり。

お?じゃあ、大人の姿になれる?むりか。

考察の中にはまっていく。

“いろの はなしならまかせな”

この子は白色ちゃんだな。白色ちゃんも男の子タイプ。

今日は真っ白のつなぎ姿。バイクとか似合いそうでカッコいいよ

光の色で白はすべての色を内包しているってことだもんな。

「俺に色々教えてね」

“うん!”

光魔法は、エンターテインメントに向いているんだろう。ただ、遠くの風景を投影するなら空間魔法との組み合わせ?

目をつぶって屋敷の自分の部屋を意識する。ああ、見えた。侍女のミアさんが洗濯物をクローゼットに入れてくれている。このメイドさんは、うん、アリサねえちゃんじゃないね。ねえちゃんは・・・あっ!なんで俺のベッドで寝ているの!昼寝ぐらい自分のベッドで寝ろよ!!ほら、ミアさんに怒られてるじゃん。ってなんだその俺にそっくりな人形は。足に挟んで寝るな!あんなの・・・あんなのがあるならもう俺の布団に来なくていいんじゃん。

自分の部屋を覗きに行って疲れた俺は、カフェのテーブルにお手製のパウンドケーキを出す。学校のカフェですからね。持ち込みオーケーです。でも全部持ち込むのも気が引けるから。テーブルに置いてあるベルを鳴らす。

カフェのスタッフが来たので、紅茶と、ケーキ皿とフォークだけを四人分頼む。

最近、屋敷の薪オーブンが上手に使えるようになったんだ。これも火とか風の魔法のおかげだよね。ま、精霊ちゃんも手伝ってくれるけど。

パウンドケーキは五つに切る。お皿ももう一つ自前のを出す。

「シュンスケ殿、ここには四人しかいないですよ」

「まあね、でももっとたくさんいるんだよ」

「ラスはまだ見たことないんだな」

殿下は得意げだ。

以前に温室で、ゼリーをスプーンマドラーで食べさせていたところを殿下に目撃されて、俺が妖精を餌付けしているのがすっかりばれている。

紅茶が来て、パウンドケーキを四人に振舞う。

「お、柑橘のジャムを入れたのか!うまいな」

「ええ、旬ですしね。ジャムも俺が作ったんですよ。

料理は火属性魔法の訓練にもってこいだったりするんですよね」

って料理をする言い訳をしながら、五切れ目のケーキを細かく切る。

この人たちなら声に出してもいいか。

「おやつだよー」

“わーい” “わーい” “わーい” “おうじのおかし すき!” “おれもー”

細切れのケーキが浮かんでいく。

「これは・・・」ラスが飛んで行くケーキを目で追う

「あ、そこはやめて」

黄色ちゃんが定位置の俺の肩でケーキをほおばる。

“あたしはここがいいの”

「ははは、肩に破片がこぼれているのが見える」

ブリドには受けてるけどねー

「食べている間は肩をはらえないのがつらいな」

殿下も笑顔だ。

「まあ、可愛いからいいんです」

「私もいつかお会いしたいな。最近シュンスケの周りでキラキラ光っているのが見えるときがあるんだ」

前から殿下が言う。まあ、存在を感じられるだけでもすごいことらしいけどね。

甘いものをあげると分かりやすいんだよなー。

「殿下も可愛いもの好きですしね」

ラスが殿下の好みを暴露する。

「まあな、姉上にも刷り込まれたんだけどね。〈可愛いは正義〉ってやつ。

そういえば、その姉上が、お前に会わせろってしつこくて。私はなんとか断っているんだ」

お姉さま?皇女殿下?

「ありがとうございます。今後も断っていただけると」

「うむ。シュンスケは何かと忙しいからな。姉に会っているぐらいなら、私の話し相手をしてもらいたいしな。」

殿下たちとお茶でまったり。

「たしかに、お二人は絵になりま」

「あっ、しー口に出すなブリド!確かに女生徒の先輩たちにはこのツーショットがとか言われているけど!」

ラス?何のこと?あとで呼び出すよ?