軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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「……わかった、入国を許可しよう」

と、文官が言ったのはそれからすぐのことだった。さっきまでめんどくさそうな顔をしていたもうひとりは食い入るように僕の身分証に見入っている。

……そんなにレフ魔導帝国ってネームバリューがあるのだろうか? あるいは、魔導飛行船を贈ってきた国だから彼らにとって憧れがあるとか?

うーん。

「すぐに入国するのかね」

「あ……はい。よろしくお願いします」

わからないことを考えてもしょうがないので、僕はうなずいた。

今は、アーシャに会うのが先だ。

シルヴィス王国までは森の入口から馬車が出ており、それに乗っていけということだった。逆に、勝手に歩いていくとかなったら密猟者に間違われるのだという。

馬車——角がないしエルフたちが「馬車」と言っていたのでたぶん、馬だと思うのだけれど、足は6本あって背中にはコケが生えている——に乗って進むこと2時間、変わり映えのしない深い森の光景に飽きてきた僕の耳に歌声が聞こえてきた。

「……そろそろ着く」

馬車の御者はエルフで、乗っている客は僕以外にふたりだけ。ふたりはヒト種族で、商人のようだったけれど無駄口を叩くとエルフに嫌われるから黙っててくれとあらかじめ言われていたので無言だった。

なんだか護送馬車だなとは思う。実際、数人のエルフが森の中から監視していたし。

「わあ……あれが」

僕は御者台の後ろから背伸びして前方を見やると、そこには——樹上の集落があった。

大木の枝にまたがるように、木製の住居が置かれ、木と木は吊り橋でつながっている。

吊り橋には色とりどりの布がかけられてあってとてもカラフルだ——カラフルなのに森と調和しているという、不思議な感覚があった。

(ダークエルフの集落に似てる……)

もっと素朴で、もっと粗野で、もっと危険はあったけれどたたずまいがどこか、ダークエルフたちの集落をほうふつとさせた。

まあ、奥の方は「木の上なのに3階建て!?」みたいな建物もちらちら見えていて、ダークエルフのそれとは全然違うんだけどね。

馬車が停まり、森へと降り立つ。

すると、「あーっ」みたいな声がして、歌声がぴたりと止んだ。吊り橋に集まっていた数人の子どもたちが蜘蛛の子を散らすように逃げていく。

どこかで木材を加工する音が聞こえる。いくつかの歌声はまだ聞こえていて、それは集団で酒造りをしているようなそんな歌詞がきれぎれに届いた。

集落は樹上にあったけれど、作業場や倉庫は地上にあり、地上を歩いているエルフも多かった。彼らは一様に麻を織った服を着ていて、それらは自然色に染められていた。

「では」

「ええ、また後ほど」

同乗者だったふたりは行き先が決まっているのか、そそくさと歩いていく。彼らを見つめるエルフの視線は冷ややかで、なんだか悪いことでもしているみたいだった。

「……さて、と。王族に会うにはどうしたらいいかな」

馬車の停留所らしいここから道が伸びている。道は踏み固められた地面で、馬(?)を使って荷車を牽いたりするのが見えるが、通行人が多いとは言えないだろう。

ゆったりとした時間が流れているのを感じる。

だけれど旅人にはあまりにも不親切で、「ようこそシルヴィス王国へ」みたいな看板は要らないけれど、せめて道しるべくらいは欲しい。案内という案内が皆無だった。

「ん」

どうしたらいいか途方に暮れようとしていた僕は、大通りを向こうからやってくる集団に気がついた。

皮革鎧に身を包み、鉱石の槍を装備したのと、弓と矢を持ったのと、2種類のエルフ兵士がやってくるのだ。

先頭の人物だけは腰に鞘付きの剣を装備していて、額には青い宝石をはめ込んだ革ヒモを結んでいた。

「——お前がレイジか」

近くまでやってくると、先頭のエルフが僕に問う。

槍のエルフ兵士が僕をぐるり取り囲み、弓のエルフ兵士は遠巻きに警戒している。槍が15人、弓が7人だ。

「はい」

「そうか——お前が、アナスタシア王女殿下を攫った誘拐犯か!!」

「……はい?」

僕が聞き返すよりも先に、槍は構えられ、弓には矢がつがえられた。

「よくもまあ、こうしてのこのこと我らが王国にやってきたものだな。卑劣なヒト種族のことだから、姿をくらませたのかと思ったが……いや、逃げようとしたところで地の果てまで追いかけるがな。我らが崇拝するハイエルフ様に危害を加えた男ならば」

「いやちょっと待ってください。僕、ここでそんな認識になってるんですか? アーシャはなんと言ってます?」

「王女殿下をなれなれしく呼ぶなァッ!!」

カッ、と目を見開いてにらんでくる青い宝石の人。怖い。目がイッてる。なにかヤバイ煙でも吸ったんだろうか。

「えーっと……僕のことがどう伝わってるか全然わからないのですが、とりあえずアナスタシア殿下には会えますか?」

無実の犯罪者と思われようと、今、僕が優先すべきはアーシャに会うことだ。いや、まあ、すでに「六天鉱山」では逃亡奴隷でバリバリ犯罪者ではあるんだけど。

「会えるわけがなかろう!! 盗っ人猛々しいとはこのことだ!!」

「それじゃあ、あなたについていけばハイエルフの方に会えますか?」

「会えるわけが……いや、会える。お前の取り調べはハイエルフ様が直々にするとおっしゃっていた。しかし! ハイエルフ『様』だ!!」

「わかりました。じゃあ、会わせてください、ハイエルフ様に」

「むう……無抵抗とは、情けない」

もうなんなんだこのエルフ。だいぶ沸点が低いぞ。僕が暴れたほうがよかったんだろうか?

「武器を出せ!」

「持ってないです」

「そんなわけがあるか!」

「見ての通りですよ」

僕は、度重なる戦闘でガタがきていた短刀を置いてきていた。ダンテスさんに預け、修理を依頼している。

道具袋の中を見せ、武器らしいものがないのを確認してもらうと、またも青い宝石のエルフは微妙そうな顔をした。

なんなんだよ。