軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第46話:静寂の夜、次なる一歩

都営ギルド本部での会議、そして剛田部長による「実演」を経て、カイトを乗せた車両が大崎の自宅前に着いたのは、すっかり日が落ちた頃だった。

送り届けてくれた龍崎教官は、車を降りる際、複雑な表情でカイトの肩を叩いた。「明日、また学校でな」という言葉には、かつての突き放すような冷たさは微塵もなかった。

玄関の鍵を開け、ただいまと声をかけると母の声でおかえりと帰ってくる。

少し休んだ後、カイトは用意された夕食を食べ、シャワーを浴びてから自室のベッドに腰を下ろした。窓の外には街灯の明かりが見えるが、今の彼の意識はもっと深い場所、自身の内側へと向けられていた。

(……ようやく、落ち着いたな)

カイトは机の引き出しから、一冊の使い込まれたノートを取り出した。

それは彼がこの一年間、誰にも見せることなく、自身が歩んできた足跡とこれからの戦略を書き留めてきた秘匿の記録帳だ。

彼はペンを執り、現在の自分の「手札」を整理し始めた。ゲームの主人公のようにステータスを可視化する能力はあっても、こうして文字に書き起こすことで、スキルのシナジーや欠落を客観的に把握できるからだ。

【習得済み職業・スキル備忘録】

■初級職(ALL Lv.50 / カンスト)

剣士: 【斬打】【一閃】【火炎斬り】【真空斬り】【硬質化】【旋風連斬】

魔法使い: 【魔力矢】【炎弾】【氷礫】【雷撃】【風刃】【魔力収束砲】

盾士: 【ガード・スタンス】【ヘイト・ブロウ】【フォートレス・スタンス】【スタン・バッシュ】【属性ガード】【守護の防壁】

盗賊: 【ステップ】【クイック・エッジ】【毒霧】【幻影歩法】【不意打ち】【フェイタル・スロー】

癒し手: 【微癒】【ライト・ヒール】【ピュリファイ】【プロテクト・オーラ】【ホーリー・バレット】【エリア・ハイヒール】

■中級職(ALL Lv.70 / カンスト)

騎士: 【斬打・守】【鉄壁の一閃】【火炎の盾剣】【真空破撃】【不動硬化】【旋風守護斬】【騎士の誓い】【騎士の宣誓】

大魔法使い: 【魔力矢Ⅱ】【クアッド・バースト】【エレメンタル・レイン】【フォース・ウォール】【魔力循環】【魔力収束砲Ⅱ】【多重詠唱】【四子竜撃】

大盾士: 【ヘイト・ブロウⅡ】【不動の構え】【フォートレス・スタンスⅡ】【スタン・バッシュⅡ】【属性ガードⅡ】【守護の防壁Ⅱ】【身代わり】【守陣】

暗殺者: 【フェイタル・スローⅡ】【ハイド】【急所狙い】【サイレント・ムーブ】【暗殺者の刻印】【デス・ストライク】【影渡り】【復讐の誓い】

大癒術師:【エリア・マイナーヒール】 【ハイ・ヒール】【ピュリファイⅡ】【プロテクト・オーラⅡ】【ホーリー・バレットⅡ】【エリア・ハイヒールⅡ】【慈愛の光】【自己犠牲の愛】

■複合上級職(Lv.90 / カンスト)

魔騎士: 【魔印斬】【魔力の一閃】【エレメンタル・バースト】【真空破撃・連】【魔力硬化・鎧】【旋風魔守斬】【魔剣解放】【魔騎士の宣誓】【魔双・四竜撃】

書き連ねた文字を見つめ、カイトは静かに息を吐く。

これだけの職を、それぞれのリセットに伴う「喪失感」に耐えながら積み上げてきた。

さらに、単独ダンジョンのクリア報酬として得た特殊スキルが、ノートの余白を埋めている。

【衆目の一点】

【初級・中級経験値ブースト】

【短距離テレポート】

【宝物庫】

【複製魔法陣】

【高貴なる血統】

【無償の愛】

【危機感知】

(戦力としては、すでに十分すぎるほどだ……)

「魔騎士」としての完成度は極まっている。攻撃、防御、機動力、そして継戦能力。今の自分なら、深層の魔物とも渡り合えるだろう。

しかし、カイトの目的は「魔王」へと至ること、だ。

一人で全てをこなすには、まだ「手」が足りない。

(魔騎士は強力だが、あくまで自分一人の出力を高める職。複数方向からの波状攻撃や、広域の索敵、拠点の維持において、自分という『個』だけでは限界がある)

カイトの視線が、ノートの白紙のページに止まった。

そこに、彼は次なる目標を書き込んだ。

『次期育成職業:調教師』

(新たなる複合職は、すでに極めている「大盾士」と「大癒術師」。この二つが合わさることで、モンスターを仲間にできる調教師、これにするべきだ)

カイトの脳裏には、先ほどまとめたスキルのシナジーが瞬時に組み上がっていく。

「魔騎士」が単体での戦闘なら、「調教師」は複数での戦闘。

強力なモンスターをテイムし、それに「大盾士」による耐久力と「大癒術師」の超回復を付与すればどうなるか。

さらに、自身の【複製魔法陣】や【無償の愛】を組み合わせれば、使役獣をより強力に支援し続けることも可能になる。

(明日からは、「調教師」のレベリング、そして仲間となるモンスターの使役をしようか)

カイトはペンを置き、背もたれに深く体を預けた。

「調教師」を極めれば、彼は文字通り「一人パーティー」となる。

時には前線で「魔騎士」として暴れ、時には「調教師」として召喚した強力な眷属が戦場を蹂躙し、回復と防御を撒き散らす。

窓の外、夜の東京は静かだった。

しかし、この小さな自室で下された決断が、遠くない未来、この世界の「常識」を再び粉砕することになる。

カイトは消灯し、ベッドに入った。

瞼の裏には、いつか自分が従えるであろう白銀の騎士と、天を駆ける黒いドラゴンの姿が、確かな現実味を持って描かれていた。

『現在のジョブ:魔騎士(Lv.90)』