軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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★ 光天騎士王国 港町ザッカーハーフェン ★

ラルクはひとり、部屋に閉じこもっていた。そこにはクックも、他の仲間たちもいない。

窓も閉じているために部屋は暗く、ベッドサイドのテーブルには手をつけられていない食事と、水薬があった。

「……なんなんだよ。どうしてだよ……弟くん……」

視界を失ったラルクが思うのは、「六天鉱山」で出会い、彼女の考え方を、彼女の人生を、変えてしまった少年のことだ。

「……あれがあたしにとってどれだけ大切かってこと、わかってるだろ、弟くん……」

自分が守るべき相手だと思っていた少年。

鉱山でもそうだったし、天賦を手に入れてからもそうだった。

彼が気になって領都に追いかけていったとき、竜が出現し、それを倒したことでラルクの思いは確固たるものになった。

弟は、姉が守るのだと。

だけれど4年振りに再会した弟は——大きくなっていた。身長だって自分とあまり変わらないほどだし、なにより、星6つの天賦を持っている自分よりも強かった。

「……元気さえ取り戻せば、あたしはまた弟くんを守れるのに……」

ずっと夢見ていた。

また弟と再会し、ふたりで毎日を楽しく過ごすことを。

自分は多くの人間を殺したせいでお尋ね者になり、いちばん大変なときに彼のそばにはいられなかったけれど、それだって彼を助けるためにしたことだ。

こんな再会は望んでなかった。

惨めだった。

力を失った自分も。

彼に八つ当たりした自分も。

弟のためを思って行動した過去を悔やんでいる自分も——。

「わっ、暗い」

そのとき部屋のドアが開いた。

入ってきたのはラルクよりも背の低い——あまり見ないカラフルな色合いの服を着たミミノだった。

ミミノが「銀の天秤」に所属し、弟のパーティーメンバーであることもラルクはわかっている。

「入ってくんじゃねえ!」

「あー、そうか。目が見えないんだったべな。だから暗くてもいいんだな」

「入るなって言ったろ!」

ラルクは近くをまさぐってなにかを投げつけようと思ったが、すでにクックたちに「出て行け」と散々投げつけたあとだったのでそばにはなにもなかった。ベッドサイドの食事が載せられたテーブルが少々離れたところに移してあったのはクックの先見の明と言えるだろう。

ずかずかと部屋へ入ってきたミミノは窓を開けた。射し込んだ光が部屋の惨状を照らし出す——枕も、シーツも、花瓶も、酒瓶のようなものも投げられ、床に飛び散っている。

「あーあー。ダメだべな、こんな暗いところでじめじめしてたら。頭にカビ生えるよ?」

「うるせえ!」

「それに女の子が男みたいな口調を使うのは、どうかと思うなー。女には女の武器があるんだからな」

「うるせえっつってんだろ!」

とっさに右手を伸ばしたラルクは、しかし、そこから——慣れ親しんだ闇の刃が出てこないことに気がついてハッとする。

「……その苛立ちも、全部天賦がなくなったせいだよ」

ミミノの言葉が胸に深く突き刺さる。

「だったら……なんなんだよ。アンタにゃ関係ねーだろ。あたしがこのままここでくたばったって」

「関係あるべな。だって、レイジくんが悲しむもの」

「知らねーよそんな名前ッ!! あたしの弟くんは……弟くんなんだ……!」

すぐそばに人の気配を感じて、ラルクは顔を上げた。

直後、パンッ、と乾いた音を聞いた——自分の頬がはたかれたのだと気づくには少し時間が必要だった。

「姉なら、弟の成長を喜ぶもんだ!!」

ミミノの声が呆然とするラルクの頭に響く。

「どーして認めてあげないべな!? レイジくん、お姉ちゃんに褒めてもらいたくてめちゃくちゃがんばってたのに!!」

「……褒めて、もらいたくて……あたしに?」

「当然だべな! レイジくんは、ウチのパーティーに入ったときからずっと、姉に会うんだって言ってた。会わなきゃいけないって。それが人生の最初の目標だって」

「…………」

頬に手を当てたラルクは、見えない目をミミノへと向ける。

「……アンタ、泣いてんのか……?」

ぽた、ぽた、という音。そして鼻をすするような音。ミミノの声は震えている。

「悔しいべな……! あんなにがんばったレイジくんを、あなたは否定したの……! だっていうのに、レイジくんは、自分が悪いんだって言って……泣きそうな顔してたんだ……」

「……弟くんが……」

ミミノは目元に人差し指をやると、涙を拭った。

「わたしはレイジくんに頼まれて、あなたのために『薬理の賢者』様に会ってくるべ。薬のことはハーフリングの得意分野だからな。だけど、わたしたちが戻ってくるまでにあなたが死んだら困る。レイジくんに合わせる顔がない。だからあなたには特別な治療を受けてもらうんだ——今、高位の【回復魔法】を使える先生がこの街に向かってるから」

「……あたしは」

「言っておくけど、拒否権なんてないべな」

「は、はあ!? なんでだよ!」

「レイジくんがそう言ったから」

「…………」

ぽかんとしたラルクは、身体中から力が抜けるようにうなだれた。

「なんなんだよ、弟くんは……あたしの知らない4年でなにがあったんだよ」

「それは、治療してくれるノンに聞いてみるべな。いーっぱい教えてくれるよ」

「……アンタは?」

「ん?」

「アンタは、弟くんのなんなんだ?」

すると、

「とっても頼りになって、とっても身近で、なにかあったらレイジくんはすぐにわたしのことを頼ってくれるような存在だべな! つまり……うん、わたしは!」

答えるミミノが輝くような笑顔を浮かべているのをラルクは見ることができなかったが、想像するにたやすかった。

「ママだべな!」

それはさすがにおかしい、とツッコミがすぐに入った。