軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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【闇魔法】がレーザーを吸収しきると、再度海坊主の顔がそこに現れる。

ミミノさんの、あの反則みたいなポーションがあるなら心強い。何発でも来い! ——と思ったところへ、

「レイジくん!『 魔法複製薬(デュープ・ポーション) 』はこれで打ち止めだべな!」

というミミノさんの声。

で、ですよね……これ作るのめっちゃお金掛かるって言ってましたものね……!

「む」

海坊主は、小山のような身体を縮ませていた。ぬらぬらした表面にはシワが寄っているようにも見える。

魔法を使ったから縮んだのか? ということは、あの魔法は何発も撃てない?

「それなら——こっちから反撃だ!」

今なお触手が襲いかかってきて、それを【風魔法】で切り裂きながらの反撃だ。さらには全速前進の魔導船上はぐらぐら揺れるのでバランスを保つのが難しい。

でも、敵の図体がデカいのはラッキーだ。

「行け!」

【火魔法】を3発繰り出すと、バスケットボール大の火球は弾丸のように回転しながら海坊主の顔面に直撃する。

飛沫が上がり、高熱で海水が蒸発する。

ごっそりと肉が削れたそこにあったのもまた、緑色の肉体だった。

緑色の体液が噴き出す。

「ぎゃー、めっちゃグロい!」

いつの間にか近くに来ていたゼリィさんが叫んでいる。

「レイジ! 俺たちにできることはほとんどねえが、後ろは気にせずぶちかましてこい!」

「レイジ殿! ここであなた方を見捨てるほど、騎士道は腐ってはおりませんぞ!」

ダンテスさんにしてはめずらしく長剣を構えている。軍船にも触手が降り注いでおり、それを器用に切り裂いている——この人、ほんとにとんでもないことをさらっとやるよね……!

触手が分散したおかげで、こっちに来る攻撃は薄くなる。

十分です、ダンテスさん。

それに町長もほんとうにありがとうございます。

「ミミノさん! ありったけの毒をください!」

「毒!?」

「あれは——れっきとした生き物です。毒は有効のはずです!」

「わ、わかった」

ミミノさんが道具袋からとりだした、一抱えほどのたくさんのビン——いや、そんなにたくさん毒が入っていたんですかね……? ふだんからそれほどの量を持ち歩いている……?

受け取ったゼリィさんが、接近した船と船の間を、陸上にいるときとほぼ変わりなく跳んでこちらへやってくる。

「坊ちゃん、持ってきやしたよ——坊ちゃん?」

「あ、あー……いえ、大丈夫です」

ゼリィさんの運動神経もすさまじいな、と感心していたなんて言ったら絶対この猫系獣人は増長するので言わない。

僕は手ぬぐいを広げて毒のビンをまるっと包み込む。がしゃがしゃ音がして危ないことこの上ないけれど、一時的なものだからたぶん大丈夫だ。

「ゼリィさん、泳げます?」

「な〜に言ってんすか、坊ちゃん。『闇牙傭兵団の人魚姫』とウワサになったあーしですよ? 嵐の中だって泳げますぜ。実際、借金取りから逃げるときに嵐の夜に大河を泳いで逃げたこともありやす」

それは自慢できることではないのでは……と思ったけれど、まあ、いい。

「じゃ、僕が海に落ちたら拾ってください」

「それくらい任せてくだ——え? 今なんて? 坊ちゃん、坊ちゃん!」

僕は毒ビンを両手で抱えて飛び出していた。【火魔法】と【風魔法】でぐんぐんと海坊主に迫る。

残りの魔力量は心許ない。レーザーを防ぐための【闇魔法】でかなり持って行かれたからだ。

でも、大丈夫。

すでに【森羅万象】による情報分析は終わっている。

触手以外に毒はなく、おそらくだけれど生物でいう「口」は下にある——海中に向けて口が開いていて、そこで食事をしている。

つまり、これは 巨大なクラゲ(・・・・・・) なのだと。

魔法を使い、体液が血のように流れる時点でクラゲそのものではないのだけれど、クラゲの仲間であることは間違いない。

だから、

「やっぱり……こっちはがら空きじゃないか」

空中を駈けて海坊主に突っ込んで行く僕を、捕捉する触手はなかった。

海中に向けて生えている触手を海面に出すには、傘の外側から出す必要がある。つまり、傘の中心に行けば行くほど触手は届かないのである。

だけど、小山のくぼんだ目のようなところがチカッ、チカッと光ったと思うと、

「うわあ!?」

細いレーザーを撃ってきた。身体をひねって射線をかわしたけれど、服を破られた。

危ない……魔力切れのくせにぎりぎりまで絞り出してくるなあ、もう。

「だけどこれで終わりだから!」

僕は小山目がけてナナメに急降下していく。

「うおおおおおおおお!!」

残った魔力のほとんどを使って、【風魔法】を展開。身体から急速に力が抜けていく。

巨大な空気の刃で傘を切り裂くと、どぷっ、と大量の体液が噴き出した。小山を切り裂いた場所に着地した僕は生臭いニオイに包まれ、同時に大量の体液を身体に浴びた。「うげーっ」というゼリィさんの声が聞こえた。

これは無害これは無害これは無害と念じながら僕は手ぬぐいにくるまれた毒ビンを海坊主に突っ込んだ。ずぶりとした感触に、ひんやりした温度が伝わってくる。

ぶぶぶぶぶと海坊主が震えたのは、異物を突っ込まれたせいだろうか?

でも正直、僕はこれ以外の方法を思いつかなかった。

クラゲの生命力を舐めてはいけない。

触手や傘を片っ端から斬っていっても、生き延びそうな気がするのだ。

時間が経って海坊主の魔力が回復したら、またあのレーザー光を撃ってくるだろうし。

「だから……苦しませてごめんだけど」

僕は腕を抜くと、背後に跳んだ——【風魔法】で距離を取りながら、【土魔法】を放つ。

正真正銘、僕の魔力の残りカスで撃った礫弾は、見事に、緑の体液に染まった手ぬぐいに突き刺さるとビンを木っ端微塵にした。

僕の身体が海に落ちる。

海坊主の傘が、緑から青に、青から白に、白から緑に——めまぐるしく変わっていくのが見える。

ああ、毒は効いたんだな……さすが、ミミノさんの毒だ。

……怒らせたら怖いのは、物理的にはミミノさんだな……。

そんなことを思う僕の身体は海面に浮き上がった。