軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

25【体育というか、西洋風の武術】

東京の某市で生まれ、保育園の年長さんから中学校まで、近所の道場に通って剣道にいそしんでいた(部活はしていない)俺でも、西洋剣術はさっぱりわからなかった。待てよ?なんかそういう動画ないのか?って、スマホで出てくる動画をちょっとだけ見たけど・・・あんまり実践向きじゃないような気がする。俺の超細腕には無理だ。でも、このままでもナー。

部屋で、母さんのウエストポーチから、色々出してみる。本当に色々あるんだ。

竹刀類は普段使っている。ほかに、和風の槍とか薙刀とか、長棒とか。この際練習用のやつはやめとこう。

銃刀法に違反しそうな獲物の数々。一本ずつ並べながら、いちいち心の中で母さんに突っ込む。

ねえ、なんでこんなの入ってるの?俺たち一応日本人だったのでは?個人番号持ってたよねぇ。

まずは、日本刀。三本もあるのだ。

剣道のついでに齧ってた・・居合練習用。これは使えるけど、刀身が外せないやつ。

えい、腰に持って鞘から抜いて少し振ってみる。体が小さくなってるのに、無理なく抜けた。十七歳の体格じゃ、もうちょい長くても扱えたのかも知れないな。ま、抜けるならよかった。

ふつうの日本刀も入ってるねえ。これはちゃんとバラしてお手入れできるやつ。あ、お手入れセットあった。居合のと同じ長さ。よし、こっちのも抜ける。冒険者になったら、これをメインにしようかな。

もう一つ、日本刀。なんだこれは、夏休みとかのお昼の再放送で観た、暴れん坊のあの方が白馬の上で腰に差してるやつと同じようなのでは。柄や鞘が白い。刃があっても、どこかの床の間のお飾り用ではないのか。これは、格好つけるとき用に手入れしといて・・・死蔵だな。

次に西洋風の剣。

母さんのコスプレ専用かと思ってスルーしてたんだけど、鑑定したら厨二病っぽい文字がだらだら出てくる。

とりあえず色々出して、持ち上げては振ってみる。

うん、ここいらのロングソードってやつが日本刀に重さが似ている。

何故か二桁本もあるロングソードの中から一つを選ぶ。さっきの刀より刀身が短め(反りがないから、長いと鞘から抜けなかった。しくしく)で、グリップは両手で持てる長さ。見た目は一番地味っぽいやつだ。子供の体格のやつが、派手な剣を持ってたら、もうコスプレイヤーより酷い。おもちゃで遊んでるって感じ。

そう、今は明日の準備中。

小学生の頃には家を出る寸前にしてたからさ、うっかり寝坊した時は一日中悲惨だったね。忘れ物だらけで。

さすがに二周目の学生生活なので、準備が大事って分かってます。

本番でも、ポーチに何もかも入ってたって、いざという時、何を出すか迷ってたら死ぬかも知れないしね。

これで明日、学園の授業で、

「剣は持ってきましたかー?」の先生のセリフにちゃんと

「はーい!」って言えるぜ。

それにしても、一つド派手なミドルソードがあるんだ。

鑑定すると〈風の女神のミッドソード、 所有者:シュバイツ フォン ロードランダ〉

所有者って、今初めて見たんだけど?

キラキラした鞘を抜くと、刀身も結構キラキラです。表面に彫り込まれた細かい地模様もランプに反射して光ってる。

刃の根本に試験管の様な空洞のガラスの様なものがはまってて、キラキラした黄色い粉が入っていて、全体的にサイリウムみたいに光っている。魔法剣ってことかな?

最近、魔力の操作を修了したんだ。これも、お湯やら氷やらをいっぱい出したおかげであるとは教授のお言葉。あんなの、侍従や侍女の仕事で、貴族本人はしないか。

で、ほんの少しキラキラ剣に魔力を惑わしてみた。

好奇心に抗えないよな。子供だからな!

試験管から音がする、キラキラも動く。

シュー

剣の刃の周りにも風が纏ってるのが分かる。

「おお。やばい、カッコよ」

イタイと思いながらも男の子の心をくすぐられている。こんなオモチャ、自慢したいよな。そのうち、この剣に似合う厨二病な必殺技を考えたい。

コンコンコン

「ぼっちゃま、晩御飯ですよ」

やべ、アリサねえちゃんだ。

「はーい」

ズシャッ ガタガタッ

「「あ」」

部屋の壁際に置いていた俺の読書用のお気に入りの椅子が袈裟懸けに切られて崩れ落ちた。

マルガン領で、通りすがりの蚤の市で見つけた椅子だったのに。アンティークの一点ものって店員のおやじに言われたのに値切り倒してほくほくで買ったやつなのに!(鑑定したらそうでもなかったけど)

まあ、椅子の向こうは壁や窓があったけど、何もなくて無事だった。

「よかった、椅子だけで」くすん

「そうね、でも何なのその剣。すごいわね。聖剣?」

「まっさかぁ。聖剣って秘境とか、ダンジョンの奥の方の岩とかに刺さってて、勇者とか特別な人しか抜けないんでしょ?」って俺の勝手な先入観。

「そうなの?」

「さあ」

「あぁ、いつかあたしも活躍して、ものすっごい剣を持てたらいいな」

アリサねえちゃんにはレイピアが絶対に合うな。

そのうち、母さんのコレクションから差し上げても・・いいですか?

「このすごい剣はいつか、お金に困ったときに考えるように持たされているのかもしれません」

って言うと、

ヴンン・・・

って音が鞘に納めた剣から聞こえる。薄ら光ってるし、微妙に振動している。

「シュンスケ、この剣怒ってない?」

鞘の中でシューって聞こえる。

「え?まさか。

ごめん、ごめん。売ったりしないよ!大事にするよ」

風の女神の剣をなだめてみる。

異世界ものにはよく、意思のある道具が出てくるもんね。

すると、分かればよろしい って言っているのか、二度ほどチカチカと点滅してから静かになった。

「ふう。」

俺はさっさとポーチにしまう。当分あれの出番はないな。

翌朝、最近二時間ぐらい早起きしている俺は、屋敷のビーチで裸足で走り込みをして、大きい方の竹刀で素振りをし、その後居合刀でも素振りをした。

居合刀で、鞘から抜く練習を念入りに何度もした。

腹筋とかもしてるんだけどね、全然割れないし、上腕も、こんなに素振りしているのに、子供特有のほっそい肩に腕にお腹なんだ。するーんって感じ。見た目が弱っちぃ。俺のシックスパックは駅前の歩道橋に置いてきたんだろうか。

「シュンスケ、頑張ってるじゃん」

振り向くと、ウリサ兄さんが笑顔でやってきた。彼も視界の端で走りこんでいるのが見えていた。ゴダは眠いぜと言いながら、もう出かける格好でテラスに出ている。これから漁の手伝いで、ギルドに行くそうだ。一人で馬小屋へ向かっている。

屋敷では、ゴダのおかげで、魚料理が多めだ。「ありがたいことです」とセバスチャンも喜んでいらっしゃる。

「ゴダ―、気を付けてねー」

「おー」

「行ってらっしゃーい!

「がんばれよー」

「兄ちゃんたちも―」

うん、今の挨拶で目が覚めたかな?今日はどんなお魚をお土産にもらってきてくれるかな。

「シュンスケ、ちょっと打ち込みしないか?」

「いいですよ」

ウリサ兄さんが木剣を一本俺に投げる。

砂の上で、お互い裸足で。

「行くぜっ」

「はい!」

しばらく打ち合いをして、屋敷に戻る。

砂だらけだから直接オーシャンビューな二十四時間風呂状態の浴室へ。

今日も、微妙に俺のほうが勝った。

「シュンスケは日増しに剣も上達するな。すごいぜ」

俺の頭をガシガシ洗ってくれながら、ウリサ兄さんに褒められる。朝からいい気分だね。

たしかに、初めのほうは、洋剣の、特に両刃の剣を想定した打ち合いが分かりにくかったけど、木剣なら、竹刀と一緒で、刃なんて考えなくていいし、最近では剣道の応用って感じにさばけている。剣筋みたいなのを見る訓練が身についていたのかな?

ウリサ兄さんは、俺と同じゲール師匠についていたみたいだけど、ほとんど我流だし、だから逆に剣筋を見るのも難しい。

本当はチョットだけ俺のほうが稽古をした期間が長いんだよね。剣道だけど。それをウリサ兄さんは〈剣のセンスがいい〉って言ってくれてるのをありがたく受けている。

お風呂で、背中を流しっこして、一日が始まるなんて。今日も贅沢だ。

学園では今日は魔法は封印で、アナログな剣術の授業だ。

殿下がお相手してくれたがったが、もしものことがあっては恐ろしいので、丁重にお断りして、騎士学部所属の殿下のご学友兼護衛の二人のうちのお一方にお願いした。

この方はブリドさん。

皆より少し年齢高めで十二歳。なのに百八十センチもある高身長。俺と六十センチ差。タッパだけでも大人と子供だな。

ウリサ兄さんよりちょっと高い。それにマッチョだ。まあ、護衛は見た目の頑丈さも大事だろう。殿下を守る盾にもなれるお方だ。

木剣を構えて、対峙する。おれは、朝から同じような打ち合いをしたのさ。

それに、剣道場でも、子供のころから先生相手に練習したんだ。大きい相手なんて怖くない!

しかも、足は砂地じゃないから、めっちゃ安定している。欲を言えば裸足のほうがいいのだが。

「はじめ!」将軍職を退官した体育もとい騎士学部教授が叫ぶ。

「「やあっ」」

こういうのはね、手抜きをしたり、舐めたら怪我をするから。全力で!

カン カン カン ザシュッ

脚が飛んできた。

洋剣術はキックや体当たりも入り混じる。この体格で受けたら吹っ飛ぶかもしれないから、

すかさずジャンプする、なんだっけ八艘飛び?

「必殺牛若丸!」なんちゃって、恥ずかしいから口には出しません、今作ったわざの名前。動きは普通だけど。

ピー 打ち合い終了のホイッスル(があるのよ)が聞こえた。

「やたっ!」

また、勝てました!

「くそっ。なんで」

「シュンスケよくやった」

「ありがとうございました」

「シュンスケ、ブリドの敗因は言えるか?」

「はい」

ブリドさんは、騎士学部だけあって、すごく紳士な人なんだ。たった今負けた、年齢の差も身長差もある俺の言葉を待ってくれている。

「えーっと、ブリドさんは、背が高くて、がっちりしていて、武術には恵まれた体格をされています」

周りの生徒もみんな頷く。

「ただ、大きいから、剣を振りかぶったりする動作も大きい、それが俺には少しゆっくりに見えてしまうのです。」

「「なるほど?」」

「だから剣の動く行き先も予測できる。それで俺は、先回りして避けるとか、懐に入ってしまうとか、力と体格で不利な分を、スピードと小回りで対処しているのです」

「「ふむ、それでどうすればいいかアドバイスもあるか?」」

ブリドさんはともかく、先生まで俺のアドバイスを利用するのは、ずるいですよ。なんて思いながら、殿下のためにもこの人には強くなってほしいので、続ける。

「ブリドさんはもう少し振りをコンパクトにすることを心掛けて、剣ももう少し軽いものでスピードを上げる方がいいかもしれません。そうするときっと周りもよく見えてくると思います。」

「「「おおっなるほど、よくわかった。」」」

殿下と三人の声が返ってきた。

ともかくブリドさんと握手。

「こんな小さな手に負けるなんて、おれももっと精進しなければ」

「ふふ。また、お相手お願いしますね」

「次は勝つ」

剣道のように試合後の礼。

「「ありがとうございました」」

わーぱちぱちぱちぱち

「シュンスケ!すごいな!」

殿下がほめてくれる。きれいな顔で笑顔で褒めてもらうと、ご褒美ももらった感じだよな。

「殿下、ありがとうございます」

「なあ、シュンスケは平民と聞いたが、将来私の右腕になってくれないか?」

「殿下・・・」

「まあ、私は三男だからな、兄上たちの補佐の補佐ってところなんだけどな。場合によっては外交のために婿入りだ」

どこかラノベの姫様のようなセリフに、齢十歳なのに哀愁漂わせちゃダメじゃん。でも。

「申し訳ないです。俺は、卒業後は、長の旅を予定しているのです」

「そうか」

俺は成長遅いんだから、何十年も付き合えないのさ。ばれちゃうじゃん。

「でも、今は精一杯ご学友でいたいです」

「そうだな。卒業まで、いろいろよろしくな」

「はい!」

「おれも、学友だしな」

「ブリドさん!もちろんですよ」

俺は確実に学友を増やせている。そんな実感がある。

毎日充実した異世界学生を送れていることに、不思議な自分の運命に感謝していたりするのだ。