軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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図抜けた魔力量があればできることも増えるのだということを僕は知った。アーシャの魔力量もそうだけど、マトヴェイさんの魔力量も半端ない。

「すごいですね。この規模の【花魔法】なんて初めて見ました」

「ま、まあね、俺くらいになればこれくらいはね……」

いや、でもカップを持つ手が震えてるな? ほんとは結構無理してるのかな?

樹木が 歩いている(・・・・・) のか、あるいは枝をすさまじく伸ばしているのかはわからないけれど、しばらくして動きは止まった。

「世界樹」なんて言葉が聞こえたあそこにはまだ距離があったけれど、その手前のひときわ大きな木の前で止まっている。

そこには、お屋敷があった。

複数の巨木に支えられたお屋敷が建っていたのだ。

壁面は白く塗られ、窓枠や屋根にも複雑な彫刻が施されている。動物や花のデザインだ。

それらすべてが木製であるようだ。

「マトヴェイ!! 貴様誰の許可を得てヒト種族などを連れてきた!」

家の前のアプローチも当然樹木の幹なのだけれど、完璧に道のようになっているから、これもまた【花魔法】で作り出したものなのかもしれない。

そこにやってきたのはマトヴェイさんによく似たイケメンだったけれど、目元がかなりきつめだ。

「あれは3番目の兄貴のホロブリトだ」

「……あちこちの枝に隠れている方々もご兄弟ですよね」

「お前、よく気づいたな?」

僕はうなずいた。

「——隠れていたわけではない」

するとあちらこちらからイケメンや美女がぞろぞろと出てきた。全部でなんと17人もいる。

「黄色い髪飾りのがいちばん上の兄貴のヤロスラフで、青色のバングルつけてるのが2番目の兄貴のスヴャトスラフ、3番目の兄貴はアレだろ、で、4番目の兄貴が髪の毛をひっつめにしてるアンドレイで、5番目の兄貴が髪を短く刈り込んでるアレクサンドル、6番目——」

「あ、それくらいで結構です」

【森羅万象】がある僕は記憶することができるけれど、今は紹介してもらうようなタイミングでもないだろう。

問題は——彼ら全員がとてつもない魔力を持っているということだ。

「そのヒト種族、気配でも嗅ぎ取れるのか?」

4番目のアンドレイさんが言う。

それは、ちょっと違う。

僕はここに来るまで【森羅万象】の新たな使い方について模索していたのだ。

そしてある使い方を発見した。

「……皆さんの魔力量は隠そうとしても隠しきれるものではないでしょう?」

【森羅万象】は、すでに習得している天賦を 組み合わせ(・・・・・) て新たな能力を得ることができたのだ。

【視覚強化】、【魔力操作】、【オーブ視】……この辺りをうまく組み合わせて、僕は【魔力視】とでも言えばいいのか、他人の魔力量を可視化できるようになった。

立ち上る湯気のような魔力は、一般的に魔力があると言われているエルフの数倍から数十倍はある。

だからどこかに隠れていてもそこから魔力が漏れていれば 視(・) ることができる。

「へえ、魔力を感じ取るのね。であればお前のような卑しいヒト種族がいていい場所ではないとわかるでしょうに」

視えるだけに、わかってしまう。

この人——17人いる中でもずば抜けて、魔力がある。

アーシャもすごかったけれど、この人はケタが違う。

「……あれはユーリー。俺の双子の姉で…… 天才(・・) さ」

ぽつりと、マトヴェイさんが言った。

「 落ちこぼれ(・・・・・) のマトヴェイが連れてきた卑しいヒト種族よ、さっさと帰りなさい」

双子の姉か……。

ハイエルフの王族がどんな生活をしているのかはわからないけれど、想像でしかないのだけれど……あれだけの魔力を持った姉がいたら、確かに、比べられ、「落ちこぼれ」と言われてしまうのだろう。

マトヴェイさんの魔力はここにいる人たちと比べても確かに少ない。半分くらいだろうか。そうだとしてもヒト種族の社会ならば国に召し抱えられて「大魔導師」と言われるほどはあるというのに。

「僕はアーシャに会いに来ただけです」

「あの子はお前に会わない」

「一度会って、少しだけ話をさせてもらえればそれだけでいいんです。お願いします」

僕は頭を下げた——が、

「……図に乗るな、ヒト種族がッ!!」

ユーリーさんが激怒し、彼女の周囲に渦を巻くように魔力が集まるのが見えた。

「止せ、ここでどんな魔法を使うつもりだ」

「そうよ。カッとして魔法を撃つなんてヒト種族みたい」

「やれやれ、これが次期王の第一候補とは先が思いやられる」

するとハイエルフ兄弟たちが次々に文句を言い始める。

ユーリーさんが次の王……女王? ていうか、そんなに仲が良くないのか、みんな?

「うるさいッ! アンタたちの足りない魔力を私が補ってあげているんでしょうが!」

バッ、とユーリーさんが手を伸ばすと——そこから突風が発せられ、僕に襲いかかってくる。

「!!」

直撃すればはね飛ばされ、大樹のはるか下に落とされるであろう風だ——けれど、

(これは……)

僕は あること(・・・・) に気づいた。

だけどそれを確認するには、まずはこの【風魔法】をなんとかする必要がある。

「そぉぉぉおおおおいっ!!」

僕もまた【風魔法】を展開する。

「バカな。ヒト種族が、我らハイエルフの魔力にあらがえるとでも?」

「悪あがきね」

そんなささやきが聞こえたが、確かに、僕の魔力量は全然ユーリーさんにはかなわない。たとえるならダンプカーに三輪車をぶつけるようなものだろう。

だけどね、僕には【森羅万象】がある。

小型の竜巻のような魔法が僕に届く——寸前、【風魔法】はウソのようにかき消えた。

「!?」

驚きに、その場にいる全員が動きを止める。

いちばん驚いたのはユーリーさん本人のようだ。

僕はにやりとした。