軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第64話:VSピー・マンと楽しいBBQ

『食実る豊穣の地』。そこには、今までと同じ野菜の人型?モンスターではあるものの、大きさが他を圧倒するモンスターがいた。

カイトたち一行の前に立ちはだかったのは、このダンジョンにおける生態系の頂点、そして「最強の食材」として君臨するモンスターだった。

「来るぞ……。全員、構えろ!」

カイトの鋭い声が響くと同時に、地響きと共に巨大な影が姿を現した。

ピー・マン。

全長三メートルを超えるその巨躯は、艶やかな深緑色の皮膚(あるいは果皮)に覆われており、丸々と太った胴体からは、太木のような筋肉質の四肢が生えている。これまでの人型モンスターたちが一・五メートル程度だったのに対し、ピー・マンの放つ威圧感は別格だった。

「……デカすぎでしょ。あれ、本当にピーマンなの?」

田中が頬を引きつらせながら杖を構える。

ピー・マンは「ピィィィィィマァァァン!!」という、およそ野菜とは思えない野太い咆哮を上げると、その巨体に似合わぬ瞬発力で地面を蹴った。

「佐藤、正面だ! 」

「任せろ!【重圧砕波】!」

佐藤が剣を構え、突進してくるピー・マンを正面に地面に剣を叩きつける。

ドゴン!! と音が響き、衝撃波がピー・マンに向かって突き進む。

その一撃を受けて足を止める。

「今だ、ティロフィ!」

「グルゥァッ!!」

上空で待機していたティロフィが、急降下爆撃のような速度でピー・マンの背後を襲う。その鋭い爪が深緑の背中を切り裂こうとした瞬間、ピー・マンは身を翻し、その巨体で「回転体当たり」を繰り出した。

ドゴォォォォン!!

ティロフィの巨躯とピー・マンの質量が激突し、凄まじい衝撃波が草原の草を躍らせる。

「……隙あり、です」

衝突の余波で一瞬動きを止めたピー・マンの懐に、白銀の閃光が滑り込んだ。イストだ。

彼女の白き剣が、鋭さを伴った斬撃でピー・マンの体を切り裂く。しかし、ピー・マンは驚異的な再生能力(あるいは瑞々しさ)を持っており、傷口から溢れ出した緑色の汁が即座に凝固し、傷を塞いでいく。

「田中、火力を集中しろ! ピー・マンは熱に弱いはずだ!」

「分かってるわよ! 【プロミネンス】!!」

田中の放った魔法は、対象を中心に地面から炎の柱が噴出する、それがピー・マンの胸部を直撃する。

ジュゥゥゥゥゥッ!! という香ばしい匂いと共に、ピー・マンが苦悶の声を上げた。

皮が焼けることでその硬度が落ちた瞬間を、カイトは見逃さなかった。

「イスト、ティロフィ! 同時攻撃だ! 最大火力でいけ!」

「承知いたしました……【主への誓い】!」

「グルォォォォォォォォン!!」

イストがまばゆい光を帯び、ティロフィの口内には灰塵の魔力が収束していく。

ステータスの上昇したイストの放つ超高速の連撃がピー・マンの防御をズタズタに引き裂き、そこへティロフィの【灰の咆哮】が直撃した。

大爆発と共に、最強の野菜モンスターは光の粒子となって霧散する。

その後に残されたのは――。

「……デカっ。これ、一個で何人前あるんだ?」

地面に転がっていたのは、カイトの胴体ほどもある、圧倒的な存在感を放つ『巨大なピーマン』だった。その輝きは宝石のようで、苦味よりも旨味が凝縮されていることが遠目からでもわかる逸品だった。

「よし……これで食材はすべて揃ったな」

激闘を終え、一行は昨日カイトが拠点を設営した河原へと移動した。

カイトが【宝物庫】を展開すると、そこからは昨日以上の数のキャンプギアが飛び出してくる。

特大のステンレスグリルが二台、広々としたアウトドアテーブル、そして六人がゆったりと座れるチェア。

「……ねぇ、カイト。あんた、いつの間にこんなプロ仕様の道具揃えたのよ」

田中が呆れ顔で椅子に座る。佐藤は「スゲーな! 炊飯器まであるのかよ!」と、魔石で駆動するジャーに興味津々だ。

「まぁ、この日のために少し奮発したんだ」

カイトは笑いながら、手際よく調理を開始した。

まずはバイソン・サーロインの塊肉。これを大胆に厚さ五センチのステーキに切り分け、岩塩と黒胡椒、そして現地で調達したハーブを惜しみなくまぶす。

ジゥゥゥゥゥッ!!

熱せられた網の上に肉を置くと、先ほど戦ったピー・マンを肉詰めにすべく、いくつか適度なサイズに切りパティ・ベアのひき肉を詰める。

グリルの一角では、ソーセージ・スネイクの生ソーセージが、皮が弾けんばかりに膨らみ、透明な脂を滴らせている。

「佐藤、田中、鈴木。まずはこれ、食べてみてくれ」

カイトが差し出したのは、瑞々しいレタスで包んだバイソンのステーキ肉と、ピーマンの肉詰めだ。

佐藤が待ちきれないとばかりにステーキにかぶりつく。

「ッ……!! う、うめぇぇぇぇぇ!! なんだこれ、口の中で肉が溶けるぞ!?」

「本当……このピーマン、全然苦くない。むしろ甘みが凄いわ。ひき肉の脂と合わさって、最高のご馳走になってる……」

田中も、普段の毒舌を忘れて無我夢中で咀嚼している。鈴木は、炊きたてのオコメ・マンの白米を頬張り、幸せそうに目を細めていた。

「カイト君、本当に美味しいです。こんなに贅沢なBBQ、生まれて初めて……」

一行は、マグロのスシ・タートルの寿司をつまみ、デザートに冷えたプリン・アラモード・スライムのプリンを楽しみながら、至福の時間を過ごした。

イストはカイトの隣で静かに食事を楽しみ、ティロフィは川べりで山盛りの肉をハフハフと食べ進めている。

友情と美食に彩られた休日を、燦々と太陽に照らされる草原の中でカイトたちは楽しんでいく。

『現在のジョブ:調教師(Lv.21)』

『使役モンスター:イスト(Lv.11)、ティロフィ(Lv.7)』