軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第108話:決勝の舞台

『さぁ、全国の冒険者ファンの皆様、そして未来の開拓者を目指す学生諸君! 長きにわたる激闘が繰り広げられてきたアマチュア学生大会も、ついに、ついに……この瞬間を迎えました! 泣いても笑ってもこれが最後、栄光の頂点に輝く王座決定戦――決勝戦の始まりだぁぁぁッ!!!』

実況の寺島が喉を張り裂けんばかりに叫び、超満員のスタジアムからは、これまでのどの試合をも遥かに凌駕する地鳴りのような大歓声が巻き起こる。

直径二百メートルの特設ステージ。控室に立つカイトの視線の先には、一歩一歩、確実な足取りでステージへと入場してくる三人の見知った姿があった。

『まずは東側からの入場! もはや説明不要、今大会最大の台風の目! 予選では他選手を一人で“全滅”させるという前代未聞の伝説を作り上げ、本戦に入ってもなお、危なげなく、すべての試合を圧倒的な力で勝利してきた規格外の怪物! 新職業【調教師】、結城カイト選手だぁぁぁッ!!』

カイトが軽く手を挙げながら入場すると、割れんばかりの拍手がスタジアムを包み込む。

『そして対する西側からの入場! この男たちもまた、今大会の常識を根底から覆し続けてきた! ご覧ください、今大会は最大五人までパーティーを組むことが許されているレギュレーション! にもかかわらず、彼らはたった“三人”だけでこの決勝の舞台まで這い上がってきたぁぁぁ!!!』

実況の熱を帯びた声が、スタジアムの大型スクリーンに三人の姿を映し出す。

『ソロで戦う結城カイト選手があまりにも異次元すぎるため、少し印象が薄くなってしまっているかもしれませんが、三人での決勝進出というのも、本来であれば大会の歴史に残る大偉業、とんでもない快挙です! 拍手でお迎えください――リーダーの護騎士、佐藤率いるパーティーだぁぁぁッ!!!』

先頭を歩く佐藤勇馬が、愛用の大盾をガツンと地面に打ち付け、不敵な笑みを浮かべる。その左右には、まっすぐとカイトを見据える田中美紀と、静かに呼吸を整える鈴木しおりが並んでいた。

お祭りの夜のあの賑やかさはどこへやら、彼らの瞳には、カイトという最大の壁を打ち破り、頂点を掴み取るという剥き出しの闘志が宿っていた。

『さらに、ここで一部の方は気が付いているとんでも情報がございます! なんと、決勝を戦う結城カイト選手と佐藤選手のパーティーは、同じ中学校の出身! 大崎市立第一中学校の同級生とのことです!』

『そうなんですよ、寺島さん。それだけではありません。今大会においては、先日の準決勝で惜しくも結城選手に敗れてしまった九条院選手のパーティーも含め、彼らの所属する大崎市立第一中学校から、実に“三パーティー”ものチームが本戦の上位を独占しているんです』

『な、なんだってぇぇぇーっ!? 一校からベスト4に三チーム!? 一体全体、その中学校のダンジョン事情はどうなっているんだぁぁぁーっ!!!』

実況席の驚愕のやり取りに、観客席からも「おいおいマジかよ」「大崎第一ってそんなに強かったか?」とざわめきが広がる。学校の代表として、そして同じ冒険者の仲間として、お互いに高め合ってきた結果が、この決勝戦という最高の舞台での同門対決を実現させたのだ。

ステージ中央、十メートルほどの距離を挟んで、カイトと佐藤が視線を交わす。

「カイト、お前が予選で全滅無双したって聞いた時は、正直ひっくり返りそうになったぜ。九条院たちを破って決勝に上がってくるってのも、信じてた通りだったな」

佐藤が獰猛な笑みを浮かべ、大盾を構え直す。

「だがな、俺たちだってただ指をくわえて見てたわけじゃねえ。友人であり、ある意味先生でもあるお前に勝つために、死に物狂いでダンジョンを回ってきたんだよ!」

「……うん。佐藤くんたちのプレッシャー、凄く伝わってくるよ」

カイトは油断なく魔剣の柄を握り締めた。

佐藤の言葉通り、彼ら三人から放たれる魔力の密度は、以前とは比べものにならないほど膨れ上がっていた。佐藤勇馬、田中美紀、鈴木しおり。その全員がすでに複合上級職へと至り、そのレベルは驚異の【四十】を超えている。

九条院たちのレベル三十時点での連携であれほどの拮抗を強いられたのだ。さらにレベルを上げ、三人という少数精鋭だからこそ極限まで研ぎ澄まされた佐藤たちのコンビネーションは、間違いなく今大会最大であり最後の試練となる。

「カイト、手加減したら怒るからね。私たちの全力、受け止めてもらうわよ!」

田中美紀が勝気な笑みを浮かべ、杖の先をカイトに向ける。

「カイトくん、行くよ。私たちの、数ヶ月の成果……全部ぶつけるね」

鈴木しおりもまた、いつもの優しい雰囲気を完全に消し去り、一人の冒険者として鋭い視線をカイトへと向けた。

「ああ、望むところだ。俺も最初から、全力でいくよ」

誰も手加減など考えていない。互いが互いの強さを誰よりも知っているからこそ、最大にして最高の力でねじ伏せる。それこそが、この舞台まで共に歩んできた仲間への、最大の敬意だった。

スタジアム全体の熱気が臨界点を突破する。

実況の声も、観客の声援も、すべてが遠くへ遠のいていくような、奇妙な静寂がカイトの感覚を支配した。見えるのは、ただ目の前の強敵たちだけ。

そして――次の瞬間。

『全選手、準備完了!! アマチュア学生大会、栄光の頂点を決める最終決戦……試合、開始の合図だぁぁぁッ!!!!!』

ドォォォォンッ!!!

空を裂くような号砲がスタジアムに響き渡った瞬間、決勝戦の幕が、ついに切って落とされた。