軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

14【異世界の夏が来た!】

七月。異世界に来て初めての夏を迎えている。俺の感覚では春を飛ばして、冬から夏だったけどな。

ガスマニア帝国のポリゴンの町の日差しも強くなっている。

俺は、野球帽は被っているけど、ランニングスタイルのシャツと、短パン姿で街を駆け回っていた。

ここにも四季がある。けど、梅雨がなかった。多少の雨とか降るけどね。この世界に来た四月からずっと、おおむね晴れの日が続く。

薄着になった俺はすごく日焼けをして、昭和を紹介した番組の子供のように真っ黒だ。この世界には日焼け止めとか、日よけの概念はお貴族様か、豪商の奥様だけらしい。もともと褐色の肌の人も多いしね。お貴族様でも、男性は日焼けしても平気な人もいる。ギルマスのドミニクとか。まあ、デスクワークが多すぎて、移動の乗馬の時ぐらいしか焼けないらしいけど。それに、貴族はどんなに暑くても長袖長ズボンなんだそうだ。

窮屈そうだな。

それから、ギルドの勉強会はひと月で俺だけ先に卒業してしまった。大人は冒険者とかしながらだから集中して勉強なんて難しいよな。

俺はもう図書室の本を読み始めていたし、計算は数字と記号が分かればできるもんね。一応、そろばんの経験もあるしね。ギルドの帳簿をチェックしたりするお手伝いもいい小遣い稼ぎなんだ♪

それで、勉強会費のおつりだと言われて、小金貨四枚と大銀貨五枚が返ってきた。っていうことは、あのネックレス五十万相当?だったってこと?やっぱり、物の価値がすごく違うのだな。

六月ぐらいから半そでだったので段々と日焼けはしていたんだけど、人間族に姿を変えるための黒い石を外すと、あら不思議。色白なエルフに戻っちゃうんだ。

身分証や石、ひもに汗が付いたので、それらを外して洗い、ついでに耳長のままでシャワーを浴びていたら、アリサにずるいってすねられた。

なので、彼女にはポーチに最初から入っていた未開封の日焼け止めクリームを進呈した。海水浴でも防げるとうたっている、最強のやつ。それをやさしく落とすクレンジングとソープも。

それで、アリサが日焼け対策をしだす前までの日焼けしたのを何とかしようってことで、柑橘系のフルーツを買って、毎日絞って飲んだり、剥いて食べたりさせた。割と酸っぱいのでビタミンCはあると思うんだよね。でも、酸っぱいから、リンゴジュースとミックスしたり、サラダのトッピングにしたり、肉料理のたれ用にブレンドしたりした。効果がすぐに実感できないのはあるあるなのだけど、

「美容にも継続は力なんだって。母がよく言っていた」と言って、アリサの食生活に取り入れるついでにみんなで食べる。

脂っこい肉料理にレモンはさっぱりして美味いもんね。

そしてそして!俺は先日、個人的に素晴らしいものと出会って、興奮していたんだ!

ギルドのレストランや孤児院の厨房には、青いぽっちのカランの蛇口があるんだ。蛇口の出口が他のより直径が倍ほど太い。で、これに俺が触れると、なんとロックアイスがゴロゴロ出てくるんだ!この蛇口は専用の水のタンクにつながっていて、一度沸かした湯冷ましを入れる仕様になっている。ウォーターサーバーのゴツい感じのフォルムだ。

生水をそのまま飲むのは厳禁だもんね。

ライ先生に「ちょっとやってみて」って言われてチャレンジしたら、まあ、出来ますよね。全属性ですから?

赤いぽっちは火魔法だったけど、青いぽっちは水魔法に反応するらしい。

これから暑くなるし、いいじゃん!

俺はいろいろな冷たいものに思いをはせて涎が出るのを堪えるのだった。

ただ、火属性もそうだけど、水属性のある職員が、ギルドにも孤児院にも今は居ない、前はもっといろんな魔法属性の職員がいたらしい。職員以外に町の人も。だからそういう道具があるんだそうだ。

そんなわけで、俺はしょっちゅう厨房に駆り出されていた。夜中まで氷出し係をしていた次の日は、孤児院で赤ちゃんと一緒に昼寝させてもらってたけどね。

冒険者ギルドで、山ほど氷を出し、エールを樽ごと冷やして提供し始めた。

冷えた発泡酒は美味しいんだろうな。まだお酒類は飲んだことないけど。

あとは、アルコール度数の高い、お酒をロックアイスの上から注いで入れて、ちびちびと飲むなんてのも、渋いおじさんたちに流行している。

お貴族様のドミニクとかも、ロックアイスだけの入ったグラスをもって自室に行くのだ。

自分の秘蔵のお酒を楽しむんだろうな。大人っぽくて渋いぜ。

こんな道具があるってわかってたら、発熱したシト君をもっとよくできたのにね。あの時はすぐに熱が下がったから良かったけど。

そんなこんなで、青い蛇口をひねりっぱなし。

そのうちに、いろんなタイプの氷が出せるようになってきた。

氷の姿をイメージしながらひねったらイメージしたようなものが出てくるんだ。

霙みたいなもの、細かめの氷、蛇口と同じ太さの棒のような形の氷。手袋した片方の手で、下に付く前にぽきんと折る。

それで、パウダースノー状態の氷も出せた!これには自分でも大興奮!

パウダースノーを器にこんもりと盛って、蜂蜜と山羊ミルクをブレンドしたソースをかけてスプーンで掬う。

んー。ハニーミルクかき氷!うまいぜ!

もちろん、ギルドの期間限定メニューにされました。

売り上げの一部は俺の小遣いになるらしいので、俺も張り切ってご奉仕しました。

トッピングに、葡萄やメロン(のようなフルーツ)の角切りも付けて、特製かき氷バージョンもありますよ。

孤児院や施療院では、部屋の温度調節に氷を使う。氷を大量に入れた桶を風上などにおいて、部屋の空気を循環させる。エコな空調だな。

氷が出せないときは、井戸水で対処するらしいけど、すぐにぬるくなるので、あまり効果はないそうだ。

おこづかいを貰いながらとは言え、ギルドで遅くまで働いているので、昼ご飯の後は強制的に昼寝タイム。

なかなか寝付かない赤ちゃんをトントンしながら添い寝する事もある。可愛くて、良い匂いで、幸せなひと時だ。

今日は、他にもトントンされに来た猫人族のマツも添い寝。この子の場合はトントンじゃなくて猫耳をモフる。ゴロゴロ聞こえて、俺も癒されてたりして。

そんな俺とマツや赤ちゃんの昼寝をニコニコしながら見守るシスターの気配もしていた。

7月のある日、ウリアゴの三人から海へのお誘いがあった!

「ドミニクのおっさんが、夏の間帝都での領主&代官会議があってついでに休暇を取るらしい。その往復の護衛の仕事を頼まれたんだ。

行きと帰りの間はひと月あって、その間に海の家の仕事もするんだ」

「わー行きたいです!」

教会から正面の彼方にうっすら見えている海!スマホのマップだと直線距離で七〇キロ、荷物もあるし、途中は森を避けたり川を迂回したりして宿に泊まりながら三日ほどかかるそうだ。街灯がないので、昼間しか動けないからね。

野宿はしなくていいらしい。

「うっみの家ー♪」とルンルンで、母さんのポーチから、海パンを出し、ゴーグルを出し、ビーチボールや浮き輪、そのほかにもなぜか俺が自分でバイトして買ったボードとかも入ってた!を出して、膨らむか、穴が開いてないか確かめたり、汚れを拭ったりして、出発を待った。

いったん一通り広げて、膨らます分は膨らんだままで、ポーチに入れなおした。

子供用目薬が、なぜか消費期限以内で入っていた。(クリスマスイブで、こっちに飛ばされる日から一年半分あった)

そうして、異世界のビーチへの期待も浮き輪のように膨らむ一方だった。

見た目もちびっこなので、わくわくした気分を隠すことなくその日まで過ごしていた。